Project/Area Number |
22K19371
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 47:Pharmaceutical sciences and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
志甫谷 渉 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30809421)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | GPCR / リゾリン脂質受容体 / クライオ電子顕微鏡法 |
Outline of Research at the Start |
ゾリン脂質はアシル基を一本有するリン脂質の総称であり,細胞膜上のG蛋白質共役型受容体(GPCR)を介して機能を発揮する。こうした受容体は創薬標的として有望である一方、脂質リガンドは代謝安定性が低いため修飾を施す必要がある。脂質リガンドの結合様式や受容体活性化機構も未解明であり、理論的な改変が難しい。本研究では、クライオ電子顕微鏡法によってリゾリン脂質受容体の構造を解析し創薬への応用を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
リゾホスファチジルセリン (LysoPS) は細胞間の情報伝達を担う脂質メディエーターの一種であり, 生体内ではホスファチジルセリンのアシル基の一本が切断されることで産生される。LysoPSは一本のアシル基とリン脂質頭部にセリンを持つ脂質である。LysoPSはGPR34と呼ばれる受容体を活性化することで免疫系のはたらきを調節するため, とくにがんや感染症への対策として研究が進められている。しかし, 真にGPR34のリガンドであるのかについては反論があり, LysoPSが分子レベルでどのようにGPR34を活性化するのかについては不明だった。 そこで私たちはLysoPSがなぜGPR34を活性化できるのか解明すべく, その立体構造を決定した。GPR34のリガンド結合ポケットは, リガンドの頭部を認識する親水性ポケットと, 炭化水素基を収容する疎水性ポケットから構成されていた。親水性ポケットでは, LysoPSのセリン部分は極性アミノ酸残基との水素結合を形成して密に認識されていた。このセリン特異的な相互作用が, GPR34がさまざまな脂質の中でLysoPSのみを受容しシグナルを伝える理由であると考えられる。一方炭化水素基は, 4番目と5番目の膜貫通ヘリックス注)によって形成された溝にある疎水性ポケットに収容されていた。GPR34のリガンド結合ポケットは,この溝を介して細胞膜側(横向き)に開いていた。LysoPSは細胞間接着を介して膜上を移動すると考えられおり,実際に, LysoPS産生酵素(PS-PLA1)を作用することで, GPR34は外からLysoPSを加えなくても活性化する。このことから, 細胞外側からの経路ではなく、細胞膜側からのLysoPSのアクセスがGPR34の機能に重要であることがわかり(図,右下), 受容体研究に大きな一石を投じる成果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究当初に計画していたLysoPS受容体だけではなく、LPA受容体の構造も決定したため。リゾホスファチジン酸受容体1(LPA1)は、生理活性脂質であるリゾホスファチジン酸(LPA)によって活性化される6つのGタンパク質共役型受容体の一つである。LPA1は、がん、炎症、神経因性疼痛など様々な疾患の創薬ターゲットとなっている。特に、LPA1アゴニストは、肥満や尿失禁の治療薬としての可能性を秘めている。本論文では、LPA1に対してより強力な活性を持つLPAアナログであるONO-0740556と結合した活性型ヒトLPA1-Gi複合体の低温電子顕微鏡構造について報告する。今回の構造解析により、LPA1-Giのアゴニスト結合様式と、膜貫通セグメント7および中心疎水性コアの再配列を介した受容体活性化メカニズムの詳細が明らかになった。LPA1と系統的に関連する他の脂質感受性GPCRとの構造比較から、LPA1の脂質嗜好性の構造決定因子が同定された。さらに、受容体-タンパク質界面における構造多型の特徴を明らかにし、Gタンパク質解離プロセスを反映している可能性を示した。本研究により、LPA1とアゴニストとの結合メカニズムの詳細が明らかになり、LPA1を標的とした薬剤様アゴニストの設計への道が開かれた。
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Strategy for Future Research Activity |
創薬モダリティが多様化した現在でもGPCRは最も重要な創薬ターゲットの一つである。GPCR創薬の主な担い手はこれまで低分子であったが、近年,低分子化合物GPCR創薬の成功確率は低下している。詳細は後述するが、申請者は本研究の共同研究企業エヌビー健康研究所と共同でGPCR機能を制御することが可能な機能性抗GPCRモノクローナル抗体(mAb)を効率よく作製する手法の確立とこの手法を用い作製した機能性mAbの創薬展開を進めている。今後はLPA1とLPS1に関して申請者がこれまで取得してきた複数の機能性mAb、結合mAbとGPCR結合様式をクライオ電顕で決定することでmAbが機能性を発揮する機構(アミノ酸残基)を解析(同定)する。さらに、この情報に基づきmAbの超可変領域にアミノ酸変異を導入することで、より機能性を高めたmAbの創生、結合mAbの機能性mAbへの変換を目指す。さらに、このストラテジーを掻痒惹起に関与する酸化リン脂質GPCR、MRGX4に応用し、抗ヒスタミン薬抵抗性掻痒に対する創薬を実施する。本研究はすでに進行中であり、既に多くの予備的知見を得ている。本プロジェクトによる機能性mAbの効率的産生手法の確立はGPCRにとどまらず、抗体医薬開発を目指すさまざまな分野への波及効果も期待できる。
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