Project/Area Number |
22K19537
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 54:Internal medicine of the bio-information integration and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
張替 秀郎 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50302146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 浩貴 東北大学, 医学系研究科, 助教 (50801677)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
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Keywords | T細胞分化 / GATA2 / 獲得免疫 |
Outline of Research at the Start |
GATA2は造血幹細胞の維持に必須の転写因子であり、その先天変異は、免疫不全・造血器腫瘍の発症原因となる。GATA2欠損症候群の重症例ではT細胞造血障害が認められるが、成熟したT細胞はGATA2を発現していない。この解離は、造血幹/前駆細胞でのGATA2の欠損がその後のT細胞の機能に影響している可能性を示唆している。その機序として、GATA2が転写因子として造血幹/前駆細胞のエピゲノム状態に影響を与え、これがメモリーとして成熟細胞まで影響を及ぼしていることが想定される。そこで本研究では、GATA2をモデルとし、獲得免疫でのエピゲノムメモリー機構を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
GATA2は造血幹細胞の維持や分化に必須の転写因子である。先天的なGATA2の遺伝子変異(GATA2欠失症候群)は、自己免疫疾患や感染症、造血器腫瘍などの発症原因となることが近年明らかとなったが、その機序には不明な点が多い。GATA2欠失症候群の重症例ではT細胞の造血障害が認められることから、これらの病態の形成にT細胞の異常が関わる可能性が考えられる。一方で、T細胞系列の細胞はGATA2を発現せず、これまでT細胞ではGATA2は機能していないと考えられており、T細胞造血におけるGATA2の役割はほとんど不明であった。しかし、我々の予備的知見からは、T細胞造血でもGATA2が重要な働きをしている可能性が考えられ、本研究ではその詳細の究明を試みている。特に、胸腺の最も未熟なT細胞前駆細胞であるETP (early T cell progenitor) ではGATA2の発現が保たれていることを確認しており、この段階でのGATA2異常がGATA2の発現が低下するその後の成熟細胞における分化異常や機能異常にエピゲノムメモリー制御を介して関与している可能性を考えいる。薬剤誘導性にGATA2を造血細胞で欠損誘導可能なマウスを作成し、その表現型を解析したところ、実際にT細胞の造血障害を認めた。今回、成熟T細胞でGATA2を特異的に欠損可能なマウスを作成し、その表現型も確認したが、こちらでは明らかなT細胞造血障害は認めなかった。やはり前駆細胞でのGATA2欠損が成熟T細胞の造血あるいは機能に重要であると考えられる。今後さらに解析を追加し、その詳細を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的に以下の成果が得られており、順調な進展と考えている。 GATA2の発現レベルを蛍光色素でモニター可能なマウスを使用して、T細胞の各分化段階でのGATA2の発現量を計測した。その結果、骨髄におけるT細胞の直接の前駆細胞であるLMPPs (lymphoid-primed multipotent progenitors) でのGATA2発現と比較して、ETPではGATA2の発現が低下し、それ以降に分化したT細胞系列では発現が認められないことを確認した。つづいて、造血細胞でGATA2欠損誘導が可能なマウスを使用してその表現型を確認したところ、野生型マウスと比較してGATA2欠損マウスではT細胞の造血障害を認めた。一方で、成熟T細胞特異的GATA2欠損マウスを用いた解析では、野生型マウスと比較して明らかなT細胞造血障害は認められなかった。このことから、当初の想定通り、GATA2の造血前駆細胞での欠損がその後の正常なT細胞分化および成熟に重要であることが考えられた。大変興味深いことに、造血細胞特異的GATA2欠損系において、野生型マウスおよびGATA2欠損マウスから胸腺CD4+CD8+(DP: double positive)細胞を分取して網羅的遺伝子発現解析を実施したところ、多数の遺伝子の発現変化を認めた。DP細胞ではGATA2の発現はすでに消失しているため、GATA2発現が維持されている最後の分画であるETPにおけるGATA2欠損がエピゲノムメモリーを介して何らかの影響を与えている可能性が考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね当初の予定通り研究は推進しており、今後も計画に基づいて研究を進めていく予定である。ETPにおけるGATA2欠損がETP自体の状態に影響を与えている可能性を考え、GATA2野生型および欠損ETP細胞に対する網羅的遺伝子発現解析も追加する予定である。また、本当にエピゲノム異常が起きているのか明らかにするために、これらの細胞分画に対する網羅的オープンクロマチン解析(ATAC-seq解析)も実施する予定である。これらの網羅解析結果とGATA2のクロマチン免疫沈降シークエンス解析(ChIP-seq解析)結果を統合することで、具体的にGATA2が遺伝子発現を調節する標的遺伝子を同定する。一方で、今回の研究により、大変興味深いことに、ETP分画のなかにもGATA2の発現が高い分画(GATA2-high ETP)と低い分画(GATA2-low ETP)が存在することが明らかとなった。LMPPにおけるGATA2遺伝子発現レベルを考慮すると、GATA2-high ETPが、胸腺における最も未熟なT細胞である可能性が考えられる。ETPの一部がT細胞だけでなくミエロイド系細胞への分化能を保持しているとする報告も踏まえると、実はGATA2-high ETPはミエロイド系細胞とT細胞系細胞の分化の最後の分岐点であり、そこでGATA2が重要な機能を保持している可能性もある。これは自然免疫細胞と獲得免疫細胞の分化調節における重要な発見となる可能性があり、この点についてもその詳細なメカニズムの解明も含めて本研究で追求していく。本研究では、これまで明らかにされてこなかった、初期T細胞造血におけるGATA2の役割が次々と明らかになる端緒がすでに多数得られている。本研究のさらなる推進が、初期T細胞造血異常の関与するさまざまな疾患の病態理解および治療法開発につながるものと期待される。
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