安定同位体自然存在度分析を用いた代謝モニタリング法の開発
Project/Area Number |
22K19726
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 59:Sports sciences, physical education, health sciences, and related fields
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 桂太 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (70323780)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | 安定同位体自然存在度分析 / 呼気分析 / 非侵襲代謝モニタリング / 安定同位体分析 |
Outline of Research at the Start |
健康科学・医科学分野において呼気に含まれる代謝有機分子の濃度分析は、代謝状態把握や疾患検知に対する非侵襲的な方法を提供する可能性から非常に注目されている。しかし、代謝有機分子の濃度変化には大きな個人差があることから、未だ方法開発に成功していない。 本研究では、従来の濃度分析とは違い、個人差がなく、代謝経路の情報を得ることが出来る安定同位体自然存在度分析を呼気中代謝有機分子に適用することで、非侵襲的に代謝状態をモニタリングする方法の開発に挑戦する。
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Outline of Annual Research Achievements |
呼気に含まれる代謝有機分子の濃度分析は、血糖や血中脂質などの代謝状態を簡便かつ非侵襲的にモニタリングする方法を提供する可能性から、健康科学・医科学分野において注目されている。しかし、代謝有機分子の濃度変化と代謝状態変化の間には明確な関連性は見出されておらず、呼気を用いた非侵襲代謝モニタリング法の開発は行き詰った状態にある。そこで本研究では、従来地球化学分野で利用されてきた、環境中の有機分子の起源物質や反応経路の変化をモニタリングすることができる安定同位体自然存在度分析を呼気中の有機分子に適用することで、新しい切り口で非侵襲的代謝モニタリング法を開発することを目的とした。 具体的には、これまでに地球化学分野で開発利用してきた有機分子の安定同位体自然存在度分析を、呼気アセトン・イソプレンに適用し、濃度分析では得られない代謝前駆体の変化情報を取得することで本研究目的を達成する。現在、呼気アセトン・イソプレンの濃度分析を用いた代謝モニタリング法の開発が進められているが未だ成功していない。本研究では、呼気アセトン・イソプレンの安定同位体自然存在度分析を実現し、血糖および血中脂質の変化等をモニタリングする方法を開発する。開発できればメタボリックシンドロームや糖尿病、脂質代謝異常症等の予防、診断、予後観察にも利用でき、健康科学・医科学分野における有用性を示すことができる。 本年度は、マイクロ固相抽出法とガスクロマトグラフィー・同位体質量分析法を組み合わせた方法を使用して、バイアル瓶に捕集した呼気100ccに含まれるアセトン・イソプレンの安定同位体自然存在度分析法を確立した。また予察的に1名の被験者に対してアセトンの安定同位体自然存在度変化と血糖値変化を比較することに成功した。両者の関係について現在解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
呼気中アセトンの濃度および安定炭素同位体自然存在度(以下安定同位体組成)を分析する方法を構築した。具体的には100ccバイアル瓶に呼気を採取し、マイクロ固相抽出法とガスクロマトグラフィー・同位体質量分析法を組み合わせた方法(SPME-GC-IRMS法)を使用して、1試料50分で、精度5%以内の濃度分析および±3‰以内の同位体分析が可能となった。呼気は採取後3時間まで保存可能であることが分かった。 構築した方法を用いて1名の研究対象者の呼気アセトンの濃度および安定同位体組成のモニタリング実験を実施した。モニタリング期間中、研究対象者の上腕部に血糖値モニターを装着し、血糖値も同時にモニターした。 呼気中アセトン濃度の変化と血糖値の変化の間に相関はなく、アセトン濃度変化が血糖値変化のプラキシーとはならないことが確かめられた。安定同位体組成の変化と血糖値変化との間にも明確な相関は認められなかった。アセトン濃度と安定同位体組成の間には弱い相関がみられた。アセトン濃度が高くなった時、主に脂質が利用され、逆にアセトン濃度が低くなった時、主に糖が利用されるという仮説に従った関係が観測できたが、安定同位体組成変化が糖・脂質の利用割合のみによって決定されているわけではないことが分かった。 今回のモニタリングによって、研究対象者の体調を悪くすることなく、解析に必要なデータを取得することができるモニタリング計画の安全性・有効性を確かめることができた。しかし、採取した呼気が必ずしも血糖値の極大値や極小値をとらえているわけではなく、より正確に相関を調べるためには血糖値の増減に合わせた呼気の採取が必要であることが示唆された。現在、得られたデータの解析を進めており、今後試料採取方法について改訂するべきかどうかを見極める。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、構築した方法を複数名の研究対象者に対し、呼気アセトンの濃度および安定同位体組成のモニタリング実験を実施し、得られたデータについて、血糖値と安定同位体組成の関係を導き定式化を目指す。 アセトンと同時にイソプレン、二酸化炭素の濃度および安定同位体組成が計測可能あることがこれまでの研究で分かった。規格化のためお同位体標準を準備し、アセトン、イソプレン、二酸化炭素の濃度、同位体組成を同時にモニターし、それらを総合して解析に利用する。 また、血中糖および脂質について、安定同位体組成を計測し、基質の影響を検討する。 呼気の採取方法についても、血糖値の極大極小に合わせた試料採取方法を検討する。また、絶食や糖・脂質成分のみの摂取、運動等により糖・脂質代謝に摂動を与え、同位体組成の変化と比較しながら、その解釈のヒントを得る。 イソプレンについては、どのような代謝状態の指標になり得るかが未だ明らかにされていないので、アセトンと血糖値の関係性の確立に加え、絶食や糖・脂質成分のみの摂取、運動等により糖・脂質代謝に摂動を与えた状態での、イソプレンの濃度・炭素同位体組成をモニターすることで、イソプレンの持つ代謝情報を探索する。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)