Project/Area Number |
22K19817
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 61:Human informatics and related fields
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
澤田 秀之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00308206)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 高次元幾何 / 接触インタラクション / 空間認知 / 触力覚 / SMAアクチュエータ |
Outline of Research at the Start |
近年のVR技術の発展によって、4次元情報を3次元仮想空間に射影することで、リアルタイムかつインタラクティブに可視化してユーザに提示する手法が提案されている。本研究では、VR映像技術と触覚ディスプレイを統合して、ユーザが高次元空間世界に視覚と触力覚を使って没入できるシステムを構築する。更に、本システムを用いて高次元幾何空間の探索実験をおこない、ユーザが高次元空間の体験を重ねながら、如何に未知の空間やそこに置かれた高次元物体を理解していくかを調査し、高次元空間の認知に関する新しい理論の構築をおこなう。
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Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は、VR技術と触覚ディスプレイを統合して、数学や物理学、情報科学の分野で扱われる高次元空間やそこに定義される物理現象、多次元データ情報を直感的に理解できるシステムを構築する。更に本システムを用いた空間認知実験によって、高次元空間の認知に関する新しい理論を構築することを目的としている。本年度はその研究の第2年次の成果として、4次元空間で定義される幾何構造との接触感覚を、力覚を用いてより物理的接触に近い形で提示するマルチモーダルなインタラクションシステムを構築した。 本システムは、ユーザに3次元スクリーンを提示するためのVRゴーグルと、仮想4次元空間での入出力を行うための3自由度力覚提示デバイス2台からなる。力覚提示デバイスの計6自由度の入出力のうち4自由度が仮想4次元空間の4次元座標系に対応し、ユーザは3次元スクリーンを観察しながら2台の力覚提示デバイスを両手で操作することで、4次元空間内の仮想上の手を制御できる。仮想上の手が4次元物体に触れると、4次元力覚ベクトルによる反力が生成され、2台の力覚提示デバイスを通してユーザの手に提示される。以上のプロセスによって、ユーザは両手を使って4次元空間内の物体に直接触れるようなインタラクションを体験することができる。 本システムは、4次元空間で定義される幾何構造との接触感覚提示に力覚を用いることで、接触感覚の直感性や表現の精度を大きく向上させた。本システムを用いた高次元空間における接触感覚を伴うインタラクションによって、高次元の物体や高次元データなどの抽象的な対象を「凹凸」や「形状」といった直感的な性質を通して理解できるようになる。これまでの研究成果は、数学や物理学、情報科学の教育や研究において革新的なアプローチを提供すると共に、データ解析や可視化手法の更なる発展にも貢献することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、人間の直感的行動を高次元幾何空間へと拡張し、VR映像技術と触覚ディスプレイを統合して、ユーザが高次元空間世界に視覚と触力覚を使って没入できるシステムを構築することを目的としている。本研究の実施計画は、大きく3つの項目からなる。まず、高次元空間から3次元空間への射影の数学的記述を構成し、それをVR映像によりユーザに提示する手法を提案する。第2項目では、形状記憶合金(SMA)ワイヤを利用した微小振動アクチュエータによる新しい触覚グローブを構築し、それをVR映像システムと統合する。これにより、高次元空間の映像に対するユーザの接触動作へのリアクションとして、リアルタイムで手の全面に触覚感覚によって提示することが可能となる。第3項目では、ユーザが高次元空間の体験によって、高次元の幾何構造や空間構造を直感的に理解できるようになるのかを検証し、高次元空間の認知構造やその形成過程について新しい理論の構築を行う。 研究2年目において、4次元空間の対象との接触感覚を、触力覚を用いて提示するシステムを構築した。また本研究成果は、情報処理学会全国大会にて発表した。SMAワイヤによる微小振動パターンによる触覚提示デバイスの構築を進めながら、これと併せて力覚を提示することにより現実感の高い接触感覚提示が可能となることを示した。 更に、高次元の認知検証実験の事前準備として、3次元空間と4次元空間を共通のインタフェースで提示するシステムを構築した。本研究成果は、国際学会ICAT-EGVE 2023にて発表した。構築したシステムを用いて、ユーザに同じ3次元空間と4次元空間の双方の認知実験を行い、結果の比較検討をおこなった。 以上を踏まえると、3年間の研究期間のうち2年目において、研究実施計画中の3項目のうち第2項目までと同等の進展が達成され、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究課題の推進方策としては、第一に、これまで構築してきたシステムに、認知実験のために必要となる機能を導入する。まず、3次元空間と4次元空間を共通のインタフェースで提示する機能を触力覚提示機能と統合し、接触感覚を伴うインタラクションを3次元と4次元の双方に実装する。これにより、接触感覚の有無による空間把握や認知の変化を、3次元空間と4次元空間の間で比較することが可能となる。また、物理演算の導入を進める。第2年度において導入した触力覚による接触感覚提示機能によって、4次元物体に力を加えたり、あるいは4次元物体から力を受けたりすることが可能になったため、物理演算と組み合わせることで、さらに没入感の高い高次元体験が実現できると考えられる。衝突判定や回転モーメントを含む高次元空間の剛体運動シミュレーションは、幾何代数の概念の導入によって可能となる。 次に、これまで構築してきた触力覚を伴う高次元空間インタラクションシステムを用いて、高次元空間の認知に関する検証実験を行い、新しい理論の構築を行う。従来研究において様々な可視化及びインタラクション手法が提案され、それらを通して高次元空間の理解や情報判別が可能であることが確認できた。一方で、人がそうした高次元の体験をどのように認知しているかに関しては、先行研究に乏しく、未だその機構が明らかにされていない。そこで、本研究で構築したシステムを用いて、視覚と触力覚の双方を活用する3次元空間及び4次元空間のタスクを設定し、認知実験を実施する。 提案研究最終年度となる次年度においては、最終目的である認知理論構築に向け、認知実験の計画と実施を中心に研究を遂行していく。構築システムの機能実装に関して予期しない問題が発生した場合は、現状のシステムで実施可能な認知実験を再計画し、十分な成果が得られるよう逐次、留意していく。
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