ドキュメンタリー写真概念の再検討ー反省的作品と集団的写真実践の分析を通じて
Project/Area Number |
22K19970
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0101:Philosophy, art, and related fields
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
田尻 歩 東京理科大学, 教養教育研究院葛飾キャンパス教養部, 講師 (60966191)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | ドキュメンタリー写真 / リアリズム / 集団制作 / 全日本学生写真連盟 / プロレタリア写真 / フォトリーグ / ハックニー・フラッシャーズ / プロレタリア文化運動 / 学生運動 / 反省的ドキュメンタリー / 労働者写真運動 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、ドキュメンタリー写真の見方を刷新することを目的としています。これまでの研究では、ドキュメンタリー写真において、被写体が無力で受動的な犠牲者として描かれてしまう点や、映された社会問題よりもそれを撮影した写真家が注目されてしまう点などが問題視されてきました。しかし、こういった諸々の問題を意識した上で創作された反省的ドキュメンタリーや、抑圧される者たち自身が撮影者となる集団的写真実践はそれほど広く研究されてきませんでした。本研究では、日本と欧米の反省的ドキュメンタリーと集団的写真実践の系譜を比較して提示することで、ドキュメンタリー概念の見直しを試みます。
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Outline of Annual Research Achievements |
最終年度には、1970年代にロンドンで活躍した社会主義フェミニスト写真家集団「ハックニー・フラッシャーズ」の研究を進め、発表を行なった。彼女たちの作品は、美術館に入れられる「アート作品」としてよりも、地元コミュニティと密接につながりながらそのコミュニティをどう表象するかを念頭において作られている。発表では、こういった集団的写真実践の生じる社会的条件、その際に用いられたモンタージュという手法、その実践の基礎となった社会主義フェミニズムの思想、そして当時展開し始めた写真理論の発展の影響に着目しながら、グループの活動と作品の分析をおこなった。また、ロンドン出張を行い、この集団に関する資料を収集できた。 また、アメリカ合衆国で1930年代から活動をしていたドキュメンタリー写真家集団「フォトリーグ」の研究を進めた。フォトリーグはもともと、労働者写真運動のアメリカの団体「労働者映画写真同盟」から分離独立した団体で、活動の初期には地域住民たちと対話しながら住宅問題をはじめとする社会問題に取り組む協働的撮影プロジェクトを実施していた。本課題では、この活動の社会背景、具体的な実践のあり方を分析した。 最後に、本科研費プロジェクトにおいて前年度から進めてきた反省的ドキュメンタリー写真と集団的ドキュメンタリー写真についての既発表論文・発表原稿のまとめ・修正作業に取り組んだ。この作業はすでに終了しており、2024年度中には単著として刊行予定である。内容としては、これまでほとんど詳細に検討されてこなかったプロレタリア写真運動や全日本学生写真連盟の研究、日本ではほとんど注目されてこなかったハックニー・フラッシャーズやアメリカ合衆国のフォトリーグといった集団的ドキュメンタリー写真の諸実践を比較しつつ提示するもので、本科研費採用期間内の出版は叶わなかったが、本プロジェクトの成果である。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)