Project/Area Number |
22K19978
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0101:Philosophy, art, and related fields
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
室屋 安孝 神戸女子大学, 文学部, 教授 (10964017)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 仏教論理学 / 議論学 / 論議 / vada / nigrahasthana / インド仏教論理学 / ダルマキールティ / ヴァーダ・ニヤーヤ / シャーンタラクシタ / 認識論・論理学 / 写本解読 |
Outline of Research at the Start |
インド論理学の理論的発展において後代にまで甚大な影響を及ぼしたのは、仏教論理学派のダルマキールティ(紀元後550-660年頃)である。その最後期に位置する著作『ヴァーダ・ニヤーヤ』(論議規定)は、1991年にM.T.ムフ氏によって批判的校訂本が出版された。近年、中国チベット自治区で発見された梵語写本の出版がなされる中、『ヴァーダ・ニヤーヤ』の新出写本の同定もなされ、『ヴァーダ・ニヤーヤ』の原典批判をめぐる研究環境が改善している。再校訂を視野に入れた原典批判と解読研究はインド論理学の研究にとって重要な課題であり、本研究は将来的な総合的研究のための基盤を構築することを目的としている。
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Outline of Annual Research Achievements |
『ヴァーダ・ニヤーヤ』は著者ダルマキールティの論理学を基礎として、哲学的議論における友好的、敵対的論議における勝敗を判定するための規準を定めた論理学書である。令和5年度は、後期ダルマキールティによって完成された論理学説を中心に、健全で合理的な論議の規準とその根拠づけを行う自説章(svamata)の前半部分について、デプン寺旧蔵の新出写本の解読をもとに翻刻を用意し、『ヴァーダ・ニヤーヤ』のチベット語訳やシャーンタラクシタによる注釈『ヴァーダ・ニヤーヤ・ティーカー』を参照しつつ校訂作業を進め、対応する英訳を作成した。令和6年3月には国内研究協力者である佐々木亮氏との研究会を開催し、校訂における問題箇所の検討や今後の校訂会議の実施方針について打ち合わせを行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度に本研究を始動した当初の予定では令和5年度までに『ヴァーダ・ニヤーヤ』の自説章の前半部分について翻刻、校訂及び英訳作業を完了する予定であったが、関連する一次資料のうち、シャーンタラクシタ注のチベット語訳の翻訳資料としての問題性やそこに含意される異文情報の分析、その他諸般の事情により、校訂作業はやや遅延し、当初予定の4分の1ほどを残している。本文批判において特に問題となったのは、事物の「存在性」(sattva)の定義をめぐる箇所であったが、これについては、異なった本文を保有する『ヴァーダ・ニヤーヤ』写本2点の異読や、同様に写本間の異読を示すシャーンタラクシタ注について、研究協力者である佐々木亮氏と検討し、一定の結論に到達することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の延長申請が承認されたことに伴い、本研究の最終年度となる令和6年度は、当初予定した前半部分の校訂作業及び英訳作成を完了させ、それをもとに国内研究協力者との校訂会議を定期的に開催する予定である。また、インドにおける論議の伝統に精通した早稲田大学高等研究所講師の須藤龍真氏に新たな研究協力者としてご参加いただけることになったため、『ヴァーダ・ニヤーヤ』のより精密な歴史的解釈だけでなく、その思想史的位置付けや、ダルマキールティの議論学を領域横断的な視点から意義づける可能性を視野に入れた総合的研究のための予備的考察を期待することができる。その他、令和6年12月の国際学会などにおける成果発表を企図している。
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