Project/Area Number |
22K19999
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0102:Literature, linguistics, and related fields
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
金 景彩 慶應義塾大学, 外国語教育研究センター(日吉), 助教 (50962437)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 朝鮮文学 / 植民地文学 / ナショナリズム / 純粋文学 / ポストコロニアリズム / 金東里 / 韓国朝鮮文学 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、植民地期朝鮮の「純粋文学」を分析し、「純粋文学」に表れた主体のあり方が帝国/植民地の支配言説に対して持ちえた意義を、ナショナリズムの脱構築の観点から解明する。朝鮮的アイデンティティを保つため、郷土的美を追求して政治的言説を放棄したという消極的評価を受けてきた「純粋文学」は、しかしながら、民族主義、マルクス主義等の言説が治安維持法により後退した1930年代に特有の抵抗の空間を切り開いた。「純粋文学」が有した抵抗性を帝国/植民地の暴力的な主体形成に包摂されない新たな主体形成の企てとして明らかにすることが本研究の目的である。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、1930年代の純粋文学が植民地ナショナリズムに対してもつ意味をより広い文脈から明らかにするために、それを①普遍主義・普遍性をめぐる諸言説との関係から分析するとともに、②近年、ポストヒューマニズムに総称される一連の思想的潮流に照らして読み解く作業を行った。まず、2023年9月に発表した論文「言語ナショナリズムと言語教育の拮抗」(『慶應義塾 外国語教育研究』第19号)では、単一言語への統合を企てる統治側の言語言説および政策との拮抗関係の中で、植民地の言語ナショナリズムの内実が形成されたこと、また、そのように形成された言語ナショナリズムが、翻って、植民地解放後の朝鮮においては、朝鮮語の中にある多様な言語のあり方を抑圧するメカニズムとして作用していたことを明らかにした。これにより、「純粋文学」が提起された1930年代のナショナリズムの性格をより具体的に把握することができた。さらに、2023 World Convention of the Korean Languageの企画パネルでの発表(「〈アジア文学〉の再来──日本におけるK-文学/ジャンル論の周辺」)や、ワークショップ「2023 日韓新進研究者定例会議:21世紀文学研究の新しい感性、対象、テーマ、方法論」での発表(「ポスト人文学と文学の位相──近代文学研究からの問い」)は、純粋文学(論)にみられる普遍主義の特性が、植民地解放後から現代までの朝鮮・日本文学において反復・変容される様相とその問題性を取り上げた。これらの研究実践から純粋文学(論)を逆照射することで、その反普遍主義的な性格が根本的には、帝国(国家と資本)のエコノミーに対する抵抗として生まれ、機能していたことを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、次の四部から構成される。すなわち、①1930年代前後の朝鮮/日本本土の思想的状況の整理、②「純粋文学」(論)における「主体」の内実の分析、③当時の思想状況における「純粋文学」の意義と限界の導出、④ナショナリズム理論との照合のプロセス、である。2023年度は、韓国での資料調査とテクスト分析を通じて、主に③と④の課題に注力した。先立つ2022年度の研究を通じて明らかになったことは、純粋文学(論)から、ナショナリスティックな共同体を解体(「脱構築」)する手がかりを探ることができるということであった。続く2023年度には、純粋文学(論)の周辺のテクストを精査することで、当時のナショナリズムのあり方を普遍主義との関係から具体的に捉えるとともに、作品の中に表れる労働・交換などの表象に注目することで、純粋文学(論)を帝国のエコノミーに回収されない主体を基礎づけるものとして規定した。帝国のエコノミーに関する論文はすでに投稿済みで、2024年度の下半期に発表される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、これまでの研究成果の集大成となる論文を発表する予定である。テクスト分析および理論化に時間を要したため、当初2023年度に行う予定だった総まとめの成果発表を2024年度中に行う。とりわけ、当時の純粋文学論をリードし、解放後の韓国文壇の中心的存在となる金東里の植民地期の創作活動を網羅する論文を発表する予定である。年度末には植民地研究者との共同研究会を企画・開催し、植民地期の朝鮮における純粋文学(論)の限界と意義を、隣接諸領域と横断的に捉え直す。これにより、本研究課題を今後の研究に拡張させるための展望を提示する。
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