Project/Area Number |
22K20000
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0102:Literature, linguistics, and related fields
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
三原 里美 上智大学, 文学部, 研究員 (50963063)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 初期近代英国演劇 / シェイクスピア / 旅行文学 / 地中海貿易 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、初期近代においてEnglishnessの形成に影響を与えたイングランドと地中海東部地域との経済的、文化的交流を背景に、地中海世界を旅する登場人物を描くシェイクスピアのロマンス劇を分析する。具体的には、『ペリクリーズ』、『冬物語』、『テンペスト』において多文化的な地中海世界を旅する登場人物が自らの文化的アイデンティティの危機を経験しながらも、「他者の再生」、「自己の再生」、「土地の再生」を通して自己像を確立する様子が、地中海世界と遭遇するイングランド人の理想像を体現していることを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、初期近代においてEnglishnessの形成に影響を与えたイングランドと地中海東部地域との経済的、文化的交流を背景に、地中海世界を旅する登場人物を描くシェイクスピアのロマンス劇を分析するものである。本年度は『テンペスト』の分析を中心におこない、作品の舞台となる地中海の島とキャリバンに関する調査を通じて、キャリバンを地中海世界の混交性を表象する人物として捉え、この島を支配するプロスペローが、地中海世界を支配するイングランド人という幻想を提示していることを明らかにした。 本年度も国内外での資料収集、調査をおこない、キャリバンの民族性と関係すると思われるアルジェやトルコに関する資料を参照した。『テンペスト』の島を初期近代の地中海情勢と関連付ける研究は存在するが、キャリバンの民族性についてはアフリカ人と関連付けられることはあるものの、彼をトルコ人の象徴として論じる研究はほとんどなかった。そこで、キャリバンの母親がアルジェ出身と言及されていることから、同時代のアルジェにおけるトルコ人のイメージを探ることで、キャリバンがアフリカ南部の黒人奴隷というよりも、アフリカ北部の地中海沿岸地域に住むトルコ人と結び付きが強い可能性が浮かび上がった。さらに、キャリバンの母親のシコラクスという名前がオスマン帝国内の地域を連想させる点や、「悪魔」と呼ばれるキャリバンが同時代イングランドにおけるトルコ人のイメージと類似する点も明らかになった。 また、地中海世界と対峙するイングランド人としてのプロスペローについては、テクストの精読と二次資料の参照を中心として分析を進めた。プロスペローの魔術が魔女メディアの黒魔術と類似する点などを分析し、彼が地中海世界の黒魔術をいかに島の再生のための魔法へと変え、地中海世界の再構築を試みているかを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の始めに執筆を進めていた『冬物語』に関する論文の完成が遅れたため、論文の投稿を次年度に持ち越すこととなった。それに伴い、『テンペスト』に関する研究も進展が遅れ、プロスペローについての議論を補強するためにさらなる調査が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き『テンペスト』の分析をおこない、プロスペローの役割についての議論を発展させたい。そのためには地中海世界と対峙する初期近代イングランド人に関する資料を参照し、地中海の島を支配するプロスペローとの類似点をより深く探りたい。
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