英国ヴィクトリア朝女性作家の小説における障害者と非障害者の連帯及びその心理的影響
Project/Area Number |
22K20003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0102:Literature, linguistics, and related fields
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
星 志乃 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (20962096)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 社会的弱者 / ヴィクトリア朝小説 / 障害 / ジェンダー / 英文学 / イギリス文学 / 障害学 / Disability Studies / Crip Theory |
Outline of Research at the Start |
本研究は、ヴィクトリア朝女性作家の小説における障害者と障害を持たない人物(以下、非障害者)の関係に注目し、①障害者と非障害者の関わりはどう描かれているのか、②障害者と非障害者の連帯が両者にもたらす心理的影響はどのようなものかを明らかにする。研究対象はエリザベス・ギャスケル、ダイナ・マリア・クレイク、シャーロット・メアリ・ヤング、ジョージ・エリオット4名のヴィクトリア朝女性作家の小説15編である。障害の観点から研究対象作品を検討することで各文学作品や作家の再評価が期待できる。さらには多様な価値観を受容する現代社会を構築する重要性を示し、文学が持つ社会性について新たな視座を提供することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の研究成果の1つとして、日本ギャスケル協会が発行する学術誌『ギャスケル論集』への研究論文(「エリザベス・ギャスケルの『ルース』における中産階級男性障害者の表象」、『ギャスケル論集』、第33号、2023年10月、pp. 77-90)の投稿が挙げられる。この論文では、ギャスケルが描く障害者と非障害者の関係は相互補完的であることを明らかにした。これらの考察をもとに、当該論文ではギャスケルのRuthが堕落した女性の問題だけでなく、障害者の問題をも描いた社会小説として読めることを示した。また、本論文は日本ギャスケル協会奨励賞を受賞した。 2点目の研究成果として、ギャスケルの中編小説“My Lady Ludlow”に登場する3人の身体障害をもつキャラクターについての考察を研究論文(「エリザベス・ギャスケルの『ラドロー卿の奥様』における「障害」が生み出す連帯と社会変容」)にまとめ早稲田大学英語英文学会発行の『英語英文学叢誌』第53号に投稿し、査読の結果、学術誌への掲載が決定した。本考察では障害を持つ男性キャラクターが社会変容を促進させる役割を担っていることを指摘した。一方で、女性障害者マーガレット・ドーソンの結婚の可能性が本作のプロットで否定されている点や、実力主義社会へ移行しつつある共同体での生活が続けられなくなる点からは、「障害」という経験が個人レベルで多様であることが明確となった。 3点目に、ダイナ・クレイクの小説John Halifax, Gentlemanの読解を完了させたことが挙げられる。現在、当該小説に関する複数の先行研究(書籍・学術論文併せて7件)の精査を行っている。今後は考察結果を研究論文にまとめ、日本ヴィクトリア朝文化研究学会の学会誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
進捗状況を「遅れている」とした理由は、本務校の助手としての業務が、当初予定していたものより大幅に増加してしまい、それにより研究時間が制限されてしまったためである。2023年度は、助手として所属している早稲田大学教育学部英語英文学科の公式ホームページを新しいものに作り直すこととなり、教員・在籍生・卒業生へのアンケートの実施や回答内容の整理、写真撮影、学科内での打ち合わせ、ホームページ制作会社との打ち合わせなどに多くの時間を費やすこことなってしまった。また、教育・総合科学学術院で発行している学術誌の編集委員や、教員互助会の企画・準備を行う幹事を担うことになり、さらに研究時間が削がれてしまった。その結果、研究成果のとりまとめに遅れが生じている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究が遅れる原因となった学科ホームページの作成は2024年4月で終了し、学術誌の編集委員、互助会の幹事の任期も2023年度のみであったため、より多くの時間を確保できる2024年度まで研究期間を延長して研究の遂行にあたる所存である。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)