Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
転向したプロレタリア作家たちによって書かれた1930年代の「転向小説」は、転向後の家への回帰をめぐる物語パターンを共有している。その背景となる転向政策は、治安維持法違反で逮捕された社会主義者を「思想転向」を条件に釈放する制度として1932年末頃に導入された。本研究は、当時の司法当局の言説において転向が家族国家への回帰として意味づけられていた点に留意し、「転向小説」の物語が〈家〉の比喩を通してこうした国家権力の規範的言説をどう批判的に転用し、または踏襲していたのかを、宗主国日本だけにとどまらず、植民地朝鮮における「転向小説」をも広く視野に入れて考察するものである。