ヴァイマル期の文学と哲学的人間学における〈共感〉の諸相――マンとシェーラーの比較
Project/Area Number |
22K20020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0102:Literature, linguistics, and related fields
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 啓峻 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 講師 (50966546)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | トーマス・マン / マックス・シェーラー / 共感 / 人間性 / 第一次世界大戦 / 哲学的人間学 |
Outline of Research at the Start |
ヴァイマル期に保守主義からの政治的「転向」を果たしたとされる作家トーマス・マン(1875-1955)が語った啓蒙的「精神」と「自然」を架橋する構想については、これまでも様々な解釈がほどこされて来たが、本研究では先行研究の中であまり顧みられてこなかったマックス・シェーラー(1874-1928)に端を発する哲学的人間学との同時代的な対応関係に着目し両者の比較を試みる。この比較からは、第一次世界大戦前の市民的な保守主義が、状況の激変したヴァイマル時代、人間学と共同体観において目指した中道的な道筋を、文学と哲学という異なる領域の言語で立体的に把握するという学際的な成果が期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
トーマス・マンの文学とマックス・シェーラーの哲学的人間学を比較する本研究課題においてキーワードとなる「共感」(Sympathie)概念には、人間同士の愛着や感情の一致という現代語に通じる意味に加えて、人間を含む森羅万象の間に働く引力という自然魔術的な意味でも用いられてきた。とりわけ、第一次世界大戦の敗北によって既存の社会秩序が失われたヴァイマル期において、そのような自然魔術的ニュアンスは、失われた人間同士のつながりを、エロスや身体といった人間の中の「自然」を通して回復しようという言説と相まって、強い影響力を持った。ここには、第一次世界大戦以前からドイツの教養市民層の中で力を持った一元論の思想潮流――19世紀にダーウィンの影響を受けたエルンスト・ヘッケルを源流とし、精神を含めた人間性を自然との一体性から導出しようとした――も含まれるであろう。このような潮流の中でマンとシェーラーは、「自然」による共同性にある程度の価値を見出す反面、そこから人間独自の「距離」を見出そうとした点で、類似の思想を持っていたと言える。このような視点から本年度は主に、シェーラーの哲学的人間学にあらわれた「自然」観について、マンとの比較の観点から考察している。以上の考察から得られた結果を2024年度は論文の形にまとめて発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
シェーラーに関する文献の読解に予想以上の時間を割かれているため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きシェーラー文献の読解を続け、マンとの比較論を執筆する。
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Report
(2 results)
Research Products
(1 results)