1960年代から70年代のトルコ共和国における国民像の転換と宗教教育
Project/Area Number |
22K20053
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0103:History, archaeology, museology, and related fields
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
上野 愛実 岩手県立大学, 公私立大学の部局等, 講師 (60964723)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | トルコ / 宗教教育 / 世俗主義 / イスラーム / トルコ共和国 / 政教関係 / 国民形成 / 政教分離 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、1960年代から1970年代のトルコ共和国に注目し、「世俗的なトルコ人」から敬虔な「ムスリムであるトルコ人」へと、国家がどのようにしてあるべき国民像の転換を図ったのか明らかにすることを目的とするものである。そのために、こうした国民像の転換につながった政治的経緯を政治家や知識人たちの議論から検討し、トルコ共和国においてイスラームが、国家が推進するトルコ国民形成と結び付けられるようになった過程を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1960年代から1970年代のトルコ共和国に注目し、国家がどのようにしてそれまでの「世俗的なトルコ人」から敬虔な「ムスリムであるトルコ人」へと、あるべき国民像の転換を図ったのかを明らかにすることを目的としている。2022年度に国民像の転換をめぐる政治的経緯を検討した結果をふまえ、2023年度は、そうした政治的経緯が反映されていると考えられる宗教教育に注目して研究を行った。そのなかでは、1960年代から1970年代の政治家および知識人たちによる国民形成と宗教教育をめぐる議論が、宗教教育および、宗教の扱いと密接に結びついた道徳教育に関する政策、そして実際の教育内容にどのように反映されていたかを調査した。具体的には、国民教育省諮問会議の議事録、国民教育省による定期刊行物『国民教育省広報誌』、国民教育省によって小学校4年から高校3年で使用することが規定されていた宗教科および道徳科の教科書と副教材を主な史料として用いた。調査にあたっては、宗教教育政策の変遷と教育内容の変化を検討した。また、宗教科と道徳科教材の執筆陣へも焦点を当て、彼らと政治家たちとの関係や、政治的思想、宗教への理解も検討した。これにより、宗教をめぐる政策上の国民像の転換が、どのように宗教教育へと反映されたのかを分析し、その成果は2023年12月に開催された九州史学会大会イスラム文明学部会にて、「トルコ共和国の公教育における宗教教育の拡大過程(1950年代ー1970年代)」という題目で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のように、本研究は、トルコ共和国政府による国民形成のなかで、あるべき国民像のなかにイスラームがどのように取り入れられていったのかを明らかにすることを目的としており、その一環として、本年度においては、そうした転換による新たな国民像を反映させる媒体としての宗教教育に注目し、その政策の変遷および教育内容、教材執筆陣の経歴を検討することを計画していた。計画通り、これまでの調査の内容をまとめ、12月に開催された九州史学会大会において研究発表を行った。 本年度の研究期間のなかで、計画に必要な資料を調査・収集するべく、トルコ共和国のイスタンブルにおいて短期調査を1回、行った。そのなかでは、宗教科および道徳科の教材、『国民教育省広報誌』や日刊紙等の収集を進めた。ただし、勤務先での業務との兼ね合い、また、2023年2月にトルコおよびシリアで発生した大地震の影響により、当初、予定したよりも調査回数が制限され、かつ滞在期間も短いものとなり、調査に際して十分な日程を取ることができなかった。そのため、資料収集にやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、前年度に引き続き、国民性の転換の媒体となった宗教教育政策および道徳教育政策に注目する。これまでに収集した資料の読解を進めるのに加え、学習指導要領や教科書、日刊紙、保守知識人による雑誌など、史料収集の面で不十分な点を補うべく、トルコ共和国にて2週間程度の予定で短期調査を行うことを計画している。 また、2024年度には本研究課題においてこれまで進めてきた研究の内容をまとめ、研究成果の発信に努める。具体的には、学術論文を執筆し、年度の後半期に学術雑誌に投稿することを計画している。
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Report
(2 results)
Research Products
(1 results)