Project/Area Number |
22K20089
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0105:Law and related fields
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
酒井 智之 一橋大学, 大学院法学研究科, 講師 (20909535)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 刑法 / 共犯 / 幇助犯 / 心理的因果性 / 因果関係 / 心理的幇助犯 |
Outline of Research at the Start |
幇助犯の中心的な成立要件である因果関係についてはなお不明瞭なところが多く、それは人の心理を介する心理的幇助犯において特に顕著であるが、近時では心理的な働きかけの程度が大きいとは言い難い事案で幇助犯の成立を肯定した最高裁判例が現れるなど、判断基準の明確化は喫緊の課題である。本研究は、心理的幇助犯における因果関係について、人の心理を介するという特殊性が判断枠組みに与える影響を明らかにするとともに、具体的な判断基準の定立を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、人の心理を介するという心理的幇助犯の因果関係の特殊性がその判断枠組みに与える影響を踏まえ、その具体的な判断基準を明らかにすることである。 採択1年目である2022年度は、物理的幇助犯との対比で、心理的幇助犯における因果関係にどのような特殊性があるのかを明らかにするため、日本及びドイツの刑法学に関する文献を収集し、心理的幇助犯に限られない心理的因果関係一般の特殊性と、心理的幇助犯の因果関係に固有の特殊性に分けて検討を行うとともに、関連する人の心理領域に関する哲学・心理学の知見を調査した。 2022年度の研究成果は、以下の通りである。心理的な因果経過には、確実な予測を可能にする自然法則だけでなく、ある程度の予測を可能にする心理学的・統計的な経験則も解明されていないという特殊性がある。学説の一部は「蓋然性法則」に着目するが、法則的説明には利用できず、あるいは、そもそも因果的説明を目指したものではないために、法則の乏しさを解消しない。しかし、回顧的な判断として因果関係を認めることも可能であり、法則の乏しさは心理的因果関係の判断を不可能にしないことが明らかになった。次に、心理的幇助犯の因果関係に固有の特殊性については、証明の困難性や正犯者による恣意的な操作可能性などが挙げられるが、いずれも心理的幇助犯に固有の判断枠組みを導入することが必要であることを基礎づけないことが明らかになった。 以上の研究成果については、既に論文化して投稿を申請しており、2023年の7月頃に公表を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画では、2022年度は、物理的幇助犯との対比で心理的幇助犯における因果関係にどのような特殊性があるのかを明らかにするとともに、関連する哲学・心理学の文献について調査を行うことを計画していたところ、2022年度の研究を通じて、心理的幇助犯における因果関係の特殊性については、心理的因果関係一般に共通する特殊性と心理的幇助犯の因果関係に固有の特殊性の双方について、その内実と意義をおおむね明らかにすることができた。心理的幇助犯の因果関係の原理的な特殊性は固有の判断枠組みの必要性を基礎づけないとの検討結果は、2023年度において物理的幇助犯と同様の判断枠組みを採ることができるかについて検討することを予定する本研究において、重要な基礎をなすものである。 また、哲学や心理学の知見に関する調査を通じて、特に心理学の知見について、2023年度の研究計画で予定する具体的な判断枠組みの検討との関係でも一定の示唆を得られる可能性があることが明らかになった。もっとも、当初の研究計画では哲学・心理学の知見に関する調査は2022年度中に終える予定であったが、2023年度の検討事項との関係での調査は十分ではなく、引き続き調査を要する。 以上のように、関連分野の調査に関して2023年度に実施予定の研究計画との関係でなお調査を要することが明らかになったものの、2022年度の研究計画で予定した検討事項について結論を得ており、研究成果の公表についても予定通り2023年度の前半中の公表を見込んでいるから、研究計画は「おおむね順調に進展している」ものと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画で予定していた通り、本研究の最終年度である2023年度は、2022年度の研究成果を踏まえ、「蓋然性法則」に基づく判断枠組みを導入する見解をはじめ心理的幇助犯に固有の判断枠組みを導入する見解について検討を行い、物理的幇助犯と同様の判断枠組みを採るべきか否かを明らかにすることで、心理的幇助犯における因果関係の判断枠組みの解明を試みる。この研究計画を遂行するため、引き続き日本及びドイツの刑法学に関する文献を調査・検討するとともに、関連分野の文献についても調査を行う予定である。
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