Project/Area Number |
22K20136
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0107:Economics, business administration, and related fields
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Research Institution | Nagoya Keizai University (2023) Kyushu University (2022) |
Principal Investigator |
安部 伸哉 名古屋経済大学, 経済学部, 准教授 (30962857)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 萩藩 / 米市場 / 米相場 / 米切手 / 相場情報 / 偽造 / 米飛脚 / 米仲買 / 米会所 / 尾張藩 / 市場政策 / 御用達 / 近世 / 市場経済 |
Outline of Research at the Start |
本研究は,『川伊藤家文書』,『尾張徳川家文書』,『石河家文書』などを素材として,①尾張藩における現物・先物取引の仕組みを分析するとともに,②尾張藩庁の市場介入による米価政策の展開を明らかにすることを目的とする。とくに,一次資料から米会所の取引を復元し,藩庁による米価引上政策を検討する。これらにより,地方における米市場の実態把握と,藩庁による市場政策の独自性や有効性など,前近代の市場経済の展開を地方から見直すことが期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は,当初計画していた尾張藩の事例研究を修正して,萩藩を事例としつつ, 2本研究報告と2本の査読付き論文を掲載した。 まず,萩藩における投機取引の存在を,米会所の取引規則と相場操縦事件の事例から分析した(「萩藩の米市場における投機取引と大坂相場情報の利用―「岸本平八郎大坂米相場贋状一件」を中心として―」『経済学研究』第90巻第1号,2023年)。この論文では,萩藩の米会所において,現物取引に加えて,面着手形(めんつけてがた)を利用した延売買という形で,信用取引が行われていたことを指摘した。この信用取引の存在に加えて,萩では大坂から米相場の情報伝達を前提として,偽情報による相場下落と空売りによる利益獲得を狙った計画が実施された。この計画は失敗に終わったが,その理由として複数の米飛脚による相場情報の伝達が相場操縦の防止に役立ったと考えられる。 次に,萩藩における米切手の偽造問題を藩法と偽造事件の事例から分析した(「19世紀の萩藩における米切手の偽造問題」『三田学会雑誌』第116巻第2号,2023年)。この論文では,地方市場における米切手の偽造問題を指摘した。つまり,地方における米切手の利用には,偽造リスクが存在した。また,19 世紀半ばに集中した萩藩の米切手偽造事件を検討した。米切手偽造の背景に,1820 年代からの物価上昇トレンドと俸禄米の削減による家計困窮が指摘できる一方で,高米価は米切手を偽造するインセンティブとなった。この偽造米切手は,偽造発覚リスクを抑えるために,米切手担保金融の質物として利用された。広範囲での米切手流通は,偽造米切手の紛れ込む余地を生んだと考えられるが,米会所や米仲買の存在が,米切手の偽造発見と流通防止に寄与したと展望した。 2024年度も,収集済みの資料を存分に活用しつつ,新たな資料収集も行うことによって,研究報告・論文投稿につなげていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は,萩藩を事例としつつ, 2本の研究報告と2本の査読付き論文を掲載できた。しかしながら,当初計画していた尾張藩の事例研究を修正して,萩藩の事例に取り組んだため,全体の進捗状況はやや遅れていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は,引き続き萩藩を事例として,近世日本の地方米市場の展開を明らかにしていきたい。具体的には,山口県文書館が所蔵する諸家文書などを収集し,分析することで,村の立場から米切手の利用を解明したい。また,藩士の立場からも米切手の利用にアプローチを行いたい。そして,研究報告・論文投稿を行い,大坂とは異なる地方の米市場のあり方を提示すること目標とする。
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