Project/Area Number |
22K20308
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0110:Psychology and related fields
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小國 龍治 立命館大学, 総合心理学部, 助教 (70964609)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
|
Keywords | 乳児 / 幼児 / 道徳 / 発達 / 社会的認知 |
Outline of Research at the Start |
本研究では乳幼児期における道徳性の変容過程の解明を目指す。本研究によりヒトの乳幼児がより複雑で洗練された道徳性を備えていく発達過程を明らかにすることで,今なお多くの議論がある,乳幼児期における道徳性発達の全貌を解き明かすための示唆を提供する。そして,本研究が完成されれば,理論的な考察に留まっている,ヒトの道徳性が乳児期から幼児期にかけて博愛的なものから,戦略的かつ選択的なものに変容していく心的機序を明らかにするための実証的な証拠を投げかけることができる。
|
Outline of Annual Research Achievements |
道徳性はヒトが社会の中で適応的に生存するための重要な基盤となる。道徳性の萌芽は乳幼児期という個体発生の初期から観察されるが (Hamlin et al., 2007),その性質は発達とともに変容していく (Warneken & Tomasello, 2009)。しかし,より複雑で洗練された道徳観がいつどのように備わっていくかは不明な点が多い。そこで,本研究では乳幼児期における道徳性の変容過程の解明を目指す。道徳性の変容とはすなわち,その個体が属する社会の価値観に適応していく過程であり,それを検討することでヒトの乳幼児がどのような道徳性発達を経て,社会に適応していくのかを明らかにできる。 ヒトの乳幼児が複雑で洗練された道徳観を備えていく過程を理解するために,本研究では道徳性の適正性,相対性,多様性を理解し始める時期を解明することを目的としている。令和4年度は12ヶ月児を対象に集団によって異なる規範や価値観が存在することを理解し始める時期を検討した。具体的には,先行研究の手続き (Powell & Spelke, 2013) を参考に,12ヶ月児に対してグループのメンバーの運動と一致した運動を行ったメンバーと一致しない運動を行ったメンバーがグループのメンバーに罰せられる状況を呈示した。12ヶ月児が社会規範を理解しているのであれば,一致しない運動を行ったメンバーがグループのメンバーよりもグループのメンバーの運動と一致した運動を行ったメンバーが罰せられる状況に対する注視時間のほうが長くなると予測した。しかし,それらの状況に対する注視時間に違いは見られず,前言語期の乳児が集団によって異なる規範や価値観が存在することを理解していることを示す十分な証拠は得られなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では発達初期の子どもがより複雑で洗練された道徳観を備えていく過程を明らかにすることを目指している。社会規範は集団内の協調性を確保することを目的とした行動指針であり (Smetana & Braeges, 1990),それを理解する能力はグループの協調性を高め,特定の方向に行動を導くことで,効率的かつ効果的な利益の獲得を促す (Tomasello et al., 2012)。生後3年目を過ぎた頃から,幼児は社会規範を理解できることが示されているが (Rakoczy et al., 2008),その個体発生的起源については不明なままである。発達初期の道徳性に関する研究分野ではほとんど扱われてこなかった,社会により異なる規範が存在することを発達段階のどの時期から理解し始めるかを明らかにすることで,ヒトの乳幼児が社会の中で独自に創発された規範にどのように適応していくかを理解するための基礎的知見を提供できる。 そこで,昨年度 (令和4年度) は,ヒトの乳幼児が集団によって異なる規範や価値観が存在することを発達段階のどの時点から理解し始めるか検討した。具体的には,先行研究の手続き (Powell & Spelke, 2013) を参考に,12ヶ月児に対してグループのメンバーの運動と一致した運動を行ったメンバーと一致しない運動を行ったメンバーがグループのメンバーに罰せられる状況を呈示した。12ヶ月児が社会規範を理解しているのであれば,一致しない運動を行ったメンバーがグループのメンバーよりもグループのメンバーの運動と一致した運動を行ったメンバーが罰せられる状況に対する注視時間のほうが長くなると予測した。しかし,それらの状況に対する注視時間に違いは見られず,前言語期の乳児が集団によって異なる規範や価値観が存在することを理解できるという証拠は得られなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度 (令和5年度) は,昨年度 (令和4年度) 得られた知見に基づき,対象月齢や課題内容を調整し,道徳性の多様性を理解し始める時期を検討する。また,ヒトの乳幼児が道徳性の適正性や相対性を理解し始める時期を明らかにするための実験も早急に実施する。それぞれの実験では,先行研究の実験パラダイム (Hamlin et al., 2011; Kanakogi et al., 2017) を参考に,あるキャラクターが他のキャラクターに対して向社会的もしくは反社会的に振る舞う映像を呈示し,その視聴中 (注視時間) 及び視聴後 (把持行為) の反応を測定する。これにより,罪と罰の衡平感覚をつかみ,過剰な制裁を加えた者に対しては否定的な評価を下すことが可能になる時期を示すことで,ヒトの乳幼児が社会秩序を支える共同体成員として適応していく過程を明らかにできる。また,先行研究では明らかにされていなかった (Steckler et al., 2017),乳幼児が複数の他者の道徳性を相対評価できるようになる時期を示すことで,ヒトの乳幼児が大規模社会の中で適応的に生存していくための第一歩を踏み出していく時期を捉えることができる。以上の取り組みにより,ヒトの乳幼児が複雑で洗練された道徳性を備えていく発達過程を理解するための基礎的知見の蓄積を目指す。また,得られた知見は査読付き国際誌に順次投稿していく。
|