環境感受性の個人差を踏まえた自然体験活動の効果:青年の適応促進に向けて
Project/Area Number |
22K20329
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0110:Psychology and related fields
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Research Institution | National Institution For Youth Education Research Center for Youth Education |
Principal Investigator |
矢野 康介 独立行政法人国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター, 青少年教育研究センター, 研究員(移行) (30967568)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 環境感受性 / 感覚処理感受性 / 自然体験 / メンタルヘルス / 青年期 |
Outline of Research at the Start |
近年、不適応を示す中高生の増加が問題とされているものの、その解決策の柱である自然体験活動は、十分な成果を挙げられていない。そこで本研究では、自然などの環境刺激からの影響の受けやすさに関わる個人特性である環境感受性の概念に注目する。先行研究の知見を踏まえると、青年の適応を効果的に促進する自然体験活動の内容は、個々人が有する環境感受性の程度に応じて異なることが想定される。本研究では、環境感受性の高い中高生、低い中高生のそれぞれにおける自然体験活動と様々な心理的要因との関連を明らかにすることで、環境感受性の個人差を踏まえた効果的な野外教育の実現に向けた知見を提供することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
文部科学省(2021)の報告によれば、近年では、暴力や自殺企図といった不適応行動を示す中高生が増加しており、その予測因子となるメンタルヘルス悪化に向けた有効な解決策の一つとして、自然体験活動が注目されてきた。しかしながら、自然体験活動の効果には大きな個人差のあることが指摘されている(Bratman et al., 2019)。本研究課題では、自然などのさまざまな環境要因からの被影響性の個人差を表す、環境感受性(以下、感受性と略記;Pluess, 2015)の枠組みに注目した。すなわち、本研究課題の目的は、自然体験活動とメンタルヘルスとの関連について、感受性の個人差を踏まえた検討を行うことにより、個々人の特徴に応じた自然体験活動を展開するための示唆を提供することである。 令和4年度の研究では、まず、500名の中高生を対象としたインターネット調査より得られたデータから、1ヶ月あたりの自然体験活動の実施時間とメンタルヘルスの関連について、感受性の個人差を踏まえた分析を行った。その結果、自然体験活動からメンタルヘルスへの関連、ならびに自然体験活動と感受性との交互作用項からメンタルヘルスへの関連は、統計的に有意な値を示さなかった。次に、令和5年度に向けた予備的研究として、報告者の所属機関が令和2年度に収集したデータの二次分析を行い、小中学生を対象とした短期宿泊型の自然体験活動プログラムにおいて、その前後でのメンタルヘルスの変化は、感受性の個人差に応じて異なることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の実施計画において、令和4年度は、(1)質問紙調査を行い、日常的な自然体験活動の実施状況とメンタルヘルスをはじめとする各適応指標との関連を検討すること、(2)宿泊を伴う自然体験活動プログラムの効果検証を行うこと、の2点を予定していた。このうち、1点目について、上記のインターネット調査の結果から概ね達成できたと考えられる。2点目について、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、調査を実施する予定であったプログラムが中止となった。その代替措置として、本課題の対象年代とは異なるものの、既存データの二次分析から、一定の成果が得られた。加えて、令和5年度のプログラムでは、無事に調査を実施できる見込みであり、本報告書作成時点では、協力機関との打ち合わせも重ねている。 したがって、令和4年度の研究実施状況には、当初の計画から一部変更が生じたものの、令和5年度の研究計画を遂行することで、本研究課題の目的は達成可能であるものと考えられる。以上の状況を踏まえて、令和4年度は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的と令和4年度の研究実施状況を踏まえて、令和5年度には、2件の研究を行う予定である。 1件目の研究として、令和4年度にも実施した質問紙調査について、より大規模かつ縦断的に実施する。具体的には、1,500名の中高生を対象に4回の追跡調査を行い、(1)自然体験活動の実施状況や自然に対する意識が、メンタルヘルスやその関連指標(e.g., 情動知能)の変動とどのように関連を持つのか、また(2)それらの変数間の関連は、感受性の程度に応じて異なるのかどうかを検討する。 2件目の研究では、令和4年度に実施できなかった、高校生を対象とした自然体験活動プログラムの効果検証を行う。ここでは、1件目の研究で使用する、感受性やメンタルヘルスなどの指標に加えて、プログラムの中でのさまざまな体験(e.g., 自己開示、自然との触れ合い)の頻度についても測定する。これにより、感受性が高い個人、および低い個人のそれぞれにおいて、どのようなプログラムを構成することが、メンタルヘルス向上に寄与するのかを明らかにすることが期待される。 また、本研究課題の最終年度となるため、得られた知見の論文化も行う予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(6 results)