Project/Area Number |
22K20364
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0203:Particle-, nuclear-, astro-physics, and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高田 秀佐 東北大学, 金属材料研究所, 特任助教 (10967748)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 中性子 / 偏極 / スピンフィルター / ヘリウム3 / スピン交換光ポンピング法 / SEOP / ヘリウム |
Outline of Research at the Start |
偏極中性子の生成において、スピン交換光ポンピング法による中性子偏極デバイス(He-3スピンフィルター)は、meVからeVのエネルギーに相当する中性子(熱-熱外中性子)の偏極が可能である。このデバイスは従来の核偏極法で必要とされた高磁場や極低温が不要という利点がある一方で、外磁場の影響を強く受けると性能が低下してしまう欠点を持つ。そのため、中性子ビームラインのような磁性体が多い環境下では、これまで実用が難しかった。本研究では、磁場シミュレーションと磁気シールドを用いてこの問題を克服し、J-PARCの各ビームラインに実装可能な、常設型フレキシブルHe-3スピンフィルターの開発・実用を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
偏極ヘリウム3を用いたスピンフィルターは、meV程度のエネルギーを持つ熱中性子に対して有効な中性子スピン偏極デバイスである。偏極ヘリウム3を用いたスピンフィルターには、中性子ビーム軸上でヘリウム3を偏極しつつ運用するオンビーム型中性子スピン偏極デバイスと、中性子ビームライン外で偏極したヘリウム3をビーム軸に設置して減偏極しきるまでの間に運用するオフビーム型中性子スピン偏極デバイスとしての2種類の運用方法が存在する。 オンビーム型中性子スピン偏極デバイスの開発を目的として、2023年度には主に2つの活動を行った。1つ目は、研究用原子炉施設JRR-3の中性子ビームライ ン6Gの東北大学中性子散乱分光器TOPANへのオンビーム型中性子スピン偏極デバイスの導入である。試料位置よりも上流にヘリウム3を用いた中性子スピン偏極デバイスを導入し、入射中性子のスピン偏極を可能とした。導入したデバイスは、ヘリウム3の偏極をビームライン上で行うことができる。そのため、中性子偏極率を実験期間中の数日間一定に保ったまま物理実験を実施できるという利点を持つ。2つ目は、中性子スピン偏極デバイスの主要素となるヘリウム3ガスを封入したガラスセル(ヘリウム3セル)の作製である。2022年度に作製したヘリウム3セルは到達偏極率が30-50%程度であった。2023年度に作製したヘリウム3セルは60-70%の偏極率を実現し、オンビーム型中性子スピン偏極デバイスへの用途としては十分な性能に達した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度には、偏極ヘリウム3を用いた中性子偏極デバイスを研究用原子炉施設JRR-3の中性子ビームライ ン6Gの東北大学中性子散乱分光器TOPANに初めて導入した。導入したデバイスは、レーザーによるヘリウム原子核偏極を行いつつ中性子ビームを照射した実験を行うことが可能である。このデバイスは、中性子ビーム実験の期間中、中性子偏極率が低下しないという利点を持つ。2023年11月にTOPANのビームライン上流に本デバイスを設置し、入射中性子ビームの偏極試験を実施した。ヘリウム原子核の到達偏極率は約80%、中性子偏極率は熱中性子領域において90%以上という性能を達成した。 また、J-PARCセンターの共通技術開発セクションにおいて、ヘリウム3を充填したガラスセルの作製を行った。ガラスセルを超高真空に真空引きして不純物を除去し、ヘリウム3ガスおよびアルカリ金属(Rb、K)を充填し、ガラスを封じ切ることでセルを作製した。 周波数掃引核磁気共鳴法(AFP NMR法)によって、作製したヘリウム3セルの偏極緩和時間およびヘリウム3の到達偏極率を見積もった。得られたヘリウム3偏極率は約60-70%、偏極緩和時間が約30時間であった。これまでに作製してきたヘリウム3セルと比較して、緩和時間は半分以下の数値であったが、到達偏極率は比較的高い部類であり、ビームライン常設型のデバイスとしては十分に要求性能を満たしている。
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Strategy for Future Research Activity |
TOPANでの開発においては、偏極中性子を用いた物理実験を実施するための環境構築を進めていく。2023年度にTOPANへ導入したデバイスは、入射中性子を偏極させる用途(偏極子)のために開発した。今後、TOPANにおいて偏極中性子を用いた物理実験を行うためには、試料まで中性子スピン偏極を保持したまま輸送するための磁場環境と、スピン偏極を解析するためのデバイス(解析子)の開発が必要となる。 また、ヘリウム3セルの開発においては、ヘリウム3偏極の緩和時間が短い原因の調査を行う。ヘリウム3セルの性能には個体差があり、その原因は十分に追求できていない。そのため、緩和機構に関連したいくつかのパラメータを定量的に評価するための装置を新規に開発する予定である。
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