恒星進化・星形成シミュレーションのシナジーで迫る恒星の自転運動の起源
Project/Area Number |
22K20377
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0204:Astronomy, earth and planetary science, and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 亘 東北大学, 理学研究科, 特任助教(研究) (20963987)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 恒星進化 / 星形成 / 自転星 / 角運動量輸送 / 降着円盤 / 磁場 |
Outline of Research at the Start |
角運動量は恒星進化を決定づける重要な量であるにも関わらず、星形成の過程で星がどのように角運動量を獲得しているのかは謎に包まれている。本研究では (i)恒星 (ii)磁気圏 (iii)降着円盤 の三領域からなる数値モデルを開発し、形成中の恒星のもつ角運動量時間発展を定量的に記述することでこの謎の解明を目指す。(i)には磁気回転星進化コードを適用し (ii), (iii) には高精度三次元磁気流体シミュレーションから較正した準解析的モデルを用いることで高度な物理的整合性を達成する。これにより太陽型星の進化モデル構築や大質量高速自転星由来の突発天体頻度予測など、周辺分野への基礎理論の提供を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では恒星の自転運動の起源を明らかにすることを目的として、恒星が生まれる際のガス降着の様子を詳しくシミュレーションしその性質を調査している。特に磁場の扱いについて世界的にも先進的な整合的モデルを用いており、恒星形成における磁場の重要性について新たな知見を得ることが目標のひとつだ。 この磁場モデルについてはまだ観測的に実証がなされたものではない。そこで今年度は、磁気モデルの検証に有用な「恒星の自転変動現象」の解明を行うサブ研究も行なった。結果をまとめた論文を執筆中のほか、結果の一部を日本天文学会春季年会で発表した。 恒星の自転運動の起源を明らかにするためには、恒星形成中の角運動量輸送の詳細をモデル化する必要がある。そこで現在、降着円盤から恒星への角運動量輸送を数値的に扱うためのシミュレーションコードの開発を行なっている。まず磁場や角運動量を含んだ降着流を扱う手法の開発に成功した。これにより、より正確な恒星形成過程のシミュレーションが可能になる。さらに、恒星内部の乱流による磁気増幅の効果を見積もる手法開発にも着手している。恒星形成過程にも乱流が形成されることが予期されており、この乱流の担う役割をより正確に理解することができるようになる。次年度以降、開発したコードを用いた多様な恒星形成計算を実行する予定だ。 本研究の目標の一つである大質量星進化の解明にもひとつ成果が得られた。大質量星は進化の最終期に超新星爆発を起こすと考えられているが、爆発をおこさずブラックホールを形成する例も多くあるとされている。爆発するかどうかの条件が大質量星のコア構造と密接に関係していることを見出し、論文として出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの進捗状況はおおむね順調だと評価できる。 まず本研究を進展するためのシミュレーションコードの開発が順調に進んでいる。恒星の形成過程において、降着円盤は恒星に、質量、角運動量、磁束の三種の物理量を受け渡すと考えられる。しかしこれまでの理論研究では、そのうちの質量の受け渡しの効果しか詳しく考慮されてこなかった。残りの二種の効果を考慮するための手法が存在しなかったためである。実際には角運動量や磁束の受け渡しは半径や光度など恒星のあらゆる性質に影響するプロセスであり無視して良い理由はどこにもない。したがって、これらを取り入れることを可能にする新たなシミュレーションコードの開発は、恒星形成の研究を行う上で非常に重要なステップである。 またサブ研究として位置付けられる自転変動現象の解明について、自転速度の変化が恒星内部の大規模磁場によるという理論モデルをつくり、将来の観測結果を用いることで、恒星内部の磁場構造に制限をつけられるという結果を得られた。結果をまとめた論文を執筆中であり、また結果の一部を日本天文学会春季年会で報告することができた。 最後に、今年度中にはドイツの共同研究者のもとに一ヶ月間の滞在をすることができた。緊密な連携を行うことで、大質量星の進化や星が死ぬ際の超新星現象についての彼らの専門的な知見を本研究に取り入れることができており、一層波及効果の大きな研究を進めることが可能になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、降着進化する恒星の性質に降着物質の角運動量と磁場がどのように影響するかを解析し、論文としてまとめることを目指す。特に恒星から放出される電離光子の量は、降着円盤や恒星周囲のガスの物理状況を一変させる重要な量なので、この電離光子の放出量を決定する量である、恒星の表面温度の進化について詳しく調べる予定だ。 計算に関しては、降着物質の角運動量と磁場の強さをパラメータとして、広いパラメータ範囲での計算を行う。多数のモデルを計算するためには、計算コードが安定に動作することが必要だ。そこでまずは、コードの安定性を点検し、問題があれば修正する方策をとる。その後ワークステーションを導入し、中規模の計算を進めていく計画だ。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)