原子核乾板による高エネルギーガンマ線天体の偏光観測の実現
Project/Area Number |
22K20382
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0204:Astronomy, earth and planetary science, and related fields
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 悠哉 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 研究員 (30964457)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | ガンマ線 / 偏光 / 宇宙線 / 原子核乾板 / 飛跡検出器 / ガンマ線天文学 |
Outline of Research at the Start |
フェルミガンマ線宇宙望遠鏡によってガンマ線天文学(sub-GeV/GeV)は飛躍的に発展してきた一方で、天体観測においてスペクトル測定やイメージング等と並んで重要な偏光の測定がこのエネルギー帯では実現できていない。我々は、原子核乾板を検出器とした高角度分解能、偏光有感なガンマ線望遠鏡の開発を進めてきた。本研究では、原子核乾板による高エネルギーガンマ線偏光測定システムを実用化し、偏光ガンマ線ビーム照射試験による感度の実証を経て、2023年春実施予定の気球実験データで世界に先駆けてVelaパルサー(>100MeV)の偏光測定に着手することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
GRAINE実験における原子核乾板を用いた高エネルギー宇宙ガンマ線(sub-GeV/GeV)の偏光観測実現に向けた開発を進行した。ガンマ線偏光観測の実現には、高精度な飛跡読み取りに加えて観測統計も重要になる。今年度は、これまで開発してきた原子核乾板の性能を最大限に引き出す精密飛跡読み取りシステムに関して、大統計処理に向けてハードウェアとソフトウェアの両方からシステムの高速化を図った。 ハードウェアでは、読み取り顕微鏡に用いている対物レンズの変更を検討した。現行の対物レンズでは飛跡が記録された乳剤層の撮像時に、収差による画像端の歪みが大きく十分な精度で銀粒子座標を決定することが困難なため中心付近のみを解析に用いていた。これに対して、よりGRAINE実験で用いる原子核乾板に適した対物レンズの選定を行うことで、収差の低減や測定精度の向上を目指した。5つの異なる対物レンズについてデモ機を用いて性能評価を行い最適なレンズを選定した結果、画像端での収差による歪みを既存のものと比べおよそ1/20にまで低減することができた。これにより解析に利用可能な画像範囲が大幅に拡大し、撮像回数が減少し解析速度にしておよそ3倍程度の高速化が期待される。 ソフトウェアでは、検出銀粒子の3次元決定プログラムを刷新し従来の3倍程度の高速化を実現した。これにより一度の乳剤層撮像の速度と同等の処理速度が得られ、撮像と画像処理の並列化が実現可能となった。これらの並列化によって解析速度にしておよそ2.5倍の高速化が可能となった。 上記の開発により従来と比べて解析速度をおよそ7倍高速化した。これにより偏光測定に必要な最低限の統計量のガンマ線を解析するのに要する時間が20->3ヶ月程度で実現可能な見込みとなった。さらなる高速化の余地も残されており、最終的に1-2ヶ月程度で解析可能になる見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では今年度に偏光ガンマ線ビーム試験の実施を計画していたが、2023年気球実験の準備状況を加味してビーム試験の実施は来年度に変更した。 一方で、ビーム試験や気球実験のデータ解析と並行して来年度に開発予定であった、精密飛跡読み取りシステムの高速化については、予定を前倒しして今年度に主要部分を完了した。対物レンズの性能評価と選定、処理プログラムの高速化を達成し、およそ7倍の処理高速化を実現可能な見込みである。 2023年実施予定の気球実験について、2月中旬までに日本での準備を全て完了した。2月中旬からは気球打ち上げ上のあるオーストラリアで現地最終準備を進め、予定通り今年度中に打ち上げ準備完了となった。来年度はじめに、気象条件が整ったタイミングで実験を実施する予定である。 以上のように、実施内容の順序の入れ替わりはあったものの、全体の進捗状況としては概ね予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年気球実験の準備が完了したため、今年度初頭に実験を実施する。実験後は回収した原子核乾板の現像や高速飛跡読み取り装置によるデータ読み出しを進める。 気球実験データ解析と並行して、偏光ガンマ線ビーム試験を実施し、開発した精密飛跡読み取りシステムでの偏光感度の評価を行う。合わせて精密読み取りシステムについて、乳剤深さ方向駆動用のモーターにピエゾアクチュエーターを導入することで、さらなる高精度化を計画している。 気球実験データについて、高速読み取りによってガンマ線反応の選出を進め、順次精密読み取りシステムを適用して、偏光測定に着手する。気球実験について、ヘリウムガス価格の高騰によって、当初2機の気球を打ち上げる予定だったが、1機のみの実施予定に変更された。これにより観測統計量が半減するが、偏光測定の高精度化によって感度を向上させて対応することを目指している。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)