Project/Area Number |
22K20563
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0601:Agricultural chemistry and related fields
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
西尾 俊亮 福島大学, 食農学類附属発酵醸造研究所, 特任助教 (20825880)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 腸内細菌 / GP2 / FimH / バイレイヤー干渉法 / 腸上皮細胞 / ハイマンノース型糖鎖 / レクチン |
Outline of Research at the Start |
腸の管腔側を被覆する粘膜バリアの機能破綻は、腸内細菌の粘膜層通過および腸上皮への定着を引き起こし、炎症性腸疾患などの原因となりうる。膵臓で合成されたGP2は、腸管管腔へ移行し線毛タンパク質FimHを持つ腸内細菌と結合することで、腸上皮への定着と炎症亢進を抑制する。FimHは、GP2のN型糖鎖を認識し結合すると想定されるが、その結合様式は不明である。本研究では、生化学的、物理化学的手法を用いてGP2-FimHの特異的認識機構を糖鎖構造-結合親和性相関の観点から明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
腸管は、私達が摂取した食べ物や侵入してきたウイルスや病原菌、さらに約100兆個にもなる腸内細菌に常に曝されている。多数の腸内細菌が生息している大腸は、厚い2層のムチン層による粘膜バリアをもち、腸管の恒常性を維持している。しかし、栄養不良などによる粘膜バリアの菲薄化は、腸内細菌の腸上皮細胞表面への定着を引き起こし、炎症性腸疾患の原因となりうる。GP2は、大腸が持つ炎症を抑制的に制御する仕組みの一つである。GP2は膵臓で合成される糖タンパク質で、腸管管腔へ移行したのち腸内細菌の線毛タンパク質FimHに結合し定着を阻害する。本研究では、腸管管腔における細菌認識機構について、GP2とFimHとの結合におけるタンパク質および糖鎖レベルでの構造活性相関を明らかにする。 研究計画初年度となる今年度は、マウスGP2のFimH結合ドメイン(D10Cドメイン)を哺乳類細胞で発現・精製するためのコンストラクトを構築した。発現コンストラクトをHEK293T細胞に導入し、培養上清への分泌を確認した。さらに、N結合型糖鎖付加部位に変異を導入したコンストラクトを作製し、同様に発現・分泌を確認した。分泌した組換えGP2タンパク質を部分精製し、糖鎖切断酵素による糖鎖構造の解析を行った。その結果、組換えGP2にはFimHが認識すると予想される構造の糖鎖がほとんどないことが明らかになった。また、大腸菌FimHのGP2結合レクチンドメインを発現するためのコンストラクトを構築し、大腸菌への形質転換後、ペリプラズムへの分泌発現を確認した。組換えFimHタンパク質を部分精製し、バイレイヤー干渉法(BLI)による糖タンパク質との相互作用解析系を立ち上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、ヒト由来のGP2を組換えタンパク質として発現・精製して使用する予定であった。しかし、ヒトGP2のD10Cドメインは4ヶ所のN結合型糖鎖付加部位を持ち、FimHとの相互作用解析が複雑になることが想定された。そこで、個体レベルでの知見が蓄積されつつあり、D10CドメインのN結合型糖鎖付加部位が2ヶ所のマウスGP2を用いた。HEK293T細胞で発現させたマウスGP2D10Cドメインの糖鎖を解析したところ、ヒトGP2を用いた先行文献の結果と異なり、FimHとの結合が想定されるハイマンノース型糖鎖をほとんど持たないことが明らかになった。これらを比較したところ、今年度作製したマウスコンストラクトはD10Cドメインのアミノ末端側にある、構造をとらないと思われる領域を含まず、ヒトコンストラクトでは含んでいたことがわかった。このアミノ末端側領域は、立体構造予測の結果から糖鎖付加部位に近接していた。すなわち、GP2において「ドメイン構造を取らない部分が細胞内での糖鎖付加に影響する」ことが考えられた。一方、FimHに関しては大腸菌を用いて組換えタンパク質を発現、部分精製し、ハイマンノース型糖鎖をもつニワトリオボアルブミンとの結合を確認することができた。以上のように、GP2に関しては当初の計画では予想していなかった興味深い結果が得られ、FimHに関しては次年度に使用する実験系を構築することができた。このような状況から研究は概ね順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスGP2のD10Cドメインにアミノ末端領域を付加したコンストラクトを新たに構築し、付加する糖鎖の構造解析を糖鎖切断酵素やレクチンブロッティングによって明らかにする。今年度得られた知見をヒトにも当てはめるため、当初の計画に戻り、ヒトGP2についても発現コンストラクトを構築し、糖鎖構造の比較解析を行う。実験計画に従って、HEK293T細胞以外の様々な生物種由来の細胞を用いた組換えタンパク質の発現および糖鎖構造の解析を進める。ハイマンノース型糖鎖を含む多様な糖鎖を持つGP2が調製できたら、組換えFimHを用いたバイレイヤー干渉法による定量的相互作用解析を行う。さらに、マウス糞便から調製した腸内細菌と組換えGP2タンパク質とを混合し、FACSによる分取および16s rRNA解析を行い、GP2結合性腸内細菌群と糖鎖構造との相関関係を解析する。
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