Project/Area Number |
22K21370
|
Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Home-Returning Researcher Development Research)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medicine, Dentistry, and Pharmacy
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 岳浩 東北大学, 大学病院, 講師 (30755690)
|
Project Period (FY) |
2023-03-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥61,230,000 (Direct Cost: ¥47,100,000、Indirect Cost: ¥14,130,000)
|
Keywords | 内在性レトロエレメント / 自己免疫疾患 / LINE-1 / 自己免疫 / 皮膚 |
Outline of Research at the Start |
ヒトの遺伝子の約半分はもともとエイズウイルスのように自己のゲノムを宿主のゲノムに組み込みながら感染していくウイルスなどが長い進化の過程で挿入されて増幅されたものからなっていて、それらは「内在性レトロエレメント」と呼ばれている。 これらのもともと「非自己」であったものが「自己」と化した遺伝子中の因子がどのような役割を持っているか長らく不明であったが、最近、癌、膠原病や老化過程で重要な役割を果たしていることが解明されてきている。この研究では、内在性レトロエレメントのうち最大のゲノム領域を占める長鎖散在反復配列(LINE-1)の活性化が自己免疫現象を引き起こすメカニズムを明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
内在性レトロエレメントはヒトゲノムの約50%を占め、進化の過程においてレトロウイルス などのゲノムが宿主ゲノムに侵入・増幅した結果、構成された領域である。中でもヒトゲノ ムの約20%を占めるのがLong Interspersed Nuclear Element (LINE)-1とよばれるレトロエレメントであり、近年の研究により、LINE-1の制御異常・活性化が自己免疫、癌などの病態に関与していることが示唆されている。本研究計画では自己免疫病態におけるLINE-1の機能的役割を包括的に解明し、その知見を通じて新規治療アプローチ開発に資することを目的として研究を進めている。研究実施計画の目的の大項目の一つとして皮膚の自己免疫におけるLINE-1の制御異常の役割の解析を挙げたが、ヒト皮膚における自己免疫疾患におけるLINE-1の発現が果たして異常なのかどうかを、様々な自己免疫疾患皮膚検体を用いて検討した。具体的には全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、乾癬、円形脱毛症の皮膚組織を用いてLINE-1Orf1pのタンパク質を染色したところ、コントロールの組織と比較してそれぞれの自己免疫疾患でパターンは異なるが、興味深いことに線維芽細胞において特にその発現が亢進していることが明らかとなった。さらに、非常に稀な遺伝性疾患であり、LINE-1の制御因子として知られるTREX1遺伝子の変異を有するAicardi-Goutiere症候群の患者皮膚検体を入手し、免疫染色による検討を行ったところ、同様に間質、特に線維芽細胞においてその発現が亢進していることを見出した。本研究は、自己免疫疾患におけるLINE-1の発現上昇が広く言われているものの、具体的にどの細胞種で上昇が見られるのかを初めて検討したものであり、今後のマウスのin vivoでの機能的な解析を有意義にするために重要な情報となると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ヒトの自己免疫疾患、特に皮膚における自己免疫におけるLINE-1の機能的な役割を解析することを目標とするため、まずはじめに具体的にどの細胞においてLINE-1が重要なのかを同定することが重要と考えられる。今回、帰国後に病院皮膚科の研究室でラボを持ったため、豊富なヒト皮膚臨床検体を生かし、広汎な皮膚自己免疫疾患、特に全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、乾癬、円形脱毛症の皮膚組織を用いてLINE-1の発現を検討したところ、想定していなかったが真皮の線維芽細胞において特にその発現が亢進していることが明らかとなった。また、さらに他の内在性レトロエレメントである内在性レトロウイルス(endogenous retrovirus; ERV)の発現の評価も行なっており、同様に興味深い結果を得ている。上記の結果を踏まえ、今後皮膚線維芽細胞に着目して、本細胞種におけるLINE-1を含めた内在性レトロエレメントの発現異常が病態において果たす役割について検討を進めていく。また、本研究課題の主要目的のうちの一つであるレトロエレメント発現の性差については、オスとメスそれぞれから別々に皮膚線維芽細胞を樹立する系を確立した。また、紫外線照射を用いて皮膚線維芽細胞でレトロエレメントを誘導する実験条件を設定した。これらの方法を用いて研究実施計画に基づき、雌雄によるレトロエレメントの発現の差とそれによる誘導遺伝子発現の差をRNA-seqなどで検討する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況を踏まえ、特に線維芽細胞におけるLINE-1および内在性レトロエレメントの制御異常が皮膚の自己免疫に及ぼす影響について検討を進めていく。実際、最近になって、自己免疫とも関連の深い老化現象のコンテクストにおいて、老化皮膚の線維芽細胞における潜在感染ヘルペスウイルス(CMV)の制御異常が自己反応性のcytotoxic CD4 T細胞の活性化をきたして老化過程に寄与することが報告され(Hasegawa T et al. Cell, 2023)、我々の着眼と合致する報告と考えられる。現在、線維芽細胞特異的な遺伝子発現を誘導するために、タモキシフェン誘導による線維芽細胞特異的Creマウス(Col1a2Cre-ERT2マウス)を米国のJackson研究所から輸入手続き中であり、本マウスの到着次第、線維芽細胞に着目したレトロエレメント発現異常マウスを作成して研究を推進していく予定としている。また、男女差、雌雄差に関するプロジェクトについてはまずin vitroでの検討としてオスおよびメス由来のプライマリ皮膚線維芽細胞を用いて、LINE-1を脱抑制させることが知られている紫外線照射による刺激を与え、オス由来の細胞とメス由来の細胞での応答の差やレトロエレメントの発現誘導の差を評価することから検討を開始していく予定としている。具体的には、同一の照射刺激を加えた線維芽細胞のRNAを抽出し、それを用いてqRT-PCR、RNA-seq、またタンパクレベルでの発現をウェスタンブロッティングにより評価する予定である。
|