Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
先史時代の人々の遺物から得られたゲノム情報を解析し、集団の生業形態(狩猟採集・農耕牧畜)の時期的変化との関連を分析する。現代の狩猟採集を生業とする集団は、農耕牧畜を生業とする集団より、1つの集団内におけるゲノム多様性が低く、複数の集団間の違いは大きいことが知られている。本研究では、狩猟採集から農耕牧畜へ移行する時期の古代人集団の骨・歯・ミイラのゲノム解析を行い、集団のゲノム多様性の移行を定量化する。また、糞石ゲノム解析からバクテリアのゲノム多様性を解析し、生業形態の時期的変化に伴うマイクロバイオームの変化をみることで、当時の人々の健康状態、衛生環境などを推定する。
本研究は古人骨から得られた全ゲノム情報の解析をおこない、古代人の食性・健康・行動を明らかにすることを目的とする。古人骨から得られるゲノム情報には、その個体由来のゲノムと死後、古人骨に入り込んだバクテリアのゲノム情報の両方を含んでいる。従来の研究では古人骨由来のゲノム情報からその個体の系統などの情報を得ていたが、本研究ではバクテリアのゲノムにも着目する。古人骨から得られるゲノムには、その個体が生前に感染した病原体のゲノムが含まれる可能性があるからである。外国人特別研究員のDr Adrian Davinは(1)縄文人と北東アジア少数民族との関連、および(2)南米ボリビア出土人骨のマイクロバイオーム解析を進めた。(1)既出の縄文人ゲノム配列データをわれわれの研究チームが全ゲノム解読したニブヒ族を含む北東アジア地域に住んでいる少数民族のゲノム配列情報と比較した。PCAプロットおよび系統樹を作成し、古人骨と現代人の遺伝的近縁性を視覚化したところ、漢民族を中心とする集団規模の大きな東アジア大陸の農耕民族を含むクラスターに対し、北東アジア少数民族は異なるクラスターを形成した。縄文人は後者に含まれた。(2)ボリビアの3つの時代(プレ農耕期、農耕初期、農耕発展期)からの古人骨について全ゲノム解読をおこなった。得られたNGSリードをヒト由来の塩基配列とバクテリア由来の塩基配列とにわけて分析をおこなった。既出の現代南米ヒト集団のゲノム情報をもちい、これにボリビア古人骨由来のゲノム配列データを合わせてPCAプロットおよび系統樹を作成した。つづいて、バクテリア由来のNGSリードを集めて個々のバクテリア種のアセンブリ配列を作成した。数種のバクテリア種のアセンブリに成功し系統樹解析を行ったが、病原性のあるバクテリアは検出されなかった。今後さらに、古人骨の系統関係とバクテリアの関係について詳細な解析を行う。
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PloS one
Volume: 19(1) Issue: 1 Pages: e0295924-e0295924
10.1371/journal.pone.0295924
Scientific Reports
Volume: 13 Issue: 1 Pages: 12659-12659
10.1038/s41598-023-39894-w
Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences
Volume: 290 Issue: 2005 Pages: 20231262-20231262
10.1098/rspb.2023.1262