日本におけるブランド温室トマトの社会的・技術的存続可能性に関する研究
Project/Area Number |
22KF0196
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Project/Area Number (Other) |
22F21795 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 外国 |
Review Section |
Basic Section 41020:Rural sociology and agricultural structure-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
秋津 元輝 京都大学, 農学研究科, 教授 (00202531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BLANCANEAUX ROMAIN 京都大学, 農学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2023: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2022: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | 温室栽培 / 地理的認証 / 季節性 / 社会的構築 / トマト / 万願寺トウガラシ |
Outline of Research at the Start |
農業における温室栽培は、作期をズラして供給量の少ない時期に出荷することによって、農業者の経済性を高める技術として広く普及している。しかし、本来は「自然」と乖離した存在であるにもかかわらず、日本ではこの農法による農産物が地理的認証を取得しており、「季節性」を超越したにもかかわらず、栽培場所の環境や季節性とも結びつく概念によって理解されている。これは、栽培の「不自然性」について賛否両論の議論が展開されている欧州と大きく異なる。本研究では、温室栽培に対する日本と欧州の考え方を比較分析することによって、農業のあり方に関する議論に文化的要素を取り入れ、未来にむけた多様な視角を提起する。
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Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画では、日本における温室栽培における持続可能性についての議論と現地の対応を主題としていたが、温室に関わる環境負荷の議論が日本ではほとんど課題とされていないことを確認した上で、地理的認証(GI)を取得した温室栽培作物(具体的にはトマトと万願寺トウガラシ)が季節性の概念とどのように折り合いをつけているかというテーマに焦点を当てて調査研究を実施した。この課題設定の修正については、私たちが所属する研究室の他の研究者や大学院生からの示唆も大きい。 現地調査は、トマトについては熊本県八代市の「塩トマト」、および万願寺トウガラシについては京都府の舞鶴市や綾部市、福知山市において実施した。八代市においては、研究室メンバーの援助も得ながら、生産者やJA関係者、小売店など14件のインタビュー調査をおこない、京都府においては、雇用した大学院生の支援を得ながら、同様に生産者やJA関係者など14件のインタビュー調査をおこなった。これらの調査結果をもとに、地理的認証という環境や風土と結びつけられる概念が、季節性、ここではとくに温室栽培という技術によって自然に手を加えられた季節性とどのように結びつけられるのかという、根本的な問いを現在、考察中である。季節性という概念が社会的に構築される点に注目して、理論化を進めている。 来日前にフランスで同様の関心のもとに実施してきた研究成果を、下記のように学術論文として発表した。この成果を今後の日本での研究の参照材料とする。 BLANCANEAUX Romain, 2022. "Seasonality as value(s) in organic farming. On the conflict on heating greenhouses in France". International Sociology, 37 (6):740-757. (online)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初のテーマであった、日本における温室栽培の環境的持続可能に関する議論の現状と展望に関する研究を推進することが、現地調査の初期の段階で課題として成熟していないことに気づき、環境的持続可能性との対比で考察するのではなく、地理的認証という自然や環境と密接に結びつけられる制度と対比させることによって、季節をズラしたり拡張したりできる温室栽培への社会的認識のあり方に注目することに課題を転換した。この転換は研究室の同僚や大学院生からの示唆によるものであり、結果的に研究室の多くのメンバーの関心を引くものとなり、研究の射程が広がるという好ましい結果を生むことになった。 共同研究者であるBLANCANEAUX氏が中心となって研究を進めるなかで、現地調査において日本語でのインタビューを実施することに不安もあったが、研究室の同僚が事例の紹介や調査に同行するなどして支援したり、また、語学に堪能な大学院生を雇用するかたちで調査補助を確保したりして、十分な資料収集をおこなえる体制を整えることができた。もちろん、新型コロナ感染症が収まってきたことも調査の実施において、きわめて前向きに作用した。 こうした調査活動から得られた資料をもとに、季節性という概念を手がかりとして理論的な考察を進めつつある。1年目に資料収集をおこない、2年目には補足調査もおこないつつ、それを理論化して研究集会での報告や学術論文として公表していくという手順を踏んでおり、有意義なテーマへの修正という点も含めて、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、八代市、京都府北部での温室栽培について補足調査を実施するとともに、当初の調査対象地であった福島県会津地方のトマト温室栽培についても、追加的に資料収集調査を実施する。 昨年度調査および本年度の追加調査などから得られる資料をもとに考察される内容について、すでに以下の2つの国際学会において、3本の研究報告としてエントリーしている。 1. Conference panel: BLANCANEAUX, Romain (with Jeanne Oui and Quentin Chance), Panel ‘Digital agricultures and the environment: imaginaries, materialities and governance’. Association for the Study of Food and Society (ASFS) & Food and Human Values Society (AFHVS) Congress, Boston May 31st, 2023 2. BLANCANEAUX, Romain (with Hart Feuer and Daniel Monterescu), "Seasonality as productive fiction: Reordering value(s) in novel ecological and temporal representations of Geographical Indication products in Japan”. International Sociological Association (ISA) Congress, Melbourne, June 24th-July 1st, 2023 3. BLANCANEAUX, Romain, "ICTs as a Mean of Protecting Tradition? The Case of Geographical Indication Manganji Sweet Green Peppers, Maizuru, Japan”. ISA Congress, Melbourne, June 24th-July 1st, 2023 これらの学会での発表を通じて意見交換をおこない、温室栽培における季節性の概念を練り上げ、国際的な学術誌に投稿する計画である。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)