All-Atom Analysis of Dissolution and Aggregation of Proteins in Multi-Component Solutions
Project/Area Number |
22KF0240
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Project/Area Number (Other) |
22F21756 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 外国 |
Review Section |
Basic Section 32010:Fundamental physical chemistry-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松林 伸幸 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (20281107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HANSEN STEFAN 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2023: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2022: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | 溶媒和 / 自由エネルギー / 変分定理 / MDシミュレーション / 分布関数理論 / イオン |
Outline of Research at the Start |
タンパク質の凝集は、アミロイドーシス疾患を引き起こす一因と考えられ、また、抗体医薬などの安定保存の支障ともなっている。本研究では、共溶媒をあらわに取り入れた分子動力学シミュレーションを全原子モデルを用いて実行しエネルギー表示溶液理論との融合手法による自由エネルギー解析を行う。自由エネルギーの成分分割によってタンパク質の溶解性や凝集性を規定する相互作用成分を明らかにし、分子間相互作用のエンジアリングによる凝集制御指針の策定を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、分子動力学シミュレーション(MD)と自由エネルギー計算によって、水と共溶媒(溶媒環境に含まれる水以外の非反応性成分)からなる多成分溶媒中のタンパク質溶質の溶解性と凝集性を全原子モデルで解析することである。本年度は、溶質は中性とし、ホフマイスター系列を念頭に置いてイオンを共溶媒とする解析を行なった。MDシミュレーションにはOpenMMを使用し、自由エネルギー計算ではエネルギー表示溶液理論を実装したERmodを用いた。力場はAMBERを基本として、分子内の部分電荷をRESP法によって適宜定めるとともに、イオンの力場は実験値に対して最適化されたものを用意した。主たる対象量は、溶質の過剰化学ポテンシャルの共溶媒濃度依存性である。これまでに、過剰化学ポテンシャルの共溶媒濃度に対する微分は、対応する溶媒和自由エネルギーの微分を溶質構造の上で平均したものに等しいという統計力学定理を証明し、本研究では、この定理の別証を与えるとともに溶液系の構造ゆらぎを定量化するKirkwood-Buff積分との関連を見出した。そこで、共溶媒カチオンをアルカリイオン、共溶媒アニオンをハロゲン化物として溶媒和自由エネルギーを解析した。溶質が中性のとき、アニオン依存性の方がカチオン依存性より大きいことが見出された。溶媒和自由エネルギーを構成する溶質-溶媒直接相互作用を見たところ、溶質-カチオン、溶質-アニオン、および、溶質-水相互作用の中で溶質-アニオン相互作用がホフマイスター系列と一致することが分かった。また、溶媒和自由エネルギーに対する別の寄与である排除体積効果を検討したところ、水の寄与、つまり、共溶媒の導入に伴う水の排除体積効果の変化という間接的な寄与が大きいことが示された。つまり、溶質-アニオン直接相互作用と水の排除体積効果がホフマイスター系列の支配因子であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、タンパク質やペプチドを溶質とし、それらの多成分溶媒中での溶解性や凝集性を対象としている。手法は、全原子モデルを用いたMDシミュレーションと自由エネルギー解析である。溶質は構造の柔軟な生体分子であり、共溶媒添加によって溶質構造が変わる場合には、共溶媒存在下における溶質構造のサンプリングが問題となり得る。しかし、純水溶媒中でサンプルした溶質構造に対して溶媒和自由エネルギーを計算すれば、低濃度領域における過剰化学ポテンシャルに対する共溶媒添加効果が分かるという定理を得ているため、この定理の成立する濃度領域を同定しつつ共溶媒効果の検討を進めることができた。また、溶媒和自由エネルギー、および、その共溶媒濃度依存性の特徴量となり得る静電項、分散引力項、排除体積項の計算のためにGPU対応の汎用MDソフトウェアであるOpenMMとの連携プログラムを実装し、網羅的な解析を効率化した。共溶媒は、アルカリイオンおよびハロゲン化物である。水や有機分子との相互作用を詳細に解析し、実験値との突き合わせを綿密に行うことで、本研究の目的に適したイオンの力場を早期に見出した。ただし、従前の主たる対象であった尿素やDMSOなどの中性共溶媒に比べると、イオンは水の構造に強く影響するため、共溶媒効果の線形性を担保する濃度領域が狭くなる。つまり、共溶媒含有系におけるイオンの濃度を低く設定する必要があるため、計算精度の観点から懸念が生じる。そこで、イオン水溶液系におけるサンプリング効率の検討を行った。その結果、1本の長時間MDを流すよりは、比較的短時間のMDを複数の初期配置から始めて流して平均を取る方が、収束計算値が効率良く得られることが明らかになった。MDシミュレーションには主としてスパコンを用いているが、上記は計算資源の効率的活用に対応し、イオンの共溶媒効果の解析を進める際に有用であった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象として、共溶媒添加によって構造が大きく変化する溶質系を含める。そのような場合には、しばしば、分子内エネルギーの増大が伴うが、この増大を補償するために、例えば、溶質内の複数の極性基が共溶媒イオンを包摂し溶媒和自由エネルギーが大きく減少する。溶質構造変化の寄与を含めた解析を行うためには、共溶媒に関する複数の参照濃度をとり、それらの濃度条件下で溶質構造をサンプルすることになる。これまでに証明した統計力学定理は、純水溶媒中でサンプルした溶質構造を用いれば、低濃度条件における過剰化学ポテンシャルに対する共溶媒効果が、対応する溶媒和自由エネルギーの溶質構造上の平均になるというものであったが、共溶媒濃度が0の純水で無くとも、参照濃度でサンプルした溶質構造の上での平均に置き換えることで中高濃度条件に接続することができる。また、溶質と共溶媒がともにイオンのとき、共溶媒濃度が0に近づくと、デバイ-ヒュッケル則によって過剰化学ポテンシャルの共溶媒濃度依存性は濃度の1次にならない。しかし、生理食塩水などを想定した 0.15 Mといった有限濃度を参照とすることで線形性が回復するため、敢えて純水を基準とするよりも有限の参照濃度を基準とすることで、現実系の解析により適した形式が得られる。この理論形式を実装し、中高濃度領域までを解析の射程に収める。MDシミュレーションおよび溶媒和自由エネルギー計算、さらに、静電項、分散引力項、排除体積項などの相互作用成分の解析は、22年度に開発したプログラムをより多量の溶質構造を並列に計算できる形に高度化することで、22年度と同様に進めることができる。過剰化学ポテンシャルおよび相互作用成分に対する共溶媒効果の相関解析を中高濃度に拡張し、生体過程に関連した溶質の溶解性や凝集性を規定する分子間相互作用の共溶媒濃度依存性を原子分解能で自由エネルギーに即して検討する。
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Report
(1 results)
Research Products
(21 results)