Project/Area Number |
22KF0271
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Project/Area Number (Other) |
22F30738 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 外国 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
盧 濤 広島大学, 人間社会科学研究科(社)東千田, 教授 (80289652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LI FANGYANG 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2023: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2022: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | 世界文学との関連性 / 文学の政治性 / 周縁性 / 自伝性 / 故郷の地形学 |
Outline of Research at the Start |
大江氏の読書生活の視角から大江文学と世界文学の関係を解読するのが本研究の目的である。具体的には三つの目標に分かれる:1、大江文学の根拠地は四国の森である。その根拠地のイメージの形成と世界文学;2、大江文学の主題群の形成と世界文学;3、大江氏の世界文学の観念の発展史。
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Outline of Annual Research Achievements |
外国人特別研究員が受け入れる教員との協働により、計画通りに研究を進めている。主な仕事は以下の2つである。 まずは、大江文学と英詩の関連性についての認識を深めた。周知の如く、大江氏は英詩の愛読者であり、小説を創作する際に、必ずといって良いほど英詩を取り入れつつ、小説の背景に投影したり、イメージを豊富にしたり、小説の地平線を拡大させたりしてきた。大江氏は幾度も英詩のタイトルを日本語に翻訳し、自分の小説のタイトルまでにも援用したほど、英詩が大江文学を支えた一貫した主軸のような存在だと認識できた。目下アイルランドの偉い詩人であるイエーツから大江氏が受けた影響についての論文を執筆中である。 また、実地調査を通して大江氏の生家の実際の姿が分かるようになってきた。2023年3月12日から14日まで、大江健三郎氏の生家である愛媛県を訪問した。実在する大江氏の故郷と大江文学における故郷のイメージがどれほど一致しているか、後者の場合はどれほど架空の物語であるかを確認した上で、大江文学を解読するためのさらなる手掛かりを見つけようとするのが、実地調査の主な目的である。その結果、両者は大江氏の生家の周辺の地理を特徴づける川、村、森と谷間などの相対位置から見ると、基本的には一致していると判断される。言い換えれば、後者は前者のスケッチであり、大江氏が小説の筋立てを成立させるには若干の調整を加えたものである。研究者が大江文学の故郷をめぐって現実と架空の境界線がどこにあるのを、研究テーマの中心に見据えると、大江文学の本質にもっと近づいた解読ができるだろうと期待される。なお、今回の現地調査がきっかけでNHK愛媛からの追跡取材を受けたが、そのインタビューの中で大江氏が提唱された平和主義の世界的意義を、受け入れる教員が訴えた番組が4月28日に放映され、研究の社会的還元の1つとみなされる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずは、大江文学と英詩の関連性についての認識を深めた。周知の如く、大江氏は英詩の愛読者であり、小説を創作する際に、必ずといって良いほど英詩を取り入れつつ、小説の背景に投影したり、イメージを豊富にしたり、小説の地平線を拡大させたりしてきた。大江氏は幾度も英詩のタイトルを日本語に翻訳し、自分の小説のタイトルまでにも援用したほど、英詩が大江文学を支えた一貫した主軸のような存在だと認識できた。目下アイルランドの偉い詩人であるイエーツから大江氏が受けた影響についての論文を執筆中である。 また、実地調査を通して大江氏の生家の実際の姿が分かるようになってきた。2023年3月12日から14日まで、大江健三郎氏の生家である愛媛県を訪問した。実在する大江氏の故郷と大江文学における故郷のイメージがどれほど一致しているか、後者の場合はどれほど架空の物語であるかを確認した上で、大江文学を解読するためのさらなる手掛かりを見つけようとするのが、実地調査の主な目的である。その結果、両者は大江氏の生家の周辺の地理を特徴づける川、村、森と谷間などの相対位置から見ると、基本的には一致していると判断される。言い換えれば、後者は前者のスケッチであり、大江氏が小説の筋立てを成立させるには若干の調整を加えたものである。研究者が大江文学の故郷をめぐって現実と架空の境界線がどこにあるのを、研究テーマの中心に見据えると、大江文学の本質にもっと近づいた解読ができるだろうと期待される。なお、今回の現地調査がきっかけでNHK愛媛からの追跡取材を受けたが、そのインタビューの中で大江氏が提唱された平和主義の世界的意義を、受け入れる教員が訴えた番組が4月28日に放映され、研究の社会的還元の1つとみなされる。
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Strategy for Future Research Activity |
大江文学と英詩の関連性を英詩の原文、日本語の対訳、大江氏の自分なりの理解という三角関係から更に掘り下げようと思う。周知の如く、大江氏は英詩を小説に取り入れた時に、必ず英詩に対応した日本語訳を参照している。大江氏は日本語訳を媒介物として、英詩に対する自分なりの理解を少しずつ築き上げてきた。こういうプロセスを小説の物語として表現するのは、小説の筋を展開するには欠かせないテクニックである。大江文学は英詩の原文、日本語の対訳、大江氏の自分なりの理解という三角関係から生み出す文学と言っても過言ではない。以上の三角関係の解析に基づいて、大江文学の生成プロセスに接近するのは今後の研究の推進方策の一つだと思う。 研究の推進方策のもう一つは故郷の地形学という理念によって大江文学を解読することである。今年3月の実地調査を通して大江氏の生家の周辺の地形がどのように見えるかが分かった。大江小説のほとんどの場面は故郷の川、村、森と谷間で展開されていて、故郷は繰り返して描かれて徐々に格上げされて地形学の意味で大江文学の空間を支配するような存在になった。文学における故郷のイメージが現実にある故郷とどれほど一致しているか、ずれているかを確認した上で、大江文学を解読するためのさらなる手掛かりを見つけようと思う。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)