植物形態の構造力学的学理を基盤とする次世代の環境調和型構造デザイン
Project/Area Number |
22KJ0125
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Project/Area Number (Other) |
22J21156 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 22020:Structure engineering and earthquake engineering-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
金浜 瞳也 北海道大学, 大学院工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 生物形態模倣 / 力学的合理性 / 最大高さ / 張力構造 / 幾何剛性 |
Outline of Research at the Start |
私たちの身近にある植物は、適者生存の厳しい自然に適応しつつ、自身の体を支える仕組みを進化の過程で獲得してきた。この植物の形態を理論的に紐解くことは、人類が未だ知り得ない工学的知見の解明に繋がると考えられる。本研究は、植物形態が有する構造力学的合理性を洞察し、極めて合理的な自然の営みを科学技術の言葉を用いて取り込むことにより、次世代の省資源社会に求められる、環境に優しい構造デザインや新材料の創製を目指すものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、植物形態の構造力学的合理性を工学的見地から探求し、環境に優しい自然と調和する次世代の構造デザインや、新材料の創成を実現するための「植物形態を支配する自然法則」を解明することを目的とするものである。この目的を達成するために、植物を重力への抵抗メカニズムの観点から3つのグループ(樹木・草花・藻類)に分類し、それぞれの力学的合理性の解明および形状則の導出を行い、最終的にこれらを俯瞰して洞察することを予定している。特に本年度は、樹木・藻類の力学的合理性を理論的に解明することを主たる目的として研究に取り組んだ。 本年度は,これまでに解明した樹木の力学的合理性について,ここで蓄積した定式化のノウハウを用いて、中空断面を有する草本植物へと対象を拡張すべく、まず中空円筒構造を有する木本植物の「竹」に着目した。中空円筒構造を採用することは、自身の体を軽量化することに繋がるため、一見すると合理的であるように見える。しかしながら、ただ断面を中空にすると、自重に抵抗する曲げ剛性が失われる。この両者の関係を考慮した自重座屈に対する最大高さの定式化を行い、中空断面の採用による軽量化の効果が、曲げ剛性の低減を補って余りある効果を発揮することを解明した。 また、この中空植物の定式化ノウハウを土台に、軽く柔らかい草本植物の力学的合理性の解明に着手した。草本植物は木本植物とは異なり、内部水分による膨圧がもたらす軸方向張力によって、はじめて自身の体を支えられる「幾何剛性」が発現する。これについて、草本植物を水平方向へと伸長した片持ち梁としてモデル化し、自重によって生じるたわみに対して、軸方向張力がどのような影響を与えるかを理論に基づき解明した。その結果、一見すると力学的に弱点と考えられる「軽い・細い・柔らかい」といった特性が、張力によるたわみ抑制効果を著しく高めることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、研究実績の概要に示した目的を達成すべく、植物を重力への抵抗メカニズムの観点から3つのグループ(樹木・草花・藻類)に分類し、それぞれの力学的合理性の解明および形状則の導出を行い、最終的にこれらを俯瞰して洞察することを予定している。 特に本年度は、樹木・藻類の力学的合理性を理論的に解明することを当初の計画としており、これに関しては概ね順調に進展している。その詳細は以下のとおりである。 まず、樹木に関しては、その形態が有する巧妙な重量配分の仕組みについて、先端に向かって細くなっていくテーパー形状や、枝葉重量の上部から下部にかけての傾斜分布という点に着目し、その合理性を解明した。さらにその成果を中実円柱である樹木から中空円筒である竹へと拡張し、断面の中空化による重量の軽量化と曲げ剛性低減のトレードオフ関係を解明した。 そしてこれらの成果に基づき、硬く重たい木本植物とは根本的に身体支持の仕組みが異なる草本植物について、まずは水平方向に伸長した片持ち梁としてモデル化した場合の力学的合理性を検討した。細く柔らかい草本植物は、内部水分がもたらす膨圧によって軸方向張力が発現するため、この張力と自重のバランスが最大たわみに与える影響を理論的に解明することを試み、草本植物の前述した特性が、張力によるたわみ抑制効果を高めていることを明らかにした。 このように、本年度は予定していた内容に関して、概ね順調な進展が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に引き続き、前述した目的を達成するために、令和5年度も植物の力学的合理性の解明・形状則の導出に取り組む。中でも、令和5年度は特に草本類(草花・藻類)について注目する。木本および草本植物の力学特性は、断面構造以外においても、非常に様々な点で異なっている。例えば、木本植物は径を年次的に太くしていくとともに、「木化」と呼ばれる組織の硬化が起こる。そのため、部材そのものが十分な「曲げ剛性」を持つこととなり、あとは重量物を巧みに配分することによって、自身の体を支えることを可能としている。これに対して、草本植物は著しい径の肥大がなく、前述した木化現象も発生しない。よって、部材そのものが持つ剛性は極めて小さく、そのままで自身の体を支えることができない。 このような草本植物が体を支えられる理由は、「内部水分による膨圧」である。十分な水分を得られていれば内部に膨圧が生じ、これが結果として軸方向張力をもたらす。草本植物においては、この軸方向張力によって発現する「幾何剛性」が支配的であるが,既往の植物形態研究では「実験的アプローチがメインである」「力学理論を軸にする研究が極めて少ない」という2点の問題があり、「曲げ剛性」と「幾何剛性」が混同されている。 そこで、端部に張力が作用した中空断面をもつ「鉛直方向に伸長した片持ち梁」として草本植物をモデル化し、力学理論の立場からこのメカニズムを解明するとともに、自重座屈に対する最大高さを定式化する。そして、導出した理論について、植物学分野で蓄積されてきたデータを活用するとともに、必要に応じて実験を実施し、その妥当性に関する検証を行う。最終的には、これらの膨圧による支持機構を有する植物に関する成果と、令和4年度までに蓄積した樹木の成果を俯瞰的に洞察することで、令和6年度終了時までに植物形態の支配法則を解明することを試みる。
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Report
(1 results)
Research Products
(8 results)