生体内リプログラミング技術を応用した網膜色素変性症の新規治療法確立
Project/Area Number |
22KJ0150
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Project/Area Number (Other) |
22J23097 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 56060:Ophthalmology-related
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
遠藤 由佳 岩手大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | ダイレクトリプログラミング / 遺伝子治療 / 再生医療 / 網膜色素変性症 / ミュラー細胞 |
Outline of Research at the Start |
近年、転写因子の導入や低分子化合物への曝露により、多能性幹細胞を経由せずに最終分化した細胞を目的の細胞に変換する“ダイレクトリプログラミング”を応用した再生医療研究が活発に進められている。本研究では、ポリシストロニックベクターを用いた視細胞分化を制御する転写因子群の導入及び低分子化合物や液性因子を用いた分化誘導により、網膜特異的グリア細胞であるミュラー細胞から光受容能を持つ成熟視細胞へのin vitroリプログラミング法確立を目指す。またこの手法を応用し、網膜中のミュラー細胞から視細胞を誘導する手法を構築することで、網膜色素変性症により低下した視機能を回復する低侵襲性の新規治療法確立を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
“ダイレクトリプログラミング” は、初期化を経ずに最終分化した細胞を目的の細胞に運命転換する技術であり、生体中でも直接目的の細胞を誘導できることから再生医療への応用が期待されている。 本研究課題では、ポリシストロン性ベクターを用いて視細胞分化を制御する転写因子群を導入し、低分子化合物や液性因子を用いた細胞内シグナルを調節することで、網膜ミュラー細胞から光応答能を持つ成熟視細胞を高効率で誘導する手法の構築を達成し、生体中で視細胞を誘導することで、視細胞変性により低下した視機能を回復する低侵襲性の治療法構築を目指している。 令和4年度は研究計画に基づき、in vitroリプログラミング実験系の構築および視細胞へのリプログラミング効率向上を試みた。視細胞への分化を誘導する4種類の転写因子(CRX、NEUROD1、RAX、OTX2)を導入したミュラー細胞を視細胞方向へ分化誘導する詳細な条件を検討した。視細胞分化に寄与する細胞内シグナルを調節する低分子化合物及び液性因子の組み合わせを検討し、遺伝子発現解析を行ったところ、分化誘導を行ったミュラー細胞において、網膜前駆細胞特異的遺伝子、神経細胞特異的遺伝子、桿体視細胞前駆細胞特異的遺伝子の発現上昇が確認された。その一方で、光応答に必要とされる光伝達関連遺伝子の発現は確認できなかった。このことから、令和4年度時点で作製した誘導視細胞は、視細胞方向への分化は進んでいるものの、光応答能を持たない未成熟な状態である可能性が考えられ、これらの細胞に光受容能を付与するための更なる条件検討が必要であることが示唆された。 今後は、RNA-seqを用いて細胞の分化状態を解析し、成熟視細胞への分化に必要な転写因子や細胞内シグナルを絞り込む予定である。また、これらの知見を活用し、in vivoで網膜中のミュラー細胞を視細胞に分化する手法を確立することを試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、研究計画に基づき、in vitroリプログラミングによる成熟視細胞の誘導を試みた。視細胞特異的プロモーターの下流に蛍光タンパク質をコードする遺伝子を導入し視細胞への分化により蛍光を発する細胞株を樹立した。これにより分化状態を蛍光顕微鏡で観察できる手法を構築した。この細胞に視細胞への分化を誘導する4因子(CRX、NEUROD1、RAX、OTX2)を安定発現するラットミュラー細胞株(rMC-1)を作製し、分化誘導条件を網羅的に検討した。一部の条件下で桿体視細胞前駆細胞特異的遺伝子の発現が確認され、ミュラー細胞から視細胞方向へ分化していることが確認された。しかし、光伝達関連遺伝子の発現を確認することができなかったため、成熟な視細胞への分化に至っていないと考えられた。今年度の目標である成熟視細胞へと分化させることができなかったものの、桿体前駆細胞への分化が確認されたためこの評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究では、視細胞特異的プロモーターの下流に蛍光タンパク質をコードする遺伝子および4因子を安定発現するラットミュラー細胞株の作製に成功し、この細胞を特定の培養条件で培養することで、網膜前駆細胞特異的遺伝子や桿体視細胞特異的遺伝子の発現上昇が確認された。令和5年度は上記の条件で培養した細胞を、光受容能を有する成熟視細胞に分化させることを目指す。具体的には、複数のタイムポイントでRNA-Seq解析を行うことで細胞の分化状態を確認し、成熟視細胞への分化に必要なシグナル分子を絞り込んだうえで、再度分化誘導条件を検討する。また、in vivoでのリプログラミングを行うために、ミュラー細胞に特異的かつ高効率で遺伝子導入を行うためのベクターの投与経路・投与量及びベクターに搭載するプロモーターを検討する。in vitroリプログラミング実験の知見を基に、ラット網膜にベクター及び視細胞分化を促進する低分子化合物を投与することで、眼内での視細胞の作製を試み、治療効果を評価する。具体的には、網膜電図検査(光を感じた際に網膜から発生する電位の変化を非侵襲的に測定する手法)による電気生理学的試験及び、オプトモーター反応(特定の視覚刺激を注視し追従する本能行動)を利用した行動学的試験により、ミュラー細胞から誘導した視細胞により受容された光情報が脳に伝達されるか総合的に評価する。上記試験の終了後、in vivoリプログラミングによりミュラー細胞から誘導した視細胞の局在を調べ、二次ニューロンとの間にシナプスの形成が見られるか評価を行うため、ラットの眼球を摘出し、免疫組織化学染色を行う。
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Report
(1 results)
Research Products
(6 results)