酸素と鉄触媒を用いたトリプトファンの酸化的二量化によるペプチドの化学修飾法の開発
Project/Area Number |
22KJ0222
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Project/Area Number (Other) |
22J10441 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 47010:Pharmaceutical chemistry and drug development sciences-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野田 健太 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | ペプチド / 二量体 / 酸素酸化 / 鉄フタロシアニン / トリプトファン / 化学修飾 / 環状ペプチド / 中分子 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、酵素模倣型鉄触媒によるトリプトファンの酸化的二量化を基盤とし、新奇二量体型中分子ペプチドの創製やタンパク質の化学修飾を通じて、画期的な創薬研究を展開する。近年、タンパク質やペプチドを用いた新薬の創出が注目を集めているが、アミノ酸に由来する多様な官能基の存在により、有機合成による実用的な手法は限定される。このような背景のもと、天然物の生合成に着想を得て独自に開発したインドールの酸化的二量化反応を応用し、トリプトファンを標的としたペプチドの新規二量化法、あるいはタンパク質の化学修飾法の確立を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、オクタカルボキシ鉄フタロシアニンと酸素を用いた、トリプトファン選択的なペプチドの二量化反応の開発に取り組んだ。独自に開発した酸化的二量化反応がシステインを除く全ての生体構成アミノ酸に適用可能であるという予備的知見をもとに、さまざまなトリプトファン含有ペプチドの二量化反応への応用を試みた。まず生理活性ペプチドとして、デルタ睡眠誘導ペプチドや、コレシストキニンテトラペプチド、エンドモルフィン1に対し二量化を試みたところ、触媒量の増加を必要としたものの、LC-MSを用いて二量化反応の進行を確認した。さらに高腫瘍活性を有する天然環状ペプチドであるレニオチャリスタチンEや、上市医薬品であるオクトレオチドに対しても、二量化反応が進行することを明らかにした。 さらに得られる二量体の構造的特徴を解明すべく、X線結晶構造解析にも取り組んだ。東北大学大学院理学研究科巨大分子解析センターの權垠相准教授との共同研究を行い、トリプトファンが二量化したヘキサペプチドの結晶化に成功し、本反応により得られる二量体が三次元的に広がった特異な構造を有することを明らかにした。以上に述べた結果は、Angew. Chem. Int. Ed.誌に投稿し受理された。 今後は本二量化反応を、より分子量が大きいタンパク質の二量化反応へと応用し、ケミカルバイオロジー分野の研究においても使用可能な、領域を横断した化学的手法の開発を目指す予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、オクタカルボキシ鉄フタロシアニンと酸素を用いた、トリプトファン含有オリゴペプチドの二量化反応に精力的に取り組んだ。反応の追跡が困難を極めたが、LC-MSを用いた解析手法の確立に成功し、デルタ睡眠誘導ペプチドや、コレシストキニンテトラペプチド、エンドモルフィン1といったあらゆるトリプトファン含有生理活性ペプチドの二量化が進行することを明らかにした。また、高腫瘍活性を有する天然環状ペプチドであるレニオチャリスタチンEや、医薬品として用いられているオクトレオチドの二量体の検出にも成功し、本反応があらゆるトリプトファン含有ペプチドへ適用可能な優れた汎用性を有することを実証した。 また、当初より予定していた東北大学大学院理学研究科巨大分子解析センターの權垠相准教授との共同研究も円滑に進行し、二量化反応によって得られるヘキサペプチドのX線結晶構造解析にも成功した。その結果、これまで未解明であった、本反応により得られる二量体が三次元的に広がった特異な構造を有することを明らかにし、ペプチドミメティクス創製による新たな創薬研究の足場としての応用が期待される。 さらに、これらの研究結果は、化学分野の国際的な学術雑誌の一つであるAngew. Chem. Int. Ed.誌に受理され、高く評価を受けている。 以上の研究成果から、現在までに順調に研究が進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、今年度までに確立した、オクタカルボキシ鉄フタロシアニンと酸素を用いた、トリプトファン選択的なペプチドの二量化反応を、より分子量が大きいタンパク質の二量化反応へと応用する。モデルのタンパク質として、入手容易な糖質加水分解酵素であるリゾチームを標的とし、反応条件の精査を行う予定である。これまでに確立した反応条件は、低温かつ酸性水溶液を必要としている。したがって、反応温度や反応溶液のpHによるタンパク質の変性が想定されるため、詳細な反応条件の精査を行い、穏和な条件での二量化反応の実現を目指す。穏和な反応条件の実現のため、より高活性かつ高選択的な新規フタロシアニン触媒の創出も視野に入れている。その後、リゾチーム以外のあらゆるトリプトファン含有タンパク質の二量化反応へ適用し、汎用性の高い手法の確立を目指す。 さらに、ペプチドやタンパク質のホモ二量化だけでなく、本反応をトリプトファンを起点とした異なる二分子のカップリングによるヘテロ二量化反応へと応用する。ペプチドとタンパク質とのヘテロカップリング反応を実現し、タンパク質にペプチドを化学修飾する新たな手法を確立する。 以上の研究を通し、ケミカルバイオロジー分野の研究においても使用可能な、領域を横断した化学的手法の開発を目指す予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)