世界最高精度での地球ニュートリノ観測によるマントル対流構造の解明
Project/Area Number |
22KJ0258
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Project/Area Number (Other) |
22J13229 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 15020:Experimental studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川田 七海 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 素粒子 / ニュートリノ / 地球科学 / 地球進化 / 地球の熱収支 / マントル対流 / 地球組成 |
Outline of Research at the Start |
KamLANDによる地球ニュートリノ観測のさらなる高精度化に向けた研究開発を行う。種々の背景事象詳細見積もり/系統誤差削減の結果、現在の観測精度は統計誤差により制限されている。精度向上には統計量の増大が効果的である。そこで、検出器外縁部から飛来するガンマ線事象とニュートリノ信号事象を区別する事象再構成手法を開発する。これにより有効体積を増大することで、地球ニュートリノ観測精度向上を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画を概ね遂行した。以下に、研究計画に記載した各項目について状況を記述する。 (i) 原子炉ニュートリノ不定性の削減: 原子炉ニュートリノ異常を解決する第一原理計算を試みたところ、単寿命核種の崩壊過程におけるエネルギー準位の不定性(パンデモニウム効果)があることにより、第一原理的に正確な原子炉ニュートリノ計算が殆ど不可能であることが判明した。そこで、短距離原子炉ニュートリノ観測実験DayaBayの観測スペクトルをKamLANDにおけるスペクトルに変換することで対応した。また、低原子炉期間に相対的に寄与が大きくなる国外の原子炉について、IAEAの報告書をもとに網羅的に見積もり、系統誤差を削減した。 (ii) 検出器の経年劣化による不定性の削減: 検出器の経時変化を緩和する信号増幅器の導入を進め、現在でも進行中である。また、検出器の応答変化をパラメータ化し観測される物理パラメータに補正をかけることで、地球ニュートリノ観測データセットに検出器経時変化の影響が及ぶことのないようにした。 (iii) 地球ニュートリノフラックス、スペクトルの評価; 地球モデルの検証: 約20年分の観測データを用いて地球ニュートリノフラックス、スペクトルを評価した。KamLAND観測結果との比較から、地震波観測結果に基づいてマントル一層対流構造と比較的多くの放射化熱量を主張するHigh-Qモデルを棄却した。このことから、マントルが複数層の対流構造を持つことについて、初めて直接的な示唆を得た。この成果は学術誌Geophysical Research Letters, Volume 49, Issue 16にて報告した。また、関連する地球科学/素粒子物理学の学会においても成果を報告した。 現在は地球ニュートリノ観測精度の更なる向上やKamLAND実験の将来計画に向けた新たな研究開発に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
既に研究計画の内容を概ね遂行した。 研究計画(i)の中で提案した原子炉ニュートリノの第一原理計算については、予期しなかった理論的不訂正のためスペクトル計算自体が殆ど不可能であることが判明した。そこで、短距離原子炉ニュートリノ観測実験DayaBayでの観測スペクトルをKamLANDでのスペクトルに変換することで対応した。 その他は概ね研究計画通りの成果が得られた。また、研究成果を論文としてまとめ、学術誌Geophysical Research Letters, Volume 49, Issue 16にて報告した。 当初2年間の研究計画とした内容は既に完了し、現在はKamLANDにおける地球ニュートリノ観測精度の更なる向上やKamLAND実験の将来計画に向けた新たな研究開発に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
既に研究計画の内容を概ね完了しており、発展的な研究開発に着手している。 系統誤差の削減により、現在のKamLANDによる地球ニュートリノ観測精度は統計誤差で制限されている。さらなる観測精度向上のためには、統計量の増大が効果的である。そのためには、安定的なデータ取得を続けることに加えて、既に取得したデータに対しても、背景事象と信号の分別手法を新たに開発することも有効である。そこで、地球ニュートリノに対して特に高い観測感度を有する低原子炉期間での反電子ニュートリノ検出効率に着目する。KamLAND液体シンチレータの外縁部には検出器構造体に含まれる放射性不純物からのガンマ線(外部ガンマ線)が高頻度で飛来する。外部ガンマ線による偶発同時計測事象で反ニュートリノ信号(逆ベータ崩壊事象)が隠されてしまうため、KamLAND液体シンチレータ外縁部は実質的には地球ニュートリノ観測の有効堆積からカットされている。そこで、外部ガンマ線(1本のガンマ線が外側方向から飛来)と逆ベータ崩壊事象の先発事象(陽電子-電子の対消滅により2本のガンマ線が反対方向に放出)を統計的に見分けることで、外部ガンマ線による背景事象を効果的に低減し、有効体積を実質的に拡大するための研究開発を行う方針である。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)