Project/Area Number |
22KJ0308
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Project/Area Number (Other) |
22J22141 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 39010:Science in plant genetics and breeding-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高塚 歩 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 細胞質雄性不稔 / 稔性回復遺伝子 / ミトコンドリア / RNAプロセッシング / 葯 / 花粉 / 活性酸素種 / 電子伝達系 / 雄性不稔 / 細胞質雄性不稔性 / イネ / 葯の裂開 / 活性酸素 / 呼吸鎖複合体 |
Outline of Research at the Start |
増加する世界人口を賄うべく、食糧増産が急務である。現在、異なる個体どうしを掛け合わせてできた子供の収量が増加する性質が、多くの作物において利用されている。このとき、自分の花粉が機能しなくなった個体に対して、異なる個体の花粉を与えることが多い。一方、前者の花粉が機能しなくなる個体は自分だけで子供を作ることができず、種子を増やすのには大変手間がかかった。本研究では、主要な穀物の1つであるイネを材料に、花粉を包む袋(葯)のみが機能しなくなる性質の分子メカニズムを特定する。また、このメカニズムを応用することで人工的に葯を裂開させる方法を開発し、雄しべの機能を操作して採種の省力化を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、①TA 型CMS 遺伝子がミトコンドリア機能を阻害する機構および②葯の裂開不全を起こす分子機構を特定し、③分子機構の異常経路を相補して葯を裂開させる技術を開発することを目的としている。今年度は、②と③の内容を進めるとともに、葯の裂開不全を回復させる核遺伝子の解析を行った。 ①、②について昨年度得られた解析結果を代謝物の観点から評価するべく、葯の親水性代謝物の網羅的定量解析を行い、裂開不全系統の葯で蓄積量が低下していた代謝物を特定した。ミトコンドリアの呼吸産物のリサイクルに関する物質や、葯や花粉の構成成分としても知られ、抗酸化作用をもつ物質、花器官発達を制御する植物ホルモンなどが特定された。昨年度の解析からは、ミトコンドリア呼吸鎖複合体で異常が生じて活性酸素種の蓄積制御が異常になっている可能性が示されていたが、本年度のメタボローム解析で得られた酸化還元状態を制御する因子との関連が見出された。一方で、昨年度の解析結果で見逃されていた葯や花粉の構成物質の蓄積や、注視していなかった植物ホルモンを介する器官発達経路にも目を向ける必要があると感じられた。 ③について、昨年度得られた結果から、活性酸素種やその発生を促進する薬剤を散布したが葯の裂開は促進されなかった。葯へのデリバリーの仕方を検討するとともに、活性酸素種ではなく、その下流の代謝物についてアプローチすることも考えられた。 葯裂開を回復させるメカニズムの観点からも解析を進めた。葯裂開回復系統に特異的な回復遺伝子を特定することに成功した。また、回復遺伝子がミトコンドリアCMS遺伝子に作用して発現を抑制している可能性が強く示された。今回特定した回復遺伝子の回復メカニズムは、CMS遺伝子そのものにアタックして、葯裂開不全の原因を根本から取り除く強力なものであることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況は、おおむね当初の計画通りに進んでいると考えている。本研究は①TA 型CMS 遺伝子がミトコンドリア機能を阻害する機構および②葯の裂開不全を起こす分子機構を特定し、③分子機構の異常経路を相補して葯を裂開させる技術を開発することを目的としている。昨年度は①、②の解析結果から、新たな仮説として「ミトコンドリア呼吸鎖複合体の機能低下により活性酸素種の蓄積量が減少することで、葯裂開に必要な組織の細胞死が起こらない」というメカニズムを打ち立てた。今年度はメタボローム解析を行い、ミトコンドリア酸化還元状態を制御する代謝物の蓄積異常が確認され、この仮説を支持する結果が得られた。一方で、昨年度重要ではないと判断した植物ホルモンや葯の構成物質の蓄積量も低下しており、単純なひとつの経路を想定するのでなく、ミトコンドリア機能低下から枝別れした複数の経路が影響を受けている可能性を考える必要がある。 ③葯の裂開を回復させる技術開発について、①、②の解析を受けて標的として有望な活性酸素種にアプローチをしたが、葯の裂開は回復しなかった。スプレー散布では葯内部へのデリバリーが達成されないと考え、インジェクションも実施したが効果はなかった。活性酸素種を相補しても、ミトコンドリア機能低下が引き起こす下流の経路以上により約発達が完全には回復しない可能性がある。そこで、親水性代謝物のメタボローム解析により特定した代謝物が新たな選択肢として挙げられる。より下流の、葯発達に直接関わる代謝経路さえ補完すれば葯の裂開は回復するのではないか。 本研究課題のリカバリー的かつ発展的な内容として、葯裂開を回復させるメカニズムの解明にも進展が見られた。回復遺伝子はミトコンドリアCMS遺伝子に直接作用することが明らかとなった。回復遺伝子の作用機序を参考にして、葯裂開を回復させる技術開発への道も見え始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は①TA 型CMS 遺伝子がミトコンドリア機能を阻害する機構および②葯の裂開不全を起こす分子機構を特定し、③分子機構の異常経路を相補して葯を裂開させる技術を開発することを目的としている。 本年度は、1、2年目の内容をまとめて、CMSメカニズムの考察材料を着実に積み重ねることで、説得力のある考察を展開できるようにしたい。①について、ミトコンドリアCMSタンパク質と相互作用するタンパク質を特定することで、関与する標的経路の出発点を明らかにする。また、最も可能性の高い活性酸素種制御を定量試験で明らかにするとともに、ミトコンドリア呼吸鎖複合体の酵素活性が低下しているかどうかを明らかにする。以上の調査で、ミトコンドリア機能が実際に低下しているのかどうかを明確にする。①の結果を受けて、②電子顕微鏡観察を行うことで、細胞内のミクロな構造を観察したい。ミトコンドリア機能低下を受けて細胞運動はどうなっているのか、視覚的な情報を増やしたい。 ③について、葯の発達に直接関与する代謝産物を投与することで、葯の裂開回復を試みる。手間のかからないスプレー散布をベースにして継続したい。 また、稔性回復のメカニズム解明について研究を行っていくことで、包括的な細胞質雄性不稔の現象理解と育種利用の基盤形成を目指す。稔性回復のメカニズムの知見と、CMS遺伝子を直接制御するカスタムペプチドデリバリー技術を組み合わせて、CMSの根本の原因に対処して稔性を回復させる技術開発への道を開きたい。
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