Project/Area Number |
22KJ0555
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Project/Area Number (Other) |
21J20400 (2021-2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2021-2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 10040:Experimental psychology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 友哉 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2023: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2022: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2021: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | 心理物理学 / 視覚意識 / 傾き知覚 / 時空間特性 / 文脈変調 / 逆相関法 / 錯視 / 時間発展 / 時間的注意 / 内的表象 / 視知覚 / 視覚的意識 / 傾き処理 / 時空間相互作用 |
Outline of Research at the Start |
ヒトの視覚的意識体験は刺激に対して即時的に生じるのではなく、数百ミリ秒程度の時間的広がりをもつ、普段は意識に上らないダイナミックな過程によって支えられている。本研究では、先行する視覚刺激の見えが後続の視覚刺激によって阻害される「逆向マスキング」という現象を用いた心理物理実験を通して、心の中の視覚表象が微小時間とともにどのように発展し、豊かな視覚的意識体験を形成するかという過程を解明することを目的とする。特に、時間的な注意の定位・複数の事物間の対応という二つの重要な視覚メカニズムを綿密に操作することで、これらのメカニズムを構成要素とする計算モデルを構築することを目指す研究である。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度も「傾き対比」という現象の意識的な見えが形成される時間過程について検討するための実証実験を実施した。傾き対比とは、中心にある「標的」の傾きが、周囲を取り囲む「誘導刺激」の傾きとは反発する方向に傾いて知覚される錯視現象であり、われわれの視覚的意識体験が空間文脈によって変容することを示す典型例でもある。昨年度までに行った複数の研究で、傾き対比における見えが意識に上る前の段階で緩慢に時間発展するという仮説を支持する結果が一貫して得られてきた(こうした成果の一部についえ本年度Vision Sciences Society 2023においてポスター発表を行った)。本年度はこの仮説をさらに拡張し、そもそも傾き対比は空間の対比現象であるため、「神経伝達は空間的に遠いほど時間がかかる」といった時空間的な制約と時間発展との関係を検討する実験を計画した。実験では、心理物理学的逆相関法を用いて、どの時刻の誘導刺激が傾き対比の錯視を最大化させるかを、異なる標的―誘導刺激間の空間距離ごとに定量した。結果、誘導刺激がより遠いほどより未来に呈示したときに錯視が最大化されることが分かった。この結果は、傾き対比を生み出す文脈変調の過程が、標的を検出してはじめて周囲に何があるかを問い合わせるような能動的な過程であることを示唆しており、単なる受動的な時空間フィルタリングを前提とするこれまでの神経生理学的知見に基づくモデルを覆しうる。この興味深い研究成果について、日本視覚学会2023年夏季大会において口頭発表を行った。また、東京大学大学院人文社会系研究科より研究科長賞を授与されたことからも、研究の進展が評価できる。 研究期間全体を通じて、逆向マスキングをはじめとする心理物理学的手法を駆使して(ときに自主開発して)錯視現象における意識体験の時間形成過程の解明が進み、当初の目的が大いに達成されたといえる。
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