ニュートリノ振動の高精度測定によるレプトンにおけるCP対称性の破れの探索
Project/Area Number |
22KJ0558
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Project/Area Number (Other) |
21J20441 (2021-2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2021-2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 15020:Experimental studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江口 碧 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2023: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2022: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2021: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | ニュートリノ振動 / T2K / スーパーカミオカンデ / CP対称性 / 電子ニュートリノ |
Outline of Research at the Start |
ニュートリノ振動パラメータの精密測定は標準模型を超える素粒子理論の理解に貢献するほか、CP対称性の破れが観測されればこの宇宙の成り立ちへの理解が深まることも期待されている。日本で進行中の長基線ニュートリノ振動実験であるT2K実験は、これまでに95%以上の信頼度でCP対称性の破れを観測してきた。申請者は、振動解析の高精度のため前置検出器ND280のアップグレードに取り組んでいるほか、スーパーカミオカンデ実験の大気ニュートリノデータとT2K実験の加速器ニュートリノデータの両方を用いた合同解析にも取り組んでいる。
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Outline of Annual Research Achievements |
ニュートリノ振動は、1998年にスーパーカミオカンデ実験が大気ニュートリノの測定を通じてその存在を確認して以来、世界中で測定が進められてきた。ニュートリノ振動パラメータの精密測定は標準模型を超える素粒子理論の理解に貢献するほか、CP対称性の破れが観測されればこの宇宙の成り立ちへの理解が深まることも期待されている。日本で進行中の長基線ニュートリノ振動実験である T2K実験は、これまでに95%以上の信頼度でCP対称性の破れを観測してきた。現在は主に統計誤差によってニュートリノ振動の測定精度が制限されているが、今後はニュートリノ・核子反応の不定性や電子ニュートリノ反応の不定性に由来する系統誤差も削減する必要がある。申請者は、これらの系統誤差を削減するため、J-PARC加速器施設敷地内に設置された前置検出器ND280のアップグレードに取り組んでいる。アップグレード後の新たな前置検出器を用いてニュートリノ・原子核反応断面積を精密に測定することによりニュートリノ振動の精密測定を実現し、CP対称性の破れを探索する。当該年度は、アップグレード後の前置検出器を用いた電子ニュートリノイベント選別アルゴリズムの開発やイベント選別・系統誤差評価のためのソフトウェアの実装に取り組んだ。さらに、J-PARCに滞在し、現地での検出器の組み立て作業等を行なった。 さらに当該年度は並行して、スーパーカミオカンデ実験の大気ニュートリノデータとT2K実験の加速器ニュートリノデータの両方を用いた合同解析にも取り組んだ。申請者は、特に今回の合同解析のために開発された系統誤差モデルの柔軟性テストを主導し、モデルの改善に貢献した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者は、T2K実験の新型前置検出器のためのソフトウェアの開発、およびスーパーカミオカンデ実験とT2K実験の合同解析に主に取り組んでいる。世界的な感染症流行の影響で新型検出器の建設が当初の予定より遅れる中、2022年末に新型のキューブ型プラスチックシンチレータ検出器の組み立てをJ-PARCで開始した。作業は順調に進んでおり、2023年度内にデータ取得を開始できる見込みである。申請者は、データ取得から物理成果を得るまでの時間を短縮するため、物理解析で必要となるイベント選別・系統誤差評価ソフトウェアを実装した。これによりT2K 実験の共同研究者が様々な解析を始めることが可能になり、このソフトウェアは今後アップグレード後の前置検出器を用いた解析のベースラインとして実際に長く使われていく予定である。 また、スーパーカミオカンデ実験とT2K実験の合同解析に関しては、申請者は系統誤差モデルの柔軟性テストを主導した。ニュートリノ振動解析を行うにあたって、データをフィットするための系統誤差モデルは主にニュートリノフラックスの不定性、ニュートリノ・原子核反応モデルの不定性、検出器応答の不定性などに依存している。これらのモデルは最新の実験結果を元に可能な限り精密に構築されたものであるが、現時点で全てを正しくモデル化することは不可能である。そのため、我々の解析が、このモデルが仮定していないようなデータに対しても十分な頑健性を持つことを確認することは重要である。申請者はこれまでに12個の代替モデルを基にした擬似データを用いてさまざまな角度からこのモデルの頑健性評価を行い、いくつかの問題を発見した。当初の想定よりも時間がかかったものの、問題を踏まえてモデルの改善に取り組み、実際のデータ解析に使用し得るモデルを構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
ニュートリノ振動解析の系統誤差を削減するにあたって、電子ニュートリノ反応断面積の不定性は特に大きい。申請者は、アップグレードした前置検出器を用いた電子ニュートリノ反応断面積測定に他の学生と協力して取り組む。2022年度に大まかな反応点再構成、事象選別などを構築したため、今後は事象選別の改善や系統誤差の見積もりなどを行なっていく予定である。並行して検出器のインストール・コミッショニングを J-PARC にて行うため、一時的に現地に滞在して作業を行う。 スーパーカミオカンデ実験とT2K実験の合同解析に関しては、まずは改善したモデルをもとに複数の解析手法間の相互確認を行う。その後実際に取得したデータの解析に取り組み、既存研究よりも高い感度でのニュートリノ振動パラメータの測定、ニュートリノ質量階層の順序決定、CP対象性の破れ探索などの物理成果につなげる予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(11 results)
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[Presentation] SK大気ニュートリノとT2Kビームニュートリノの合同振動解析に向けた反応モデルの柔軟性テスト2023
Author(s)
江口碧,Lukas Berns, Junjie Xia, Jianrun Hu, Christophe Bronner, Roger Wendell, Ciro Riccio, Clarence Wret, Megan Friend, Benjamin Quilain, 横山将志, Super-Kamiokande Collaboration, T2K Collaboration
Organizer
日本物理学会 2023年春季大会
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[Presentation] T2K前置検出器アップグレードに向けた電子再構成手法の開発2022
Author(s)
江口碧,吉本芳美,児玉将馬,中桐洸太,横山将志,市川温子,川上将輝,栗林宗一郎,木河達也,中家剛, 在原拓司, 古藤達朗, 角野秀一, 松原綱之, 坂下健, 中平武, 藤井芳昭, 小林隆, Jakkapu Mahesh, 南野彰宏 他T2K Collaboration
Organizer
日本物理学会2022年秋季大会
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