熱的量子純粋状態を用いた多体局在とグラスの統一的研究
Project/Area Number |
22KJ0661
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Project/Area Number (Other) |
21J21992 (2021-2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2021-2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 13010:Mathematical physics and fundamental theory of condensed matter physics-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩木 惇司 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2023: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2022: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2021: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | 熱平衡 |
Outline of Research at the Start |
通常の物質は、しばらく時間が経てばそれ以上変化しない熱平衡になって、熱力学による記述が可能になる。近年発見された多体局在(MBL)は、乱雑さによって量子力学の波動関数が均一に広がることができず、熱平衡へ緩和しない現象である。他方、乱雑さによって熱平衡への緩和が抑制される現象として、古くからガラスが知られている。本研究では、これらの現象を統一的に記述する理論を構築するために、両方の現象を起こす模型を数値的に調べる。また、MBLの本質を探るために、ランダムウォークを出発点としたシンプルな模型を構築することを試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
先行研究において我々は、有限温度を計算する簡便な手法としてTPQ-MPS法を開発した。本年度の研究実績は、TPQ-MPS法に対する理解を深め、具体的な模型を解析するための足掛かりを作ったと言える。本年度の成果は主に2つに分けることができ、1.TPQ-MPS法を含むランダムサンプリングにより生成される熱平衡状態を分類する理論を構築し、2.特にTPQ-MPS法においてサンプル複雑性を解析的・数値的に詳しく分析した。 1. 熱平衡のミクロな表現として、ギブス状態と熱的量子純粋(TPQ)状態の両極端な量子状態が知られていた。我々は2つの間にある無数の熱平衡状態を熱的量子混合(TMQ)状態として定式化し、それらを分類するための数値計算量NFPF(normalized fluctuation of partition function)を導入した。実際にTPQ-MPS法などのランダムサンプリングに適用し、手法の効率との対応を数値計算により確認した。我々の理論は、量子統計力学に新しい観点をもたらすものだと考えている。この成果は、査読付き雑誌から論文として出版されている。 2. NFPFはランダムサンプリングにおける必要なサンプル数と結びつけられる。我々はTPQ-MPS法におけるNFPFを、相互作用のない単純な模型の場合に解析的に計算した。その結果は、熱力学エントロピーに応じてシステムサイズに対するスケーリングが変わるという非自明なものであった。同様の傾向が、現実的な相互作用のある模型でも見られることを数値計算により確認している。この結果は量子情報分野の計算複雑性と関連していると考え、現在はより広い模型に対して数値実験を行っている。この成果は学会などで発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的1「多体局在(MBL)とグラスを統一的に記述する理論の構築」に関しては、本年度の研究実績において、有限温度に対する新たな特徴量としてNFPFを導入したことにより、大きく進展したと考えている。この特徴量を元にして理論構築の土台を作りたいと考えている。但し、TPQ-MPS法のダイナミクスへの応用に関しては、直接的に実行することは難しく、数値計算上の何らかの工夫を必要としている。 研究目的2「MBLと空間次元の関係を明らかにするミニマル模型の設計」に関しては、大きな進展はなかった。当初想定していた量子ウォークに多体効果を導入することは自明ではなく、他の単純な模型も考察してみることが必要であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的1に関しては、MPSのダイナミクスを実行する伝統的な手法として時間発展ブロック決定(TEBD)法が知られている。しかし、TEBD法はシステムサイズの大きな系では計算コストが時間に対して指数的に大きくなり、短時間で破綻してしまう。これを解決するために、時間依存変分原理(TDVP)法を導入することを検討したい。TDVP法は時間発展の細かい刻みごとに、計算コストが大きくならない範囲での近似を行うため、長時間のダイナミクスを実行することができると考えられる。 研究目的2に関しては、量子ウォークに加えて、近年議論が盛んになっている量子回路模型を検討したい。量子回路模型は、厳密に解ける模型がいくつか知られており、典型的なダイナミクスの特徴を捉えることができる。MBLを量子回路の観点から理解することを試みたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)