二枚貝殻中の還元指標元素分析による沿岸域貧酸素水塊挙動の解明
Project/Area Number |
22KJ0711
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Project/Area Number (Other) |
21J40096 (2021-2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2021-2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 63040:Environmental impact assessment-related
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Research Institution | Marine Ecology Research Institute (2023) The University of Tokyo (2021-2022) |
Principal Investigator |
杉原 奈央子 公益財団法人海洋生物環境研究所, 海生研中央研究所, 研究員
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | スクレロクロノロジー / 貧酸素 / 遡及的環境モニタリング / 二枚貝 / 沿岸 / 安定同位体比 / 微量元素 |
Outline of Research at the Start |
世界中の閉鎖性内湾において「貧酸素」が世界的な問題になっており,生態系・水産資源に 深刻な悪影響を与えている.日本でも東京湾や大阪湾,三河湾などで生物の斃死が報告されて いる.貧酸素水塊をモニタリングするための従来の観測手法である船舶や観測ブイによる観測 ではそれぞれ観測頻度や設置場所,観測項目などの制限があり,貧酸素とそれに伴う環境変化 の全容を把握することが困難であった.二枚貝殻の化学組成は生息環境を反映している.これを利用して,本研究では二枚貝殻の化学組成分析と成長線解析(Mussel shell watch) により,貧酸素状態を過去に遡って復元することを目指す.
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Outline of Annual Research Achievements |
これまで貧酸素をモニタリングする手法としては船舶による観測や観測ブイに よる連続モニタリングが行われてきた.しかし,前者は観測 に労力がかかるため,頻度に制約があり,後者は装置が高価なため,設置可能な場所が限られていた.貧酸素水塊の挙動を把握し,沿岸生態系の変化を明らかにするためには,貧酸素とそれに関わる物資循環の 変化を広範囲かつ連続的に把握する手法を確立する必要がある.二枚貝の貝殻を利用した遡及的な環境モ ニタリング(Mussel Shell Watch)はこの問題を解決することが期待できる.本研究では二枚貝殻の化学組成分析と成長線解析 (Mussel Shell Watch) により,貧酸素状態を過去に遡って復元することを目的とした。 2022年度は貧酸素の影響を強く受ける東京湾奥部において、年間を通じた溶存酸素濃度のモニタリングと貧酸素の影響を受ける6月、9月、10月と貧酸素の影響が少ない2月に採水および二枚貝試料(ホンビノスガイ・サルボウ)の採取を行った。採取後の海水はDICと酸素安定同位体比およびマンガン分析に供した。二枚貝は一部を現場で解剖して貧酸素に関わる遺伝子発現を調べるためにRNA固定し実験室に持ち帰った。一部はそのまま実験室に持ち帰り、軟体部を除去して貝殻を成長方向に沿って切断したのち、LA-ICP-MSによる分析と貝殻炭酸カルシウムの酸素・炭素安定同位体比を分析した。東京湾のホンビノスガイについて,酸素同位体組成のプロファイルから冬期など環境状態が成長に適さない期間は成長を停止している可能性が示唆された.成長線の観察結果からも,貝殻に頻繁に成長停止線が観察されることから,時間軸の決定には酸素同位体比と組み合わせて判断することが重要だと示された.また貝殻中のマンガン濃度が高い場所があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
主要な調査地である東京湾について,環境データや貝殻サンプルの収集を実施した.また,海域の溶存酸素濃度、水温などの環境データについてモニタリングを実施した.さらに,水温,溶存酸素,塩分など他の研究機関から公表されている環境モニタリングデータについて貝殻組成と対応できるようにデータベース化した.また,現地調査や貝類などのサンプリングに必要不可欠な地元漁業者や水産研究所などからの協力体制を構築することができ,今後継続的に研究を進められる体制を整えた.貧酸素が発生する前後の二枚貝試料のサンプリングも実施することができ,一部の試料については分析を進めることができた. 東京湾のホンビノスガイについて,酸素同位体組成のプロファイルから貝殻成長が年間を通して連続的に成長しているわけでは無く,冬期など環境状態が成長に適さない期間は成長を停止している可能性が示唆された.成長線の観察結果からも,貝殻に頻繁に成長停止線が観察されることから,時間軸の決定には酸素同位体比と組み合わせて判断することが重要だと示された. 今後,最終年度に実施する予定であった項目などを進めることで,貧酸素履歴を推定する新たな手法が開発されると期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は特別研究員採用中に別機関への就職が決まったため、昨年度までのような研究時間を確保することが難しいことが予想される。一方で異動先には二枚貝の飼育設備と技術があることが分かった。当初計画では海外での実験を予定していたがコロナ禍で実施できずにいた。今年度はこれらの施設を活用して貧酸素下での飼育実験をセットアップする予定である。所属変更による研究時間の減少は謝金で補助員を雇用するなどして効率的に研究を進めることで対応する予定である。またすでに東京湾から採取したムラサキイガイについて安定同位体比と微量元素分析を進める予定である。試料は東京湾全域から採取されたもので、これまでに明らかになった貧酸素環境下での貝殻中微量元素・安定同位体比組成の変化とともに解析することで、東京湾の貧酸素水塊の動態を過去にさかのぼって明らかにすることができると確信している。これに加えて昨年度採取したホンビノスガイについても分析済みの微量元素・安定同位体比データと連続観測されている環境データの解析を継続する。
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Report
(2 results)
Research Products
(9 results)
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[Presentation] 二枚貝殻を用いた水温・溶存酸素濃度の モニタリング手法の検討:英虞湾での垂下実験を例に2022
Author(s)
西田 梢, 田中健太郎, 佐藤圭, 樋口恵太, 漢那直也, 杉原奈央子, 白井厚太朗, 岩橋徳典, 永井清仁, 弓場茉裕, 石川彰人
Organizer
第17回バイオミネラリゼーションワークショップ
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