Project/Area Number |
22KJ0867
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Project/Area Number (Other) |
22J12454 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 45030:Biodiversity and systematics-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 香鈴 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 陸上進出 / 腹足類 / ヒラシイノミ属 / 初期発生様式 / 海洋島 |
Outline of Research at the Start |
動物の陸上進出は,地球環境全体に大きな影響を及ぼしてきた。陸上進出には,さまざまな生理・生態的な適応進化を伴うが,各適応形質がいつ・いかなる環境で獲得されたか,詳細な陸上進出過程は明らかになっていない。本研究では,腹足類(巻貝)を用い,動物の陸上進出に関する最も高精度な理解を目指す。半陸生から完全陸生に至る過程を詳細に観察できるオカミミガイ科ヒラシイノミ属腹足類を対象に,分子系統解析,分岐年代推定,各種の生息環境や初期発生様式の把握,腎管を中心に排出器系の形態観察を行い,発生・生理を含めた各適応形質が時空間上でどのように獲得されたかを考察することで,動物の陸上進出過程を詳細に明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,動物の完全陸生化に至る詳細な進化過程を明らかにするため,潮間帯上部から内陸の森林内にまで生息するヒラシイノミ属腹足類を対象に,主に以下の調査・解析を実施した. 1, 国内外に生息する本属16種について分子系統解析と発生様式の推定を行った.その結果,属内で少なくとも独立に2回の直達発生の獲得と完全陸生化が生じていることが示された.中でも,大東諸島におけるヒメヒラシイノミ(ヒメヒラ)近似種の陸生化は,直達発生の獲得後に短期間で生じていることが判明した.これは,潮上帯に生息する動物において,発生様式の変化が陸生化の鍵となることを示す世界初の結果である. 2, 南・北大東島においてヒメヒラ近似種の分布を調査した結果,同種は両島の全周に分布し,海岸線から内陸へ最長280 m, 標高51 m地点まで進出していることがわかった.分子系統解析において南・北大東島の個体群はいずれも単系統群を形成し,また各島内では,数百m単位の極めて小さな地理的スケールで環状に分化していることが判明した.よって,同種において,海岸個体群であっても海洋が分散に寄与していないことが示唆された.なお大東諸島の陸化時期は160から200万年前の更新世とされており(e.g. 河名・大出 1993),同ヒメヒラ近似種の陸生化は動物の陸上進出例の中でも最も新しいものの一つといえる. 本研究で得られた成果は,国内外の学会大会において計4回の発表を行った.なお,得られた成果は,動物の陸上進出過程の解明だけでなく,ヒラシイノミ属諸種の保全においても重要な知見となる.
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