Project/Area Number |
22KJ0966
|
Project/Area Number (Other) |
22J14935 (2022)
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 13010:Mathematical physics and fundamental theory of condensed matter physics-related
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉本 昇大 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 2023: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
|
Keywords | 孤立量子系 / 熱平衡化 / 固有状態熱化仮説 / ランダム行列 / 統計力学基礎論 |
Outline of Research at the Start |
巨視的な系はいずれ熱平衡状態へ緩和するという事実は熱力学の根幹をなす。しかし、この事実のミクロな理論に基づく理解は未だ不十分である。 近年観測された孤立量子系の熱平衡化を説明する機構として、多体エネルギー固有状態は熱平衡状態と区別できないという固有状態熱化仮説が、数値的証拠に基づき有力視されている。固有状態熱化仮説の成立には着目する物理量を適切に制限する必要があるが、局所的な測定量。 本研究では、相互作用や着目量の局所性などの、多体系に不可避的に伴う性質を考慮に入れ、熱力学の発現にとって本質的な着目量への制限を明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、典型的な非可積分系において、孤立量子多体系の熱平衡化機構として有力視されている固有状態熱化仮説(ETH)を満たす物理量のクラスについて調べた。 一般に、対称性を持つ系においては対称性に付随する保存量は時間変化せず、従ってETHを破る。この場合、ETHは各対称性セクターの内部で個別に成り立つことが確かめられてきた。一方で、いくつかの物理量については対称性セクターに分けずともETHが成り立つことが、いくつかの数値計算で報告されていた。私たちは、並進対称性なスピン系のランダム行列領域において、局所演算子であればランダム行列理論から予測される最適な収束速度でETHを満たすことを証明した。一般にランダム行列領域おけるハミルトニアンは、極めて非局所的かつO(N)体の項を含む非現実的なものであるが、私たちは局所性とfew-body性を取り入れた一般的なハミルトニアンに対して数値計算を行い、この場合にもランダム行列領域における結果が成り立つことを実証した。 次に、典型的な非可積分系において何体までの物理量がETHを満たすかを調べた。相互作用の局所性とfew-body性を考慮した一般的なハミルトニアンに対して数値計算を行い、スピン数Nの並進対称な1次元スピン系において、0.2N体以下の全ての演算子がETHを満たすことを示す結果を得た。これは、昨年度に得たランダム行列領域における解析計算結果と整合しており、few-body演算子の比較的高次のゆらぎまで含めてETHが成り立つことを意味する。この数値計算では、m体演算子空間の基底について全てのエネルギー固有状態に関する期待値を取る必要があるが、この部分の計算量は対角化を大きく上回るのに加え既存のライブラリが存在しなかった。そこで私たちはGPUを効率的に用いる数値計算コードを開発し、これによって本研究が可能となった。
|