Project/Area Number |
22KJ1049
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Project/Area Number (Other) |
22J21230 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 47040:Pharmacology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉本 愛梨 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | ノンレム睡眠 / 徐波 / 概日リズム |
Outline of Research at the Start |
睡眠を妨げずに睡眠中の特定の脳波を増強する方法として徐波フィードバックシステムを構築した。構築した徐波フィードバックシステムでは、マウス前頭前野の徐波の強度を基準にした照度変化を試みた。すなわち、徐波の強度が高くなったタイミングに環境を明るくすることで、マウスを円滑に睡眠状態へ誘導した。先行研究では、環境因子である光が主導的に作用することで概日リズムの位相変化を引き起こすことが示されている。今後は、脳波起因の照度変化が睡眠を誘導し、概日リズムをも調節する可能性を探る。
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Outline of Annual Research Achievements |
脳波は意識状態と相関し、高振幅でゆっくりとした周波数成分(0.3-4Hz)の波は徐波と呼ばれ眠気の強い時間帯に観察される。また、睡眠は環境の明暗と関連し、マウスでは明るい環境で眠ることが多い。このように、脳波、照度、睡眠との関連は種をこえて一般的な見解が得られている。しかしながら、ヒト以外の動物にとって環境の明るさを自在にコントロールすることは困難である。ヒトにおいても、睡眠要求を感じてから電気のスイッチを消すという「行動」が必要であり、脳波の変化に瞬時に対応した環境で生活が出来ているとは限らない。このような「行動」なしに脳波で環境を制御できたとしたら、認知機能や生理機能にどのような変化が見られるのか、検討した知見は存在しない。 本研究は、マウス前頭前野の徐波の強度を基準に照度を変化させる「徐波フィードバックシステム」を構築した。すなわち、徐波の強度が高くなったタイミングに環境を明るくし、マウスを円滑に睡眠状態へ誘導した。先行研究では、光が主導的に作用することで概日リズムの位相が変化することが示されており、アクトグラムの作成及び周波数解析によって概日リズムの評価を試みた。対照群としては、12時間周期で明暗を変化させる(light/dark:LD)条件、恒常(恒暗:DDまたは恒明:LL)条件で飼育したマウスを用意した。 その結果、フィードバック群及びDD/LL群では位相が前進する生理的な概日リズムが見られた。一方LD群では、明暗と連動した周期が生成された。さらに、ノンレム睡眠時間及び記憶の固定化に重要な働きをもつリップル波の定量をおこなった。その結果フィードバック群では有意にリップル波発生イベント回数が増加していた。これらの結果から、徐波フィードバックによって内的な周期を反映した概日リズムが生成され、誘導される脳波変化が記憶の固定化という生理学的意義をもたらす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初「ノンレム睡眠におけるガンマ波増強」について、その機能的意義の解明を目的としていた。新たに遺伝子改変マウスのラインを作製し、ドパミン作動性神経特異的な光遺伝学的操作を行える系を確立した点でプロジェクトに貢献した。光遺伝学的操作によってガンマ波の誘導を試み、その結果として光照射が動物の睡眠を妨げてしまうという問題を得た。 そこで、介入方法を新たに考え、徐波フィードバックシステムを構築した。本システムは、オンラインで睡眠脳波を計測、定量、数秒単位でフィードバックすることを可能とし、オンライン計測技術の幅を広げた。まず徐波のオンライン検出を可能とするため、また、照度変化自体による脳波への影響を確認するための予備実験を行った。マウスの前頭前皮質および海馬にニクロム電極を、筋電図と心電図の取得のためにワイヤー電極を留置した。術後十分に回復させた後、明暗3時間ずつの記録をおこないマウスの状態を、覚醒、レム睡眠、ノンレム睡眠の3つに分けた。具体的には、筋電図強度が高い時間帯を覚醒、前頭前皮質におけるガンマ波強度に対するデルタ波の強度の比が高い時間帯をノンレム睡眠とした。判定の閾値は、全記録時間のlog(delta/gamma)の平均値±0.51SDとし、シュミットトリガ方式で判定した。徐波が観察された時間は、暗条件において減少傾向であった。そこで明条件・暗条件で各ステートに要する時間が変化することを前提とし、眠気の指標と環境照度を連動させるシステムを構築した。概日リズムにも着目するため10日間という長期間、安定的に脳波を取る必要があり、メモリ圧迫の問題からタイムラグが生じるという懸念点があった。データの保存先を工夫し、安定的にフィードバックが行えるよう改善した。システムと並行して記憶成績課題も構築した。これはノンレム睡眠中のガンマ波増強の生理学的意義を検討する上で重要な準備と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
脳波全帯域にわたるダイナミックな変化や、筋電図などの他の生理的パラメータの影響を除くため、徐波の強度の算出の方法として、異なる帯域の強度を用いて正規化する、スライディングウィンドウを導入するといったシステム改善を行った。これにより、徐波フィードバックシステムを用いて、脳波起因の照度変化が睡眠を誘導し、概日リズムをも調節する可能性について検討することが可能となった。 フィードバック群においての検討だけでなく、対照群として、12時間周期で明暗を変化させる(light/dark:LD)条件、恒常(恒暗:DDまたは恒明:LL)条件で飼育したマウスでの記録を開始しており、これら三群での比較を軸に徐波フィードバックによりノンレム睡眠時間の延長や、記憶成績への影響を詳細に検討していく。また、フィードバック群にてノンレム睡眠中のガンマ波増強、及びリップル波発生イベントの増加が確認できている。そこで、これまでに構築してきた記憶成績課題を各群の長期記録前後で実施し、脳波/睡眠の変化にとどまらず、記憶成績にまで影響を及ぼすかどうかを検討する。これにより、徐波フィードバックによって内的な周期を反映した概日リズムが生成され、誘導される脳波変化(ガンマ波増強/リップル波発生イベントの増加)が記憶の固定化という生理学的意義をもたらす可能性に迫りたい。
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