普遍文法における文の定義とその応用に関する理論言語学的研究
Project/Area Number |
22KJ1082
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Project/Area Number (Other) |
22J21631 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 02060:Linguistics-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 一創 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2024: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2023: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2022: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
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Keywords | 文 / 生成文法 / 神経言語学 / システム論 / 言語変化 / 言語使用 / 言語脳科学 |
Outline of Research at the Start |
「文」という概念がなぜ人間に備わっているのか、「文」は我々の言語能力においてどのように定義されているのか、これら二つの問題に科学的解答を与えるのが本研究の課題である。「文」は「句」とは異なる概念であり、人間が思考したり意思を伝達したりするには「句」さえ存在していれば十分である。しかし我々が文と文でないものを見分ける能力を持っているのは事実であり、そうした余分な能力がなぜ存在するのかが生物言語学の重要な問題となるのである。本研究では、文概念の存在を主語・助動詞倒置をはじめとする様々な文法現象と結びつけて明らかにし、さらに哲学・生物学等の知見も活かしつつ文概念の発生を生物言語学的に説明していく。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず文が満たすべき条件について理論的に考えたことを脳画像イメージングによる実験的手法によって確かめた。具体的には、文が満たすべき条件が線形列ではなく階層構造に課せられるという仮説のもと、東京大学大学院総合文化研究科との神経言語学の共同研究を行い、2023年7月に国際誌Frontiers in Psychologyに共著論文を発表した。また、純理論的研究もあわせて進め、修士論文で行った文概念に関する理論的・包括的な研究を発展させ、東京大学大学院人文社会系研究科英語英米文学研究室の大学院紀要であるLinguistic Researchに投稿し、受理された。 さらに、文の形成という問題を発展させ、システム論的観点を取り入れた研究もあわせて行った。その成果は、同じく大学院紀要Linguistic Researchに投稿し、受理されている。これら受理済みの2論文は2024年度に出版される予定である。また、システム論の理論言語学領域への応用を示唆する論文を、2024年度に大修館書店から出版予定の論文集に投稿し、入稿・出版決定済みである。 言語のシステム論的研究については、引き続きMaturana、Varela、Luhmann、河本らの文献を渉猟しながら、現在の極小主義のシステム観を転換させ、言語変化や言語使用等の問題にもアプローチできるような新たな統辞システムの構成を作り出すため、理論構築に励んでいる。合わせて、YangやSnyder、梶田などの、言語の時間軸上の動きに着目した研究を渉猟し、言語の自己再生成という働きがどのように行われるのかを自分の構築しつつある理論と照らし合わせながら考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初、文概念の極小主義的研究として始まったが、研究を進めていく内に、極小主義の道具立てでは十分に説明できないことがいくつもあることが判明したため、極小主義のシステム構成そのものにメスを入れるべく、システム論的な研究手法を取り入れることになった。これは当初予期していなかったことだが、結果として研究に大きな見通しが開けたため、研究の進捗としては順調であると評価した。また、査読つき論文を3篇、論文集採録の論文を1篇(いずれも受理済み・未出版のものを含む)発表できたという成果も、当初の予定からして十分なものであり、研究が順調に進んでいると考えた一因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、システム論的な基礎言語理論を形式的かつ体系的に定義し、それに基づいて文概念を中心とする様々な統辞現象をどこまで説明できるかが焦点になる。システム論的考え方は非常に応用範囲が広いため、これまで共同研究を続けてきた脳科学はもちろん、実験言語学や通時言語学・音韻論・形態論などの隣接分野との共同研究も進めていくつもりである。
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Report
(2 results)
Research Products
(6 results)