局所エントロピーの実時間解析に基づいた原子・分子レベルでの熱移動過程の理論的解明
Project/Area Number |
22KJ1094
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Project/Area Number (Other) |
22J21975 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 32010:Fundamental physical chemistry-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
根岸 直輝 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 経路積分法 / ピークブロードニング / 多参照多配置摂動論 / 参照相互作用点モデル / マルチスケールモデル / 溶液内電子スペクトル / 経路積分 / コヒーレント緩和 / 電子励起状態 / フランク=コンドンの原理 / インパルス励起 / 熱揺らぎ |
Outline of Research at the Start |
現代注目が集まっている化学的研究の一つに, 光や電子回路によるナノレベルでの局所的熱制御法を応用した分子合成がある. ナノレベルの局所的加熱では, 熱勾配の存在が原因で化学平衡論が想定している枠組みを逸脱するため, 現代に至るまで知ることのなかった反応機構が潜在している可能性がある. より深い考察のためには分子内のエネルギーの流れ方と化学反応の因果・相関を議論しなければならない. 本研究では「熱の勾配がある周辺環境+反応分子」というモデルの時間発展を考察し, エントロピーの増大を中心とした議論から, 如何にして注目分子に熱勾配の影響が加わるのかについてその枠組みを与えることを目標とする.
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は2022年度に施行した電子スペクトル線を計算するために開発した理論についてまとめ、アメリカ化学会の国際雑誌Journal of Chemical Physics Bに出版した。またその過程の中で用いた多参照多配置波動関数摂動論のXMCQDPT2法をRISM-SCF-cSED法と融合させた計算手法を変分法的に導く理論的枠組みを与えた。ここで開発した理論では、溶質の周辺に配置されている溶媒が熱平衡状態に落ち着いている時を想定した溶質分子の自由エネルギー曲面を算出するためのLagrangianを定義した。定義されたLagrangianから変分方程式を導出した結果、出版論文で示したピークブロードニングを記述するための溶媒の熱揺らぎ効果を表す式が導出されることを示し、計算理論としての整合性を保証した。この成果は米国物理学会の国際雑誌Journal of Chemical Physicsに出版された。 上述の理論体系は、電子励起に伴う電子移動によって引きおこる溶媒構造の不安定化エネルギーがピークブロードニングに直結するという枠組みになっていた。一方で溶質側の構造変化に伴う溶媒構造の不安定化エネルギーを算出する計算理論も同様にRISM-SCF-cSED法に基づいて導出した。この方法では、溶媒配置が完全に緩和している状況を想定したエネルギー曲線を算出した後に、溶媒の密度分布関数からのずれと溶質分子の核配置の結合項を溶質の核座標に関して2次の項まで取り込む。これによって、これまで算出されてきた溶質の分子振動を表すヘシアン行列に溶媒の揺らぎの効果を加えることを可能にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度に開発した理論は、溶媒の熱揺らぎによって分子振動の自由エネルギーポテンシャルの平衡点及び曲率が乱雑に変化する様子を記述する。この描像は溶媒側の運動をすべて調和振動子と見立て、溶質溶媒間相互作用を振動座標の線形積で書くブラウン振動子モデルから得られる運動に合致するが、相互作用を電子状態レベルで精確に算出できる点において新規な枠組みとなっている。 この理論によって、溶媒に囲まれた溶質分子の振動ポテンシャルに溶媒の熱揺らぎ効果を組みこむことができる。即ち高温の固体に接触する前の溶質分子の熱運動は本理論を介したモデル化によって記述ができたことになり、最終目標である高温固体から反応分子への熱輸送の議論を進めていく上での土台が完成したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度はこのフレームワークを当てはめて、赤外吸収スペクトルやラマンスペクトルのピークブロードニングの計算を行う。計算が実験結果に合致することを確認することで、溶媒側の熱揺らぎの寄与が溶質分子の振動ポテンシャルの平衡点及び曲率の揺らぎとして組み込まれることの正当性を示す。その後は上述でモデル化された溶質分子を、2次元デバイモデルでモデル化された格子振動系と結合した系に関して、格子系が700 Kに熱せられた系の階層型運動方程式を運用する。これによって記述される溶質分子の熱化メカニズムを各振動モード毎のエントロピー増大の式から解析することで、分子振動状態の熱移動過程を考察する。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)