Project/Area Number |
22KJ1140
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Project/Area Number (Other) |
22J22878 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 35020:Polymer materials-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤澤 雄太 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 自己修復材料 / 持続可能性 / プラスチック / ポリマーブレンド |
Outline of Research at the Start |
プラスチックに起因する環境汚染は看過できない問題である。本研究はこの問題の解決に向けた2つの新戦略を提案する。まず、日常生活で広く使われている汎用樹脂に自己修復性樹脂を「混ぜるだけ」で自己修復性の付与を試みる。表面の擦り傷や疲労による内部の小さな損傷を自発的に修復する材料の開発はプラスチック製品の長寿命化につながる。次に、力学的な堅牢さと原料回収の容易さを兼ね備えた超分子ポリマー材料の開発を試みる。リサイクルで原料を100%回収できる材料は持続可能な社会の実現に貢献する。
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Outline of Annual Research Achievements |
傷や内部損傷を自発的に修復する自己修復性樹脂は持続可能な社会を目指す上で欠かせない材料になることが期待されている。既存の汎用樹脂に自己修復性樹脂をブレンドするだけで自己修復能を付与することができれば、自己修復性樹脂の実用化が一挙に加速する。この戦略の妥当性を確かめるため、2018年に堅くても室温で治る樹脂材料として報告したポリエーテルチオ尿素を、そのエーテルリンカー部位をアルキルリンカーに置き換えた自己修復能のないポリアルキルチオ尿素にブレンドすることで自己修復性を付与することを試みてきた。その結果として、少量のポリエーテルチオ尿素をブレンドするだけで、ポリアルキルチオ尿素の力学強度と疎水性を損なわずに室温での自己修復性を付与することに成功した。CP/MAS 13C NMR測定によりポリエーテルチオ尿素とポリアルキルチオ尿素がナノスケールで相分離していることがわかり、両者がそれぞれの性質(自己修復性と疎水性)を存分に発揮できたのはそのナノ相分離構造に起因すると考えている。この成果は2022年11月にAngewandte Chemie International Editionに受理された。次なるステップとして、実際に既存の汎用樹脂に同様の戦略を用い、自己修復性樹脂をブレンドすることで自己修復能を付与することを目標に掲げている。現在はその戦略に使うポリマーの合成を行い、自己修復性などの物性調査を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにも非修復性樹脂に自己修復性樹脂をブレンドすることで自己修復能の付与を試みる研究は多くの研究者によって行われてきた。しかしながら、これまでに開発されてきた室温で修復できる自己修復性樹脂のほとんどはゴムのように柔らかいものに限られていたので、汎用樹脂などにブレンドするとその力学強度を大きく損なってしまい、汎用樹脂を置き換えられるような自己修復性樹脂材料を実現できていなかった。そのような状況において、非修復性樹脂の物性を損なうことなく、自己修復性樹脂をブレンドするだけで室温での自己修復性の付与を実現した今回の例は非常に大きな意義を持つ。それだけではなく、ナノ相分離構造が自己修復性樹脂と非修復性樹脂の両方の長所を発揮するのに重要であるというメカニズムの解明にまで踏み込んだこの研究は、この戦略の汎用樹脂への高い応用可能性を示し、我々の目標への道筋をより鮮明なものとした。この研究成果を踏まえ、現在は既存の汎用樹脂にブレンドするだけで自己修復性を付与することを可能とする自己修復性樹脂のデザインおよび合成を進めている。初案となるモノマーおよびポリマーの合成方法は確立できたため、現在は得られたポリマーの物性評価、さらにデザインの拡張に取り組んでいる。定性的な試験ではあるが、初案のポリマーが自己修復性を示すことは確認できたため、戦略の妥当性は確保できたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
非修復性樹脂に自己修復性樹脂をブレンドすることで自己修復能の付与を図るという戦略を既存の汎用樹脂に応用した場合に考えられる最初の問題が、汎用樹脂と自己修復性樹脂の相溶性である。一般的に複数種類のポリマーをブレンドしようとしても互いに退け合うために巨視的なスケールでそれらが相分離してしまい、それは力学強度の大幅な低下につながる。この問題は通常、相溶化剤を加えることでポリマー間の界面エネルギーを小さくすることで解決されるが、この研究においても相溶化剤と同等の働きをするポリマーもしくはオリゴマーを用いることで汎用樹脂と自己修復性樹脂の相溶性の向上を図る。一方で、私たちがこれまで使ってきたポリエーテルチオ尿素の重合様式と汎用樹脂でよく用いられている重合様式は大きく異なる。そのため、単純にポリエーテルチオ尿素のモノマーユニットと汎用樹脂のモノマーユニットを結合しただけのコポリマーを重合することは非常に難しい。そこで、主鎖に汎用樹脂由来の構造を、側鎖にポリエーテルチオ尿素由来の構造をもつブラシ状のポリマーを設計した。こうすることでポリマーの重合には汎用樹脂の重合様式を用いればよく、さらにそれぞれの樹脂由来の構造をもつため、汎用樹脂と自己修復性樹脂の界面エネルギーを低下させる働きも期待できる。2023年度は、相溶化剤として働くポリマー合成、そのポリマーを汎用樹脂と自己修復性樹脂のブレンドに用いたときの物性評価と相分離構造の確認、それを踏まえたデザインの見直しというサイクルを回しつつ、複数種類の汎用樹脂にブレンドという容易な方法で自己修復能を付与することを目指す。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)