Project/Area Number |
22KJ1248
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Project/Area Number (Other) |
22J22156 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 39050:Insect science-related
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
武田 直樹 東京農工大学, 大学院生物システム応用科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 生態的種分化 / 植物ー植食者相互作用 / カンザワハダニ / カテキン / RNAi / トランスクリプトーム解析 / プロテオーム解析 / カテコールジオキシゲナーゼ / チャ |
Outline of Research at the Start |
広食性のカンザワハダニ(カンザワ)には,チャへの適応度が異なる個体群が存在する.チャ適応および非適応の個体群は,実験室内では交雑できる一方,野外での遺伝的交流は見られず,生態的種分化の初期段階に位置する恰好のモデルである.チャ適応のカンザワに特徴的な遺伝子は単一遺伝子座に位置し,チャの代表的な防御物質であるカテキンへの薬物代謝に関与している可能性がある.しかし,その分子機構は未解明である.本研究では,カンザワのチャへの適応に関与する遺伝子の選定およびそれらの機能解析により,餌資源としての植物を介した生態的種分化の分子機構を明らかにすることを目的とし,ダニ類の多様性を説明する学理の構築を目指す.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,カンザワハダニ(以下,カンザワ)のチャ寄生の可否に関与する遺伝子の同定およびそれら遺伝子の機能解析により,餌資源としての植物を介した生態的種分化の分子機構を明らかにすることである.昨年度までの結果より,1種のカテコールジオキシゲナーゼ(CTD)は,チャへ寄生できるカンザワの生存に寄与することが明らかになった.当該年度においては,本遺伝子の機能を調査した. まず,チャへ寄生できるカンザワと寄生できないナミハダニ(ナミ)において,CTDのアミノ酸配列を比較した結果,2か所でアミノ酸変異が生じていることが判明した.そこでカンザワとナミにおける標的遺伝子の人工タンパク質を合成した.これらとチャの主要な二次代謝産物である4種のカテキンとの反応性を調査した.これより,カンザワCTDの酵素活性はナミCTDのそれと比較して高いことが明らかになった.また,4種のカテキンがチャへ寄生できるカンザワ,寄生できないカンザワおよびナミの行動および生存に及ぼす影響を調査した.その結果,チャへ寄生できるカンザワのみがカテキンを脚もしくは口器付近の感覚器で忌避しないため,チャ上での摂食行動が妨げられないことが示唆された.さらに,体内に取り込んだカテキンに対してチャへ寄生できるカンザワは,ナミと比較して耐性をもつことも明らかになった. 以上より,チャに適応したカンザワはカテキンを忌避せずチャを摂食でき,体内に取り込んだカテキンをCTDで解毒・代謝している可能性が示された.本研究で供試するハダニ類はいずれも広食性の世界的な農業害虫であり,世代時間が短いため薬剤抵抗性の発達が著しく,常に新規防除標的の探索が求められている.植物の防御物質を回避・解毒する分子機構の解明により,これら害虫の持続可能な総合的害虫管理体系の構築に資する新たな防除標的の発見が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界的に最も重要な嗜好料作物の1つであるチャと,その害虫であるカンザワハダニを材料とし,両者の相互作用の分子機構の解析を進めた.特に,チャ上でのカンザワハダニの生存に寄与する遺伝子の機能解析およびチャの主要な二次代謝産物であるカテキンがハダニに及ぼす影響を複数の実験系で調査した.この成果ついて,複数の国内学会大会および国際会議で報告した.これらのうち,昨年9月にスペインのログローニョで開催された第13回spider mite genome meetingは,ハダニ学分野のトップレベルの研究者が参加する小規模な国際会議である.ここでは,自身のテーマに近い植物-植食者の相互作用研究,害虫に対する植物の防御メカニズムおよび植食性ダニのゲノミクスなど関して,積極的に議論した.さらに,これら会議に参加した研究者らと定期的なミーティングの機会を得て,研究の完成度を高めてきた.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から,チャに寄生できるカンザワと寄生できないカンザワおよびナミの間でカテキンに対する耐性および忌避性が異なることが明らかになった. そこで,カテキンに対する耐性が異なる要因として,解毒代謝に関する遺伝子のさらなる機能解析を進める.現在,標的遺伝子としてカテコールジオキシゲナーゼ(CTD)の機能解析を進めている.他方,主要な薬物代謝酵素であるシトクロムP450,グルタチオン-S-トランスフェラーゼおよびカルボキシル/コリンエステラーゼについてもカテキンの代謝に関与している可能性が高い.そこでこれまでのRNAおよびタンパク質の発現プロファイルデータを統合し,標的遺伝子の選定およびその機能解析を進める予定である.また,カテキンに対する忌避性の差が生じる要因として,カテキンに対する受容性の差が考えられる.そこで,カンザワおよびナミにおける化学感覚器において発現するタンパク質を同定し,機能解析を実施する予定である. 以上より,本研究の目的である植食者の餌資源としての植物を介した生態的種分化の分子機構の解明する.
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