電子フォノン結合系に対する量子コヒーレンスの生成・消失に関するダイナミクス解明
Project/Area Number |
22KJ1342
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Project/Area Number (Other) |
22J23231 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 30020:Optical engineering and photon science-related
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高木 一旗 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2024: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | コヒーレントフォノン / 量子コヒーレンス / 超短光パルス |
Outline of Research at the Start |
本研究は、固体物質中の電子フォノン結合系における量子コヒーレンスの生成から消失までの超高速ダイナミクスの解明を目的とした研究である。アト秒精度で相対位相を制御したフェムト秒パルス対を用いたダブルポンププローブ法による過渡反射・透過率測定を行うことで、光励起過程で生じる量子経路干渉によって生成される量子コヒーレンスを計測する。光パルス対の相対偏光や波長、温度条件による依存性から、コヒーレンスへの影響を評価・議論する。実験研究に加えて、理論研究も行う。量子力学的な理論モデルを構築し、実験結果に対する解析を行うことで、実験と理論の双方から評価・議論を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は大きく分けて、次の二つの内容に取り組んだ。 (1) コヒーレント光学フォノン生成における初期フォノン状態の影響に関する理論的評価 任意の初期状態におけるコヒーレントフォノン生成過程について理論的に調べた。本研究では、系の初期状態として熱平衡分布により決定されるフォノン分布を考慮した混合状態を定義し、有限温度下でのコヒーレントフォノン生成過程を調べた。結果として、電子フォノン結合定数が弱結合な系では、初期状態による影響は殆どないことが明らかとなった。また、コヒーレントフォノンの分散(揺らぎ)も調べた。分散の時間変化はポンプパルス照射後に、フォノン振動数の2倍の振動数で周期的に振動していた(学会および学術論文として発表済み)。本研究で得られた理論モデルにより、2次摂動では議論できなかった多くのパラメータを議論することが可能となった。また我々が実験的に調べている量子経路干渉による量子コヒーレンスの定量的評価を可能にすることが期待される。
(2) 炭素材料におけるコヒーレントフォノン計測 結晶欠陥や構造の歪みによるフォノンのコヒーレンスへの影響に注目し、炭素材料におけるコヒーレントフォノン計測を行った。その中で、結晶欠陥および歪んだ構造による低結晶性材料であるガラス状炭素(GC)中の超高速フォノンダイナミクスの観測に成功した。反射したプローブ光の波長を選択的に測定することで、表面研磨されたGCのコヒーレントフォノン振動の検出を可能にした。観測されたDモードのスペクトル形状は非対称であり、ピーク周波数はラマン分光により観測された周波数よりもずれていた。さらに、二重共鳴ラマン散乱による波長シフトの理論値よりも大きいことが明らかとなった。本研究で得られた知見は、ラマン分光には含まれない、超短高速分光による影響が観測されたことを示唆する結果であった(学術論文発表済み)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度に取り組んだ理論モデルおよび非摂動な計算手法により、これまでの2次摂動による計算では議論できなかった多くのパラメータ(初期分布・パルス形状・光強度など)によるコヒーレンスの影響を議論することが可能となった。本成果は、2023年度から実験的に調べていく量子経路干渉の評価・議論をより詳細に可能にするものである。加えて、当初予定していなかったガラス状炭素のフォノンダイナミクスの観測に成功した。観測されたDモードでのフォノン生成過程は、K点近傍での二重共鳴ラマン過程に起因すると考えられており,K点近傍での電子系のダイナミクスを議論することにつながると期待される。また幾つかの研究成果を学会発表や学術論文掲載に至ることができた。これらは、本研究課題に対して有用な成果であり、研究はおおむね順調に進捗していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度では、固体物質中の電子コヒーレンスという超高速な時間スケールの現象を測定・評価することに注目する。具体的には、相対位相同期したポンプパルス対を用いた量子経路干渉法により、GaAs中の量子デコヒーレンス過程の詳細について研究を行う。これまでに行ってきたコヒーレントフォノンおよび量子経路干渉に関する理論研究から、量子干渉の形状は、2連ポンプパルスの相対的な偏光角と電子デコヒーレンスの時間に強く依存することが明らかとなった。さらには、ポンプパルスの相対偏光角が特定の条件下で得られる量子干渉形状は、デコヒーレンス時間の変化による形状変化を非常に可視化しやすいことが予測された。そこで2023年度は、2連ポンプパルスの相対偏光角の観点から、量子経路干渉の形状とデコヒーレンスの関係性について詳細を調べる。理論計算との比較を行いながら詳細な評価・議論を行い、最終的には電子コヒーレンス保持時間の定量的評価法を探る。 理論研究としては、現状準備を進めている計算環境を整えて、評価を進める。特に、これまで検討していなかった励起光強度、プローブ光や実験的検出手法などを加味した理論解析を行い、量子経路干渉やコヒーレンスへの影響に関する議論を進める予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(9 results)