バイオプリンタを用いた毛包原基の形成メカニズム解明と毛髪再生医療への応用
Project/Area Number |
22KJ1412
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Project/Area Number (Other) |
22J23386 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 27040:Biofunction and bioprocess engineering-related
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
南茂 彩華 横浜国立大学, 大学院理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | 毛髪 / 再生医療 / 毛包原基 / コラーゲンゲル / 細胞けん引力 / 細胞外マトリクス |
Outline of Research at the Start |
毛髪の発生過程で生じる毛包原基を生体外で再構築し、毛髪再生医療のための移植組織として利用する手法が報告されている。しかし、実用化のためには、毛包原基の毛髪再生能の向上およびそれらの大量調製技術の開発が必要不可欠である。申請者は、細胞を懸濁したI型コラーゲンゲルを用いて毛包原基構造をバイオプリンティングし、高い毛髪再生能を有する毛包原基を調製する方法を開発した。本研究では、この基盤技術を発展させ、毛包原基の毛髪再生能向上メカニズムの解明および細胞外マトリクス組成の最適化により、毛包原基の毛髪再生能をさらに向上させる。また、調製・培養プロセスの自動化により、毛包原基の大量調製技術の確立を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
毛髪再生医療では、脱毛症患者から取り出した毛包の幹細胞を増殖させ、数千個単位で移植組織を大量調製し、これらを再び脱毛部へ移植することで毛髪を再生させる。実用化に向けて、移植組織の毛髪再生効率を改善させる必要がある。そこで、本研究の提案書には高い毛髪再生効率を有する移植組織の大量調製技術の確立に取り組むことを記載した。これまでに、毛髪の発生過程に現れる毛包原基を生体外で再構築したものが毛髪再生医療のための移植組織として適している可能性が報告された。そのため、細胞包埋コラーゲンマイクロゲルの自己収縮を利用し、コラーゲンと細胞を高密度に含んだ毛包原基(HMG)を作製し、細胞のみからなる毛包原基(HFG)より高い毛髪再生能を有することを明らかにしてきた。さらにこのHMGの毛髪再生能を向上させるために、当該年度では、1) 細胞けん引力が毛髪再生効率に与える効果の検証、および2)毛髪再生効率向上のための細胞外マトリクス(ECM)組成の最適化に取り組んだ。1)については、HFGと比較し、HMGにおいて活性化しているシグナル伝達経路を調べるためにDNAマイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析を行い、HMGではECMとの相互作用や毛髪再生関連シグナル伝達経路が活性化されていることを示した。2)については、皮膚のECM組成に近い4種類のECM分子の混合ゲルにおいて、I型コラーゲンゲルのみからなるHMGよりも毛髪再生能が優位に向上する傾向があることがヌードマウスへの移植実験により明らかとなりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していた1) 細胞けん引力が毛髪再生効率に与える効果の検証、および2)毛髪再生効率向上のための細胞外マトリクス(ECM)組成の最適化という課題に対して、以下のようにそれぞれ着実に課題解決を進めることができている。 1) 細胞包埋コラーゲンゲルの自己収縮は細胞けん引力により引き起こされることから、単に細胞が凝集して形成される毛包原基(HFG)とコラーゲンゲル収縮を通して形成される毛包原基(HMG)ではそれぞれの細胞の状態が大きく異なり、それがHMGにおける高い毛髪再生能の理由であることが考えられた。そこで、DNAマイクロアレイによる遺伝子発現の網羅解析を行うことで、HMGではECMとの相互作用およびMAPKシグナル伝達経路やmTORシグナル伝達経路といった毛髪再生関連シグナル伝達経路の活性化が起きていることを示した。 2) ECM組成の最適化においては、まず、皮膚に含まれるECM分子を1種類ずつ濃度を変えてI型コラーゲンゲルに添加し、HMGを作製して毛髪再生関連遺伝子の発現をPCRにより解析した。しかし、優位に毛髪再生能が高くなる条件が現れなかったため、ECM分子を様々な組み合わせで添加し同様に条件検討を行った。その結果、毛髪再生関連遺伝子の発現量では優位な差があまり見られなかったものの、ヌードマウスへの移植実験により、4種類のECM混合ゲルの条件ではI型コラーゲンゲルのみの条件と比較して毛髪再生本数が優位な増加傾向にあることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
1)に関しては、HMGにおいて優位に向上していたシグナル伝達経路を阻害することで、その経路がコラーゲンゲル収縮や毛髪再生能に与える影響を確認することで、HMGの毛髪再生能向上のメカニズム解明を実証する。2)に関しては、さらに実験を繰り返すことで、見出した毛髪再生能の向上傾向のあるECM組成の混合ゲルの条件が、真に有意な差があるかをPCRによる遺伝子解析およびヌードマウスへの移植実験により確認する。また、毛包原基を構成する2種類の幹細胞(間葉系細胞および上皮系細胞)ごとに最適な細胞外ニッチが存在すると考えられるため、胎児期の真皮および表皮に発現するようなECMをさらに添加して、細胞種ごとにECM組成の最適化を行う。加えて、生体内の細胞周囲環境にはECMの他に成長因子も存在するため、前記の調査における最適化ECM組成の候補に対し、成長因子などの可溶性低分子を培地に添加して培養し、さらなる毛包原基の毛髪再生能の向上がみられるかPCRや免疫染色によるin vitro解析とヌードマウスへの移植実験によるin vivo解析を実施する。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)