高分子構造の精密制御に基づく新奇な機能性ポリ(フェニルアセチレン)材料の創出
Project/Area Number |
22KJ1479
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Project/Area Number (Other) |
22J23236 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 35010:Polymer chemistry-related
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
越前 健介 金沢大学, 新学術創成研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | ロジウム錯体 / オリゴエン誘導体 / 軸不斉 / ラセミ化 / 凝集誘起発光(AIE) / 環化二量化 / 円偏光発光(CPL) / メカノクロミック発光 / ポリ(フェニルアセチレン) / テレケリックポリマー / ホスト–ゲスト / 超分子ポリマー / ロジウム触媒 / ジアゾエステル / ポリ(ジフェニルアセチレン) / らせんキラリティー |
Outline of Research at the Start |
ポリ(フェニルアセチレン)(PPA)類は、これまでにさまざまな機能性材料へと応用されているが、高分子末端に導入可能な官能基が極めて限定的であることから、機能性材料への応用が限定的であった。しかし、我々は最近、独自に開発したロジウム触媒を用いてPPA類の両末端官能基化法を開発することに成功し、より精密かつ複雑な材料設計が可能となった。本研究では、この合成法を活用して、既存の合成法では到達できなかった高性能なPPAマテリアル開発を目指す。加えて、我々が開発したロジウム触媒の用途を拡大することにより、関連するπ共役系高分子の精密合成と機能開拓にも取り組む。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当研究室で最近開発した(1Z,3Z,5Z)-ヘプタアリール-1,3,5-ヘキサトリエニル基を有するロジウム錯体から誘導される、多数のアリール基で置換された新規オリゴエン誘導体を合成し、その物性を調べた。 はじめに、上記錯体のロジウム原子をさまざまな官能基で置き換えたオリゴエン誘導体を合成した。1H NMR測定や単結晶X線構造解析から、分子全体がねじれており、軸不斉をもつことが示唆された。そこで各誘導体の光学分割を試みたところ、アクリル酸エステルを導入した誘導体において各エナンチオマーを単離することができた。しかし、この誘導体の軸不斉は不安定であり、室温で容易にラセミ化した。一方で、これらのオリゴエン誘導体が凝集誘起発光(AIE)特性を示すことを発見した。固体状態で効率的に発光する化合物は少ないため、オリゴエン誘導体の軸不斉とAIE特性を組み合わせることで、新たな固体円偏光発光(CPL)材料を開発できると考えた。 そこで、安定な軸不斉をもつオリゴエン誘導体を合成した。上述の構造解析の結果を基に、水酸基とアクリル酸エステルを適切に配置した誘導体を設計・合成し、環化二量化させることで大環状の誘導体を合成した。この誘導体はトルエン中、100 °Cでもラセミ化しないほど安定な軸不斉を持っていることが分かった。この誘導体を光学分割し、CPL測定を行ったところ、glumはおよそ5×10^-4程度と分かり、既存の有機固体CPL材料と同等の物性を示した。 一方で、アミド基を導入したオリゴエン誘導体が、力学的な刺激によって蛍光色が変化するメカノクロミック発光特性を示すことを偶然発見した。他の誘導体ではこの挙動は見られず、アミド基をもつ誘導体に特異的であることが分かった。この発光特性は同一分子でありながらその結晶状態によって蛍光色を変える興味深い現象である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、研究課題として、①当研究室で開発したロジウム錯体を用いる新たなπ共役系高分子の精密合成法の開発と材料応用、②ポリ(フェニルアセチレン)(PPA)類の精密な構造制御に基づく新規キラルマテリアルの開発、の2つを設定していた。 研究実績の概要で述べたように、本年度は主に課題①に取り組み、新規オリゴエン誘導体の合成と物性調査を行った。精密に合成した誘導体は構造が明確であることから、多角的に構造解析を行い、立体構造を詳細に明らかにすることができた。そして、得られた立体構造についての知見を基に新たなオリゴエン誘導体を設計および合成することができ、非常に安定な軸不斉をもつ誘導体を合成することに成功した。さらに、この誘導体が優れた円偏光発光特性を示したことから、本成果は今後の円偏光発光材料の開発に新たな指針を与える重要な成果である。本成果については現在論文を執筆中である。 加えて、アミド基を導入したオリゴエン誘導体が特異的にメカノクロミック発光を示すことを偶然発見した。このように、構造のわずかな違いによって多様な物性を発現することから、一連の新規オリゴエン誘導体において今後も特徴的な物性が見出されると期待される。よって、課題①については期待以上の成果が得られたと言える。 以上のように、課題②については現時点では計画通りの成果は得られていないが、課題①については予想を超える多くの重要な成果が得られたことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、まず、上述の課題①をさらに推進する。新規オリゴエン誘導体が円偏光発光材料として有用であることを見出したので、この成果を学術論文として発表する。また、アミド基を導入した誘導体では特異的にメカノクロミック発光特性を示したことから、この現象の機構を解明し、その結果についても学術論文として発表する。 次に、令和5年度に引き続き、上述の課題②に取り組む。高性能なキラルマテリアルを開発するためには、最適な構造を決定するまでに多数のポリ(フェニルアセチレン)(PPA)類を合成する必要があるが、昨年度に開発したジアゾ酢酸エステルを用いる終末端修飾法は従来法よりも短時間で反応が完遂することから、効率よく検討を進めることができる。また、課題①で得られた分子設計についての知見も活かせると考えている。 一方で、これまでの成果から、PPA類だけでなく、PPA類に類似したπ共役系分子もユニークな物性を発現することが示された。上述したオリゴエン誘導体の前駆体であるロジウム錯体は一置換アセチレン類の重合触媒として高い活性を示すことから、類似の構造をもつアライン類の重合にも、本ロジウム錯体を適用できると考えられる。アライン類の重合によって得られるポリ(o-フェニレン)類はさらに新奇な特性をもつと期待できることから、この重合法の開発にも取り組む。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)