現代的な星形成理論構築に向けた、分子雲におけるフィラメント構造の進化過程の研究
Project/Area Number |
22KJ1588
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Project/Area Number (Other) |
22J15861 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 16010:Astronomy-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安部 大晟 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 星形成 / 磁気流体力学 / 星形成フィラメント / 分子雲 / 衝撃波 |
Outline of Research at the Start |
星は銀河中の水素分子からなる分子雲のフィラメント状高密度領域で形成される。よって、星形成過程を理解するためにはフィラメントがどのように進化するかを知る必要がある。本研究ではフィラメント進化シミュレーションを行う。フィラメントの境界で起こる磁気流体不安定性に着目し、これが引き起こす乱流の強さはフィラメントが星形成を開始する条件に関わるので、どのくらいの強さの乱流が駆動されるのか調べる。また、フィラメント線密度頻度分布(FLMF)の起源を解明する。星の質量頻度分布(IMF)の起源を説明することは分野の究極的目標である。このIMFとFLMFは似ており、FLMFの起源の解明はIMFの起源解明に繋がる。
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Outline of Annual Research Achievements |
星は銀河中の水素分子からなる分子雲の高密度領域で形成される。観測によって、その高密度領域がフィラメント状であることが分かった。よって、星形成過程を理解するためにはフィラメントがどのように進化し星形成に至るかを知る必要がある。観測結果からフィラメントは線密度によらず0.1 pc の幅を持っていることがわかっている。しかしながら、高い線密度のフィラメントは自己重力が強いので細くなるという理論的示唆があり、観測結果と矛盾している。この問題は10年以上誰も解けなかった未解決問題である。本研究では現実的なフィラメント進化過程を解明しこの矛盾を解くことを目的とし、大規模磁気流体シミュレーションにより研究を行った。使用するコードはこれまでにも利用してきた自己重力入りの磁気流体コードであるAthena++を用いる。Athena++はガスと磁場が結合する枠組みである理想磁気流体力学の方程式を解くが、フィラメントのような強磁場下ではガスと磁場の結合が破れる両極性拡散が起こる。本研究では両極性拡散を取り入れた計算を行う。フィラメントの幅を 0.1 pc に保つ候補機構としてフィラメント内に駆動された乱流の動圧がある。フィラメントの進化過程ではフィラメントへのガス降着が起こっており、降着流がフィラメントにぶつかるところで「遅い磁気流体衝撃波」を立てると考えられる。遅い磁気流体衝撃波面は不安定であり、この不安定性がフィラメント内部に乱流を駆動してフィラメントの幅を保つのに必要な乱流圧を与えるかどうかをシミュレーションにより調べた。その結果、磁気流体不安定性と磁気拡散の組み合わせによって起こる、フィラメント内部に効率よく乱流を駆動できる機構を発見した。さらに観測されているような大質量フィラメントの幅を測定したところ約0.1pcであり、観測結果と整合的な結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では両極性拡散を取り入れた計算を行った結果、磁気流体不安定性と磁気拡散の組み合わせによって起こる、フィラメント内部に効率よく乱流を駆動できる機構を発見した。普通、磁気拡散は不安定性を抑え乱流駆動には不利なセンスに働くが本研究では意外なことにこの磁気拡散がフィラメント内部に乱流を引き起こす重要な役割があることがわかった。この結果は予想しておらず、新しい現象を発見できた。我々はこの機構をBullet機構と名づけ、その性質を調べるという新しい研究テーマを打ち出すことに成功した。さらに観測されているような大質量フィラメントの幅を測定したところ約0.1pcであり、観測結果と整合的な結果を得ており全てうまくいっている。
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Strategy for Future Research Activity |
大質量フィラメントにおいて、観測結果と整合的な結果を得たが、あくまでこれは一つの例の話である。大質量フィラメントの幅の維持機構を発見したが、これが観測全てを説明できるかはパラメータサーベイによりこれから調べなければならない。またフィラメントの線密度の頻度分布関数の起源を求める研究は手をつけられておらずこれから行う予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(9 results)