Project/Area Number |
22KJ1845
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Project/Area Number (Other) |
22J13778 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 22040:Hydroengineering-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大野 哲之 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2023: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2022: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | 線状対流系豪雨 / 早期探知 / マルチフラクタル / レーダー / 雲解像モデル / ポテンシャル不安定 / 水蒸気フラックス / 乱流運動エネルギー / 線状対流系 / Xバンド偏波レーダ / 氷相降水粒子 |
Outline of Research at the Start |
本研究の究極的な問いは,「梅雨期に発生する線状降水帯のような集中豪雨がどの程度予測可能か,あるいは予測限界があるのか?」というものである.近年は観測情報,気象モデルの高精度化が著しい発展を見せる一方で,線状降水帯という突発的に組織化し災害をもたらす危険性がある現象を説明する枠組みは未だにないのが現状である.本研究の新規性は,こうした枠組みとして水蒸気の流れや降水粒子の分布に見られる変化を,大気場の一種の相転移現象として捉えるという新たな提案を行うところにある.気象予測という自然科学的な側面のみならず,自然現象の不確実性に対して我々はどう向かい合うべきかという社会科学的な議論の進展も期待される.
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Outline of Annual Research Achievements |
昨年度解析した線状対流系豪雨におけるマルチフラクタル性を早期探知システムへ応用可能性を検討すべく、高解像度地形データを適用した線状対流系豪雨の再現実験において、3次元空間内の上昇流の強度、ないし上昇流域の形状に着目した組織化指標を定義した。複数の積乱雲が結合し対流系としてアップスケールする前後では組織化指標の振る舞いが異なることが明らかになった。以上の振る舞いが見られた時間帯を「組織化の時間帯」と定義した。加えて、昨年度解析した水蒸気フラックス・乱流運動エネルギーのマルチフラクタル性の増大が生じた時刻と組織化の時間帯を比較し、前者は後者の約1時間前に出現していたことが示された。マルチフラクタル性の増大は、不安定成層に対応して発生した初期の対流において局所的に大きな値が出現し、対流内の浮力が増大してさらに上昇流が増大するという正のフィードバックに対応していると考えられる。 摂動を与えた初期値を用いた予報計算に対してどの程度共通してみられるかを検討するため、アンサンブル予報実験の解析を行った。観測された降水量と類似した位置に帯状の降雨域が出現していた10メンバーでコンポジット解析を行い、大多数のメンバーで強雨ないし組織化に先行してマルチフラクタル性の顕著な増大を示した。 以上の成果は、マルチフラクタルが単に統計的な概念であるに留まらず、初期対流の形成から対流系へ成長する過程を反映した、物理的に有意義なパターン解析手法であることを示している。これにより、3次元気象場のマルチフラクタル性が線状対流系豪雨の早期探知に有効であることが示唆された。さらに、初期値の不確実性を考慮したアンサンブル予報においてもマルチフラクタル的変動が共通して検出されたことは、様々な要因が複雑に絡み合う線状対流系豪雨の発生機構の重要な側面の一つであることを示唆している。
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