Project/Area Number |
22KJ1891
|
Project/Area Number (Other) |
22J15233 (2022)
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 31010:Nuclear engineering-related
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂部 俊郎 京都大学, エネルギー科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
|
Keywords | 核融合反応 / 中性子源 / グロー放電 / アモルファスカーボン / 中性子測定 / 核融合ブランケット / 放射化箔 / イメージングプレート |
Outline of Research at the Start |
本研究は、水素同位体である重水素の核融合反応を利用した、放電型核融合中性子源という装置に関する研究である。本研究では、核融合反応に伴って発生する中性子の発生率を能動的に制御する方式を検証する。また、本方式の中性子源の応用についても検討を行う。 放射線の一種である中性子線は、核融合・原子力分野のみならず、非破壊検査や医療などの分野において多様な用途がある。しかしながら、既存の中性子源は限られた環境下でしか使用できない場合が多く、その普及率は低い。よって、小型で可搬性があり、安定的に制御できる中性子源の実現は、社会にとって大きなインパクトを持ちうると考えられる。
|
Outline of Annual Research Achievements |
小型のグロー放電型核融合中性子源に関する研究に従事している。本方式の中性子源においては、中性子発生を伴う核融合反応は主に電極の表面で発生することが明らかとなっている。2022年度の活動においては、電極表面の重水素の存在量や分布が中性子の発生率に及ぼす影響を明らかにするために、水素同位体に対する親和性が異なる複数の陰極材料を用いて中性子発生試験を実施した。本試験においては、アモルファス構造を持つ炭素材料を陰極のコーティング材に使用した場合に、陰極表面やその近傍における重水素の存在量が増加することが明らかになった。また、その結果として、同一形状のステンレス鋼やチタン被覆の電極を使用した場合よりも、高い中性子発生率を示すことも明らかとなった。陰極上での重水素保持量と中性子発生率の関係を実験的に明らかにしたことにより、陰極上での重水素保持量が中性子発生率において重要なパラメータであることが示された。さらには、既往研究においては、本方式の中性子源について、チタン被覆電極の優位性が示されていたが、アモルファス構造のカーボン材料も電極のコーティング材料として有力な候補であることを示唆する結果を得ることができた。 また、2022年11月末から2023年3月末にかけて、米国のマサチューセッツ工科大学の核融合部門(Plasma Science and Fusion Center)への研究渡航を実施した。本渡航においては、核融合炉工学分野における小型の中性子源の応用に関する研究を実施した。具体的には、核融合ブランケット材料の評価試験へのDT中性子源利用において重要なパラメータとなる中性子分布の測定を実施した。高速中性子と反応性が高い放射化箔とイメージングプレートを用いて、DT反応によって生じる中性子の分布を測定する方式を提案し、実験において広範囲の分布を一度に取得できることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
小型のグロー放電型核融合中性子源に関する研究に関しては、核融合反応によって発生する中性子の発生率の制御に必要な指標を明確にすることができたため、順調に進展しているといえる。本成果に付随して、中性子発生率の向上に寄与する可能性がある材料を選定することができたのは大きな成果であると考えられる。 これらの成果に伴って、国内学会において2件(第14回核融合エネルギー連合講演会、日本原子力学会秋の大会)の発表を実施した。また、陰極温度が陰極での重水素保持量において重要であることに着目し、陰極を連続的に冷却することにより中性子発生率の制御を行う方式を考案し、国際学会(Tritium2022)において発表を実施した。このように、学会参加・発表も活発に行っている。 2022年度は、本中性子源に関して、自身が筆頭著者となる原著論文(査読付き)を1件、自身が共著となる原著論文(査読付き)を1件、発表した。さらには、現在、自身が筆頭著者となる新しい論文を国際学会誌に提出し、査読中である。このように、論文業績も着実に積み上げている。 さらには、本研究では、本方式の小型の中性子源のアプリケーションを模索することも重要である。本中性子源のアプリケーションの有力候補の一つとして、核融合炉システムのブランケット材料の評価試験への応用が挙げられる。そこで、2022年度には、米国に渡航し、マサチューセッツ工科大学の核融合部門の研究チームに加わることができた。本研究では、中性子源を用いたブランケット材料の評価試験の手法に関して知見を得ることができた。また、アプリケーション開発に必須となる中性子測定の手法に関する研究にも従事することができ、中性子分布の測定法についての新しい知見を得ることができた。アプリケーションに関する研究にまで踏み込むことができたため、当初の計画以上に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
小型のグロー放電型核融合中性子源の中性子発生に関する研究については、引き続き、アモルファス構造のカーボン材料のコーティングを施した陰極を用いて試験を行う予定である。2022年度は、GD-OES(グロー放電発光分析法)という手法を用いて、陰極コーティング材料ごとの重水素保持量の比較を行っていたが、各陰極について重水素保持量が定量的に評価できていなかった。2023年度は、定量的な評価が可能である昇温脱離法を用いた測定を実施する予定である。中性子発生運転後の陰極について、重水素保持量を定量的に測定する予定である。2022年度の測定よりも定量的な測定を実施することにより、重水素保持量と中性子発生率に関する定量的な知見を得る予定である。また、中性子発生において、重水素保持量が重要な指標であり、これは陰極の温度に依存する指標(陰極温度の上昇により低下する)であるため、陰極の温度制御により、中性子発生率の制御が可能であるかを明らかにする試験を行う予定である。具体的には、連続的に陰極を水冷することができる仕組みを構築し、水冷を行いながら、中性子発生試験を行う予定である。水冷による徐熱量と重水素保持量、ならびに中性子発生率の関係を明らかにすることにより、徐熱量による中性子発生率の制御が可能であるかを検証する予定である。 中性子測定試験については、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームとの協力関係を継続する予定である。今後、中性子輸送計算シミュレーションを用いて、中性子源の周囲や実験体系における中性子分布を計算し、実際の実験結果との比較を行う予定である。本中性子源に関して、核融合炉システムのブランケット材料の評価試験への適用の有効性を明らかにすることを目的とし、研究を推進していく予定である。本研究について、2023年7月実施の国際学会(SOFE2023)で発表を行う予定である。
|