Project/Area Number |
22KJ1937
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Project/Area Number (Other) |
22J20221 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 13020:Semiconductors, optical properties of condensed matter and atomic physics-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐野 涼太郎 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 反強磁性スピントロニクス / 2次元ファンデルワールス磁性体 / マグノンスピン流 / 表面弾性波 / 歪みゲージ場 / 電子流体力学 / スピントロニクス / 角運動量輸送 / マグノン流体 |
Outline of Research at the Start |
スピントロニクスなくして、現代のIT社会は成り立たない。実際、メモリやセンサーをターゲットとしたスピントロニクス素子は今日のエレクトロニクスに不可欠な要素となっている。スピントロニクスの核をなす概念の一つがスピンの流れ、すなわち「スピン流」である。スピンは熱や角運動量のみならず、量子情報をも運ぶため、スピン流の生成/制御は基礎・応用の両面から重要な課題である。 本研究では、流体力学的アプローチを基軸に、スピントロニクスの新たな可能性を模索する。このような方法論は、従来のスピントロニクスの困難を解決する画期的な方法であると期待される。そこで、電子流体力学を舞台としたスピントロニクスの開拓を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度得られた成果をもとに、マグノンスピン流が積極的な磁気測定手法となりうる系として2次元ファンデルワールス反強磁性絶縁体に焦点を当てた研究を行った。 2次元ファンデルワールス反強磁性体は将来のコンパクトかつ高速なスピントロニクスを担う物質として有望視されている。ところが、応用を見据えた研究を行う上での困難として、磁気感受率や中性子回折といった従来の磁気測定手法は巨視的な物理量に直接アクセスする実験手法であるため、こうした原子層物質には適さないことが挙げられる。特に反強磁性体は正味の磁化を持たず、磁気光学Kerr効果もまた有効な手段ではない。最近になって、これらの困難を打開しようとラマン分光や第二次高調波発生など光学的な手法による磁気構造の特定が試みられているものの、単層反強磁性体に適した包括的磁気プローブ手法は未だ存在しない。 そこで本研究では、ファンデルワールス磁性体の多くに共通するハニカム格子構造および2次元原子層物質の著しい力学的柔軟性に着想を得て、表面弾性波など外部から制御された歪みが2次元磁性体の実験手法の制約を突破するカギとなる可能性に着目した。さらにハニカム格子系に特有な現象として、歪みがあたかもゲージ場のようにはたらき電荷中性であるマグノンをも駆動しうる点に注目することで、反強磁性体においても正味のマグノンスピンホール流が生成されることを明らかにした。 さらに対称性の観点から、得られたマグノンスピン流は空間反転対称性の破れた磁性体でのみ許されうることを示し、これを以って、外部制御された歪みによって生成されるマグノンスピン流が2次元磁性体に適した新たな磁気測定手法となる可能性を秘めていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画であった歪みの印可によるマグノンスピン流の解明に加え、対称性の観点からこれが2次元磁性体に対する新たな磁気測定手法となりうる可能性を示したことが本年度の重要な研究成果である。したがって、本成果はその次元性に由来して実験手法の乏しいファンデルワールス反強磁性秩序の歪みによる検出および制御へ向けた画期的な手法になるとともに、次世代反強磁性スピントロニクスへの足掛かりになると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究では、外部から印可した歪みによりマグノンスピン流が生成され、さらにそれを2次元磁性体の新たなプローブ手法として用いることができる可能性を明らかにしてきた。そこで今後は得られた知見をもとに、より多角的な視点から新たな磁気測定手法の実験提案に取り組んでいきたい。特に、輸送現象という枠組みを超えて様々な角度から2次元磁性体の可能性に切り込むことが重要であると考える。そのためにも、研究成果について継続的に国内外の学会において発表し、実験研究者とのコミュニケーションを積極的に図っていく。
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