Project/Area Number |
22KJ1944
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Project/Area Number (Other) |
22J20722 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 15010:Theoretical studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹田 大地 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | ホログラフィー原理 / AdS/CFT対応 / バルク再構築 / 時空 / 重力 / バルク時空再構築 / 弦の場の理論 / 量子重力理論 |
Outline of Research at the Start |
一般相対性理論と量子論の融合は未解明であり、その解明に向けてホログラフィー原理が注目されている。ホログラフィー原理は、重力を含まない量子論とある重力理論の間の等価性を主張しており、重力の新たな見方を提供する。本研究は、量子重力理論の解明に向け、重力理論の時空構造を量子論によって与えることを目指す。バルク再構築とは、ある量子論から出発し、ホログラフィー原理で知られている対応関係を仮定して重力理論を構成することを指す。一方で、弦の場の理論はさまざまな量子論を統一的に扱える可能性を持っている。弦の場の理論に対してバルク再構築のプロセスが適用できれば、時空の量子的な動力学にアプローチできる。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ホログラフィー原理を用いて、量子論から時空を作る「バルク時空再構築」と呼ばれる研究を進展させることができた。ホログラフィー原理とは、「重力理論には、ある等価な量子論が存在する」という予想で、本研究はこれを用いて時空の起源に迫ることが目標である。本研究計画の目的の1つに、「量子論からいかにして様々な種類の時空が現れるか」というものがある。この点で、今年度出版された1つの論文で、量子論が定義されている空間の形が異なった際に、対応する曲がった時空もそれに応じて変化することを計算した。この点では計画を進行させることができた。 一方で、本研究には量子論として、弦の場の理論を用いることで、等価な時空の多様性を探るという目的もあった。弦の場の理論とは、弦理論を統一して扱うことができると期待されている理論である。この弦の場の理論では、その運動方程式の解ごとに対応して粒子の種類が変動する。この性質を利用すれば、ホログラフィー原理を通して、対応する重力理論の時空も多様に変動すると思われる。これを調べるにあたって、計算上の困難が生じた。 そこで、弦の場の理論の代わりに物性理論に目をつけることにした。というのも、物性理論では様々な物質が扱われており、物質ごとに有効な理論モデルが存在する。また、ホログラフィー原理では物性理論と重力理論の対応関係も指摘されてきた。そして、様々な物性に対してバルク再構築を行えば、原理的には様々な時空を作ることができる。これに関する内容の論文の出版、発表も行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
概要で述べたように、計画はそのままは進行していない。それは弦の場の理論における解析の難しさが原因であった。そこで本来の研究目標である「バルク再構築によって構成される時空の多様性を追求する」という点に立ち返り、方針を練り直した。そこで私はこの研究計画における弦の場の理論が担う役割を、物性理論によって代用できるのではないかという予想を立てた。 この予想を確かめるべく、物性理論・実験の専門家、および重力理論の専門家と議論を開始した。これを通して予想に対する確信を得、さらに彼らと共同研究を開始した。それらは「用意した物性系が等価な物性理論を持つかを判定する方法の提案」と「ある物性理論のモデルがホログラフィー特有の現象を持つことの確認」である。また、後者の研究ではモデルにパラメータがあり、これを動かすことによる現象の変化も数値的に示した。これは、物性のパラメータによって対応する時空が変化することを示している。よって後は実際にその時空を構成する方法を与えれば良い。現在進行中の研究では、深層学習を用いて物性理論のデータから等価な時空を作る自動化システムを共同研究で開発中である。これは来年度中に完成予定であり、従って当初の研究予定は軌道修正によって達成される予定である。 また、研究完成後の展望に「ブラックホールをホログラフィーを通して理解する」ということを申請書で述べた。これに関して、ブラックホール熱力学をホログラフィーで理解する単著論文を発表した。これは来年度に研究計画が完成した後に、バルク再構築と合わせてブラックホールを理解していくための土台となるはずである。この点で、予定していなかった成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、まず現在進行中の深層学習を用いた研究を完成させ、物性のデータから時空を構成するための土台を完成させる。これを様々な物性モデルに対して適用することで、様々な時空を構成して行く。 この深層学習のアーキテクチャは、時空が静的である場合に使えるものである。用意する物性系は熱平衡状態にあるからこの点は問題ないが、「ホログラフィーを用いて、場の量子論によって量子重力理論を定義する」という今後の発展をめさずにあたっては、変動する時空の効果を取り入れた深層学習を考案することは有用である。そこで、より学習コストの少ないアーキテクチャの考案や、動的時空を扱う試みも考えていく。 さらに余力があれば、ブラックホールの理解に向けて、ブラックホール熱力学をバルク再構築の立場で理解していくことも検討する。
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