Project/Area Number |
22KJ2012
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Project/Area Number (Other) |
22J23418 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
若林 和哉 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2024: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2023: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | レヴィナス / 古代哲学史 / アリストテレス / マイモニデス / メシアニズム / ユダヤ哲学 / 宗教哲学 / 情動 / 脱宗教性 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、ユダヤ人哲学者レヴィナスの哲学的著作と宗教的著作を交差的に読解することを通じて、「情動」を特権的な基盤とする新たな「形而上学」の生成過程を明らかにすることにある。ここでは、レヴィナスのユダヤ的立場は特殊主義に閉じたものではなく、むしろ西洋哲学における普遍的理念を、ユダヤ的伝統によっていっそうラディカルに変容させるものとして再解釈されることになる。具体的には、レヴィナスが形而上学史における哲学者を批判的に受容する際に、ユダヤ的伝統からいかなる諸形象が借用され、新たに再活用されているかについて個々のケースごとに検討し、さらにその思想史的ポテンシャルを引き出すことが目標となる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ユダヤ人哲学者エマニュエル・レヴィナスの哲学的論考と宗教的論考を交差的に読解することを通じて、情動を特権的な基盤とする新たな形而上学の生成過程を明らかにすることにある。当該年度では、哲学的論考におけるユダヤ的なものの再活用と、宗教的論考における非宗教的なものへの翻訳という、哲学とユダヤ教のあいだに張り渡された双方向的な連関に着目しつつ研究が行われた。 (1)実存思想協会で発表した「初期レヴィナスにおけるアリストテレス読解の足跡--「無からの創造」から「存在からの脱出」へ」では、初期の哲学的論考に潜在するアリストテレスとの対決という問題を、情動論的段階(快楽論批判)から形而上学的段階(存在論批判)にいたる批判的思考の上昇的過程として再解釈した。具体的には、「存在からの脱出」という初期の哲学的企図が、感覚的経験の領野についてのアリストテレス的な探究を不可避の通路としつつ、最終的には「無からの創造」というユダヤ的モチーフに基づく形而上学批判というマイモニデス的の思考を導きとするものであることを示した。 (2)日本宗教学会で発表した「レヴィナスのメシアニズムにおける情動の問題」では、タルムード解釈におけるベルクソンやジャンケレヴィッチへの言及を踏まえつつ、一見ミトナグディーム的な正当性に基づくようにみえるレヴィナスのメシア論に潜在する、偽メシアや情動的熱狂の問題との複雑な関係性について検討した。また、『Supplements』上で発表した論文「レヴィナスのライシテ論と「イスラエル」--キリスト教批判の観点から」では、前年度の成果をさらに発展させ、ユダヤ的なリソースから非ユダヤ的なものに開かれた普遍化の原理を引き出そうとするレヴィナスの思考について、宗教哲学的な観点から批判的に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、レヴィナスによるプラトンおよびアリストテレス解釈から快楽論、タルムード解釈からメシアニズムの情動的分析をそれぞれ引き出すかたちで主題とし、口頭発表としてまとめた。これらの内容については、当初計画していた情動論の問題との密接なかかわりが認められる。また、前年度の成果であるハイデガー解釈とライシテ論を、それぞれ論文として投稿した。これらはレヴィナスの思想について、哲学史的研究とユダヤ的研究という二つの軸を交差させつつ解釈するという、本研究の課題に整合するものである。以上の点で、研究は順調に進んでいるものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
存在することの不快から切迫する快も、メシア待望における情動的熱狂も、レヴィナスにおいて消極的に分析されているとはいえ、広くとらえるならば、極限的な窮境からの脱出や救いに対する切実な希求の表現だといえる。最終年度は、これらのテーマをメシアニズムの問題系に置きなおして再検討する予定である。現時点では、メシアや救済の到来への「待望」と、その待望の激化ゆえに到来を早めようとする「焦燥」という、緊張をふくんだ情動連関の動態に注目している。そこではレヴィナスの哲学的思考はメシアニズムによって支えられるとともに、タルムード解釈それ自体もまた創造的に変容されるような事態が問題になるように思われる。そうした思考のユダヤ哲学的な独自性を明らかにすることが最終的な目標となるだろう。
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